↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者: 羊宮 玲(旧 羊)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/36

仕事の押し付け合い

◇日野視点


 ワイドショーでは、もっと多岐にわたる説が出ていた。

 会社では一瞬で退けられた幽霊説もあれば、SF風の説もあったが、ことごとく専門家に論破されていた。

 外国からは、『救世主』説や、『日本はガンダムを完成させていた』説まで出ていた。

「ガンダムは宇宙で戦うの?」 

 そう尋ねる子供にお父さんが熱く語る姿も、よく見掛けるようになった。


 それを見て溜息をつくのは、日野と政府の関係者たちだ。


 次の会合に合わせて人選をし、会議の骨子をまとめなければならない。

 日野は誰にともなく叫んだ。

「幽体離脱だぞ! そんな会議に誰を呼べばいいんだ」


 現状、日野一人に全てが押し付けられていた。

「君がファーストコンタクトの責任者であり、第一人者だ。すでに君がリーダーなのだ」

 説得力が有るのか無いのかわからない言葉が、日野に向って押し寄せて来る。


 何をどうしたらいいのか全くわからず、お手上げだった。

(休みたい)

 しばらくしてパニックから立ち直った日野は決断を口にした。

「延期だ」


 日野はすぐに宇宙船対策本部に行き、待機している課員に交信を頼んだ。

 JAXA内に宇宙船対策本部を移し、宇宙船との専用交信室を設けてあった。


 交信のコールに宇宙船側が応答すると、日野はトレードマークのストライプネクタイに手をやり、ゆがみを直した。

「あー、こちら交渉団代表の日野です。次回の会議を少し先に延ばさせていただきたい。対象者を絞るのに時間がかかりそうなのです」

 対するマナは、ほっとした表情を浮かべた。

 画質は非常に良いので、はっきりとわかる。

 そのため政府専用の交信スペースは、インテリアに気を配り、机には花を飾ってある。

「ちょうどよかったです。こちらも精神体を想定して、飛行データ解析を一から初めたところです。時間が足りません」

 お互い様ってことかと、日野もほっとした。

「それから、連合の方から学者の集団を派遣する話が出ています。それには準備が三ヶ月かかります。どうでしょうか」

「承知しました。三ヶ月後へ変更しましょう」

 これで三ヶ月の猶予が出来た。


 宇宙船対策本部内の自室に戻り、日野は椅子にどっかりと座り、背もたれに思いっきり倒れ込んだ。

「俺は役目を終えた」

 日野の独り言が、静かな部屋に響いた。


 一連の交渉事は終わり、この先を考えるのは……文部科学省の仕事だろう。

 そう決定すると一つ頷いた。


 そして会議の延期について、即全省に通達を回した。

 日程と調査を文部科学省に依頼する旨の内容だ。

 間を置かず、文部科学省大臣から電話が来た。


「何を勝手に決めている。何の根回しも無しに一斉配信とは卑怯だぞ」

「おい何の根回しもなく俺に押し付けて、全員でそっぽを向いたのは君たちだろう。それに科学はそちらの管轄だ」

 これは正論だった。


 文部科学省大臣は何も言えないようだ。

「まあ三か月もあるし、頑張ってくれたまえ。相談されても困るが状況は知りたい。連絡は密に頼むよ」

 今頃電話を切ったあいつは、そのへんの物を蹴飛ばして叫んでいるだろう。

 何とか撤回して日野に押し戻したいだろうが、無理なのは目に見えている。

 皆この話に納得して、「まあ頑張って」と言うのが関の山だ。

 日野はにんまりして大きく伸びをした。


 それから十分も経たないうちに彼から電話がかかって来た。

「事は日本国防衛に関わる。この有事において、中心に据えるべきは防衛省。そして軍事科学技術部門だ」

 ゆえに――

「防衛省を頭に据えて、文部科学省はその学術面をサポートする。それがあるべき姿だと私は思う。いかがかね」

 確かにそれが一番適切な配置だろう

 日野も納得し、再度一斉メールで送信した。


 日野は彼の機転に感心し、うまい事逃げやがると舌を巻いた。

 もちろんすぐに防衛省大臣が文句を言ってきた。


「外務省には科学研究機関などありません。ご存じですよね」

 日野がそう言うと防衛大臣は黙った。


(こちとら口が武器の外務省だ。舐めてもらっちゃ困る)

 日野は鼻歌を歌いながら休暇届に手を伸ばした。


 かくして交渉の先頭は外務省、体外離脱に関する検証のトップは防衛省の科学研究所とし、文部科学省がサポートすることになった。

 それを国民に向けて公式に発表してから、日野は一週間の休暇を取った。 一年間、働き詰めだった位、疲れていた。


 通達後、早速、『体外離脱と宇宙空間飛行』研究所が設立された。

 

 諸外国からの参入表明があったが、宇宙、超能力関連とも国のトップシークレットのため、結局は各国で研究することになった。

 その代わり二か月後に国際会議を開いて、意見を交わすことに落ち着いた。


 そこから、各国メディアの取材合戦が、同時にスタートを切った。


 一番注目される内容、それはもちろん、『誰が』だ。


 体外離脱の話が調べられ、古典から、民話、伝承までの色々な話が紹介され始めた。

 その結果、日本は他国と比べ、体外離脱の逸話が多い事が明らかになった。

 やはり日本にその人物がいる。その確信は、日を追うごとに強くなっていく。


 すると自薦他薦で、その人物であると名乗る者が出始めた。

 名乗り出た途端に、その人物は世界規模の有名人に祭りあげられる。


 だが誰が本物で、誰が偽物かは誰にも見分けられない。そのため有り体に言うと、それは人気投票のような具合になっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。