表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/36

帰国


 帰国前にメンバーは、宇宙船から降下する練習を行った。

 マナたちがやった降下ショーを自分たちも披露しようということになったのだ。


 体幹を鍛えている立花は、これをすぐに習得した。現在継続中で一緒に修行をしている山田も、少しの練習ですぐに出来るようになった。

 帰国前に、練習に付き合ってくれたマナたちは、その呑み込みの早さに驚いた。


「私たちは四日間掛けて、やっとできるようになったのに」


「こんなの、簡単よ」


 そう言って一発で成功させたのは、ケリーとフロンだった。もちろんサシムも軽々とクリアしている。


「私もやってみたいわ」

 

 驚くことに、そう言い出したのは、助け出された王女ミーシャだ。サシムがおろおろしている。

 ミーシャ王女は結構気が強いようで、サシムの制止を無視している。体調もよさそうだし、顔色も良くなっていて、敵艦に掴まっていた時とは全く違って見えた。

 二か月にも及ぶ監禁生活から解放され、気晴らしがしたいのだろうと山田は思った。


「サシムが補助に入って、一緒にやってみたらどうでしょう? 面白いですよ、これ」


 ジェイがそう声を掛けると、ミーシャ王女は嬉しそうに微笑んだ。

 それで仕方なくという様子で、サシムが付き添って、降下練習を行った。初めはぐらついていたが、何回か繰り返すうちに、真直ぐに降りる事が出来るようになった。


「ジェイ、ありがとう。助けていただいたこと、それに今日のこれも。気持ちが晴れ晴れしました。そういうことを考えて、声を掛けてくれたのでしょう?」


「楽しんでいただけたのなら、良かったです」


 それだけ言って、その場を後にした。水野と小森はまだうまく体勢を保てずにいたので、そのサポートに入った。水野の手と腰に手を当て、ゆっくりと降りる。


「セクハラじゃ、ないですからね」


 山田が念を押したら、「無粋な人ね」となぜか怒りだした。

 

 小森は初めは斜めに傾いでいたが、次第にうまく出来るようになっていき、「修行時代を思い出すよ」と嬉しそうにしている。


 一日の練習で、四人共格好良く降りる事が出来るようになり、マナたちをくやしがらせることになった。

 


 帰国は通常のルートを取ることに決まった。行きの行程での襲撃で、自粛ムードが広がったようだ。ジェイを追いかけてくる者はぐっと減っている。

 さらに、銀河連盟の艦隊が途中まで護衛につく。


 サージは、何でもどんとこいと胸を叩いた。艦は攻守ともにフル装備だそうだ。


 特別室のモニタで、地上の大騒ぎ、というかお見送りのセレモニーを眺めている時、小森がぽつりと言った。

 

「たった二週間程度の旅なのに、長かったね」


 山田はしみじみとした口調に驚いた。高僧なのに、高僧だからこそか? とてもノリが軽くて、あまり深刻にならない人間だ。違和感があった。


「……そうですね?」


 誰も答えないので、山田が答えておいた。


「山田君しか答えてくれないんだ。やっぱり君は性格がいいよ。はあー、他は駄目だね」


 水野はふんと鼻を鳴らして横を向いた。

 立花は苦笑して、「どうかされたんですか?」と尋ねた。


「あの大騒ぎを見て、何か思わないのかね? ジェイを称えているよ」


 確かに、大騒ぎをして盛り上がっている。だけど、それがどうしたと言うのだろう。

 アルファケンタウリ滞在中、大騒ぎでない事は一つもなかった。

 囲まれ、握手攻めにあい、インタビューされ、カメラクルーに追い掛け回され、周囲は常に人だかりだった。

 この船に乗り込み、やっと一息ついた所だ。

 山田がキョトンとしていると、小森が「嫌だねえ」という。


「あのさ、アンドロメダの最新艦を木っ端みじんにして、特殊部隊一隊を葬ったんだよ。ジェイを害そうとしたナイン星を救って、それを秘密にした。そしてナイン星を完全に地球の友好星にした。ジェイのやったことは凄い」


「はあ」


 そう言わればそうだが、もう終わったことだし、今更改めて言われても、どう返したらいいかわからない。

 山田の返しに、小森はがっくりと肩を落とした。


「これでジェイが消えたら、どうなるか考えたことはあるかい?」


「驚くだろうとは思います」


「全く。話にならないね。この場に日野大臣がいないのがきつい。彼なら、すぐに意をくんでくれるだろうに」


 日野は事務官三人と部屋にこもり、報告書の作成に励んでいる。合間に高橋に頼み、マナと交信しているそうだ。

 今もこの場には顔を出していない。


 水野と立花は、小森の話を承知していて、無視しているようだ。

 彼ら二人の顔をじっと見た後、小森はふっと溜息をついた。


「まあ、仕方ないか」



 帰りの旅の途中、一度だけ、艦内に非常警報が鳴った。

 一回目のワープを出た所に、三隻の艦がいた。等間隔でピシッと整列して待ち伏せしている。

 サージはすぐに警報を出し、ジェイたち一行は、再びメインデッキに集められた。


「交信あり。駆逐艦三隻、艦のID、艦名受信、所属フロン傭兵ギルド。交信を求めています」

 高橋が叫んだ。


「交信」

 サージが許可を出した。相手はフロンの所の傭兵だった。


「総帥の命令により、ワープポイント周辺を巡回していました。この周辺には不審な船はいません。安全に航行できます」


 きちんとした手順を踏んで、きちんとした報告をうけ、サージは拍子抜けしていた。


「では、この先も安全な航行を。次のワープポイントにも、ギルドの艦が待機しています」


 それが低速でこちらの艦に向かってくる。白い光が二回点滅した。挨拶代わりのフラッシュだ。それから高速で去って行った。

 

「フロンって、総帥なのね。統率力凄そうな感じ。あの見た目で、年齢いくつなのかしら。負けたわ」


 頭を振りながら言って少し落ち込んでいた。


 水野が腕に掴まって、「あれは化け物よ。別枠」と言っている。

 色気が売りの水野だが、体育会系のノリと相性が良いようで、護衛候補の男女と仲が良かった。

 サージとも、仲良くなって、気楽に話している。

 

「立花さん、先日、フロンと静かな戦いしていたでしょ。結構怖いもの知らずよね」


 水野に言われて、立花は苦笑いだ。


「彼女は本音と冗談が紙一重だし、いつそれがくるっと変わるかわからない。やろうと思ったことは、何でも出来そうだしね。ケリーがまめに止めてくれたから助かった。じゃないと、ジェイが襲われていたかも」


「さすが、ケリー。腐ってもお姫様ね」


 小森が吹き出した。


「それはひどいだろう。あんまりだよ。彼女はさすが王女様だけあって、常識のラインがはっきりあったよ。フロンは自由自在って感じだから、ケリーでないと押さえられなかったかも。いい組み合わせだよ。運が良かったね、ジェイ」


 山田は、そう言われて詰まった。フロンの悪ふざけを、特に気にしていなかったからだ。

 小森がやれやれと首を振った。


「この図太さがフロンに気に入られたのかもな。フロンを危険物と認識しない人物は少ないだろうから」


「俺、引き抜きに合いましたよ。フロンから」


 高橋が通信コンソールから顔を上げた。彼はこの船のクルーに溶け込み、殆どクルーの一員として働いている。

 行きに乗り込むなり大歓迎され、好奇心のままにあちこち見せてもらい、その内に当たり前のような顔をして、クルーに混ざって働き始めた。


「この艦は働きやすいね。居心地がいいし、動きやすい。サージ船長、良い艦ですね」


「ありがとう、高橋。一番最初に声を掛けたのは、うちだからね。覚えておいてよ」


 小森は、「駄目だよ、高橋君。宇宙局勤務なのを忘れずに」とくぎを刺した。


 高橋は、どこでも働けそうな様子で、ここでもひたすら楽しそうにしている。新しい技術に触れるのが、心底楽しいようだ。


 そのうち地球からこうやって外に出て行く人間が、たくさん出てくるのだろう。

 技術が遅れているとはいえ、先進技術を受け入れる素地は十分に育っている。きっとそう時間をかけずに、それらを吸収してしまうのだろう。


 山田は将来が楽しみになって来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ