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ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者:


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敵艦へダイブ


 全員の緊張した表情を見て、ようやく山田は、自分が考えていたより事態が切迫していることを理解した。


 マナが居住まいをただした。


「私を交えて相談するってことは、銀河連合がどう判断するか聞きたいってことね」


「はい。銀河連合内の空気感も、星同士の勢力図も、関係も我々は何も知りません。マナ特使に意見を伺いたいと思います。そういった意味も込めての、特使だと思いますから」


「立花さん。あなた宇宙局の重要ポジションを担って下さいね。きっと、みんなのためになるわ」


 マナが柔らかい表情で言い、それから表情を引き締めて皆に向き直った。


「ナイン星は歴史が古く、王家がずっと星を治めていて、王族は神のように思われているの。星間では尊敬されている星で軍事力も大きい。めったなことでは動かない星だけど、王女を攫われたのなら、手段は選ばないでしょう。かなり怖い状況よ。サシム、そうよね?」


 サシムは無言でうなずく。

 それからしばらくして話し始めた。


「私は、誘拐組織からフロンの所の最新式追尾装置の発信機を渡されています。それを分解し、武器の中に組み込み、艦内で組み立て直しました」


 フロンが納得したように手を打った。


「ああ、それはうまくやったわね。星間で流通している武器は色々だから、検査してもわからないかもしれない。開発の盲点だったわ」


「誘拐犯も監禁場所も、必死に探しましたが全く掴めずにいました。アンドロメダの特殊部隊が犯人で、艦内に監禁されていたとは⋯⋯」


 それなら、手際がいいのも、見つからないのもうなずける、とその場にいる全員が思ったようだ。

少し空気が重くなったところで、立花が、マナ特使に改まって聞いた。


「アンドロメダは特殊部隊一艦のみで行動しているようです。状況を把握した今なら、こちらが有利に立てる。あの艦を攻撃しても大丈夫ですか? それとナイン星の王女の件は内密にしたほうがいいのかを教えて欲しい」


 マナはふっと溜息をついた。


 体調が悪いまま会議に参加してもらったので、弱々しい印象だったが、顔を上げた時には、星の代表を務める特使の顔に変わっていた。


「アンドロメダの特殊部隊を攻撃するなら、跡形もなく壊滅させるべきです。なまじっかな被害で戻られたら、銀河間戦争になりかねない。王女に関しては、隠せるなら、その方がいいでしょう」


「私の傭兵艦隊を呼んだから、彼らに掃討を命じるわ。一機たりとも逃さない」


 フロンが司令官の厳しい顔つきで、冷静に言う。

 その場の全員が、攻撃に同意するのを見て、山田は膝の上で組んでいた手を握り直した。怖いと思ったのだ。艦には人間が乗っている。それを跡形もなく、ということは全員を抹殺することになる。


「もし、これを見逃した場合、その先はどうなると思いますか?」


 マナは困ったような表情になり、言いにくそうにためらった。


「たぶん、ずっとジェイを狙い続け、そのための布石を打っていくでしょう。アンドロメダの軍艦が表立って攻め込むことは出来ないから、同じように人質を取られた星が、いつもあなたを狙う。そんな状態になるかもしれません」


 つまり、不幸な人が増える事になるわけだ。自分のせいで。

山田は腹を決めて、マナの目をしっかりと見た。


「この決定には僕が責任を負うべきだ。状況にケリを付けます。捕らわれている王女を救出し、あの艦を完全に破壊します。でも、ケリーとフロンは巻き込みたくない。これは僕の問題だ」


 マナが特使の顔で、それに返した。


「そして我が星の問題でもあります。地球を後見する立場だし、使節団を無事に地球に帰す義務があります。だから私たちは戦います」


 そう一息に行ってから、視線を落とした。


「その決定をあなたがするのは重すぎます。それにジェイを危険にさらすことになるかもしれない」


「すみません。それでもです。王女を助け出し、今この場で、トラブルの根を断ちます」


 しばらく沈黙がその場を覆った。


「敵艦は、現在計器異常で、シールドも無ければ、緻密な兵器操作もできないわけでしょ。それなら、主砲を一発ぶち込めば、動きを止められるじゃない」


「それをしたら、王女に危険が及ぶ。絶対に駄目だ」


 ケリーの乱暴なプランに、サシムが叫んだ。


「そうよね。ただ潰すだけなら簡単だけど、人質救出には頭脳が必要なのよ。ケリー、筋肉だけじゃなく脳みそも動かしてね」


 フロンがにっこりと言う。


「それじゃあ、王女を救出する者が先に船に入り込み、脱出後に破壊か。交戦相手がこの船だと向こうに知れても大丈夫でしょうか」


 山田の懸念に、サージが目をくるんと回して明るく返答した。


「大丈夫よ。相手側は登録すらされていない幽霊艦。つまり無法者の艦に、いきなり攻撃されて応戦するんだもの。こちらの大義名分は完璧だわ」


 計画は簡単にまとまった。


 小型の戦闘機数隻で襲い、ハッチを破壊して侵入。王女を救出後に破壊。

 出動するのは、サージの部下とサシム。

アーマーを着込んでの接近戦を想定。

ハッチ破壊の工作班が同行。


「言うと簡単ですが、そう簡単に進みますかね」


 高橋が心配気に言う。


 ところが救助も攻撃も拍子抜けするくらいあっさり終わった。


 人質の監禁場所はジェイが覚えていたので、経路と部屋ナンバーを書いてサシムに渡した。

 それを頼りに、サシムは真直ぐ王女の元にたどり着く事が出来た。

 ドアのロックは全て解除されていたので、部屋まで直行し、王女を連れて小型船ですぐに戻った。


「あんまり早くて、逆に何かあって戻って来たかと思いましたよ。全然戦いにならなかったんですか?」


 そう聞く高橋に、一緒に出た戦闘員たちがてんでに話した。


「アーマー部隊が先に現場を制圧するはずだったのに、ハーフアーマーのサシムさんが的確に攻撃を避けて、すごい速さで進むんで、俺たちが後を追うことになってしまって。何のためのアーマー部隊やら」


「七人くらいは叩きのめして進みました。今までのうっぷんを込めてね。素手じゃなけりゃ、気が収まらなかった。アーマー外して、こぶしを叩き込んでやりました」


 興奮しているサシムを、王女が、「落ち着いて」と抑えている。


「副艦長らしき者が指揮をしていたけど、艦内の統制が取れていなくて、めちゃくちゃでした。艦長になにかあったんでしょうか。まあ、あれだけ電気系統にトラブルが起こっていたら、何をどうすることもできませんが」


 王女を船内に保護してから、サージの艦は主砲をぶっぱなした。


 相手の艦はビームの光に包み込まれた後、大きく破損し、光が徐々に消えていった。そこに傭兵艦隊からの一斉掃射が行われた。それが10分程続くと、全てがバラバラになって散った。壮観だった。


「ハッチも開かない様子で、小型船も離脱できそうになかったから、あの艦から出た者はいないと思います」


 サージの艦の戦闘員が報告すると、フロンがそれを肯定した。


「現場周辺を走査させたけど、あの艦から出たらしい小型船は一隻もなかったわ。完璧ね」


 こうして救出と破壊活動は、ほんの短い時間で終了したのだった。


「サシム、王女の誘拐に関しては、全く情報が漏れていなかったんだよね」


 ジェイが聞くと、「一切」と答える。


「じゃあ王女の誘拐も、サシムの工作活動も無かったことにしよう。表沙汰になれば面倒だろう。その代わり、僕の計器攪乱の件は内密に頼む。どう?」


「まあ、それが一番いいわね。表沙汰になると大騒ぎだし、アンドロメダの特殊部隊を、こんなに簡単に倒せた理由を探られるかもしれないし」


 ケリーが同意した。

 マナとサージもだ。フロンは唸っていたが、その様子を見ていた王女が交渉を持ちかけた。


「救出に向かってくれた傭兵隊の経費を出すわ。三倍の額で」


 フロンが微笑んだ。

 サシムはやれやれという感じで頭を振ったが、うれしそうだ。

 

 サシムは改めてジェイに謝罪したあと、「地球に何かあれば、絶対に手助けに駆けつける」と約束した。


「まあ、ナイン星の約束は重いのよ。よい味方を手に入れたわね、ジェイ」


 マナがにこやかに言い、目をこすりながら部屋に戻っていった。

 


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