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ラブコールは銀河から――僕が地球代表だそうです  作者:


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宇宙船との交信

『この惑星との交渉を行うためにやって来ました』


 宇宙船は日本語と英語でそう伝えたきり、その場に停止している。

 すぐさま自衛隊と米軍が調査に向かったが、宇宙船の周囲には何らかのバリアが張られていて、接近できなかった。


 その間に領空侵犯して、近隣諸国の偵察機が何機もやって来た。

 もうこの際、領空侵犯などと言っていられないのだが、ではどうぞ、とも言えない。

 ひと揉めした後、他国にはお引き取りいただいた。  

 その後、若干腰が引けている日本に、各国が正式に協力を申し出た。


 日本では、内閣府開発戦略推進事務局とJAXAが対策本部を立ち上げたが、アメリカに本部を移すべきという話が持ち上がる。

 そして二日目に、JAXAから宇宙船に向けてその提案を送ったところ、直ちに「NO」の返信が来た。


『この惑星での交渉相手は日本です。他国との交渉は行いません』


 宇宙人は同時翻訳機を持ち込んでいる。

 第一言語は日本語、第二言語が英語だった。

 どの国の誰もが、テレビで、ネットで叫んだ。 もちろん日本でも。


「なぜ日本なんだ」


 日本国が発したその質問に、宇宙人はあっさりと答えた。


『この島から、銀河宇宙を訪れた者が居ます。全ての交渉事は、ファーストコンタクトの人物と行う決まりです。その人物が特定されるまでは、その発信基地のある場所、つまり日本を交渉相手とします』


 理由を聞いて政府はしばし戸惑った。

 あり得ない。

 取り合えず、更に質問して時間を稼ぐことにした。


『地球にやってきた目的を教えて欲しい』


『我々は地球に、天の川銀河連合への加盟を勧めに来た』


 物騒な目的でないことに、JAXA内にホッとした空気が広がった。

 だが、日本としては、というか地球としてもだが、太陽系外への訪問は有り得ない、としか返答できない。


『もしかして、ボイジャーか?』という問いかけには、


『地球上に帰還しています。だから違います』


 はやぶさは帰って来たが、太陽系からは出ていない。全くお手上げだった。それにしてもボイジャーは認識されているようだ。技術者たちは密かに喜びあった。


 とりあえず、調布のJAXAに対策本部を一本化し、宇宙船との交信を行うことになった。

 そして三日間掛けて、少しずつ情報をやり取りした結果、詳細が分かってきた。

 宇宙船は天の川銀河連合から送られた、代表使節団であること。

 攻撃の意志は全くなく、加盟を勧める友好的な訪問であること。


 だが、ファーストコンタクトの話の所から先に進まない。

 あの船の船長を代表として欲しいと言う銀河連合と、有り得ないと答える地球とで、噛み合わないやり取りが続く。


『コンタクトは地球周期の三年前だ。航空軌跡図を送る』


 使節団はそう言って、データをJAXAに送ってきた。


『かの船はこの島から発ち、高速で天の川銀河とアンドロメダ銀河の間へ突き抜け、その後、停止した。あの速度もすごいが、停止時間が驚異的だ』


 説明する口調が興奮気味で、銀河レベルでも驚く技術であったのが伺えた。


『帰りはワープしたようだが、追跡不能だった。軌跡を逆にたどり、この島に行きついた。そこで同様のエネルギーの痕跡が、微弱ながら観測された。ここから出て、同じ場所に戻っている』


『あり得ないです。人類の宇宙工学は、そこまで進んでいません』

 JAXAは、これをきっぱり断言した。


『だが、実際にあった事だ』

 宇宙人側も、決して譲らない構えだ。


 どこまでも噛み合わない会話が、延々と続いていると、ニュースキャスターが困惑顔を作って告げる。



 ニュースを見ていた山田は、その新情報にギョッとした。 

 三年前といえば、自分がちょっとおかしな体験をした頃だ。


「僕? ……まさかなあ」


 そう呟いてから、ゆっくり考えてみた。それは、ほんの短い時間の出来事で、特に黒い空間にいたのは数秒程度と思われる。


(良かった。僕じゃない)


 それから山田は嬉しくなった。

 つまり同じような体験をした人がいるのだ。

 あの体験の後、山田はあれが何だったのか調べようと、情報を検索したり、質問板に上げたりした。


「あるよ。オレの場合はさ……」

 みたいな返信があるかと期待したが、おかしい奴扱いされた。

 その他は、天井から自分を見下ろす的なのが二件。


 やはり、修行を積んだ僧侶とか、ヨガの達人でないと、こういった経験は少ないのかもしれない。そういう人々はネットを見て気軽に答えたりはしないのだろうと考えて諦めた。

 そのうち面倒になった山田は、それを忘れることにした。


 今回の事件で、似たような体験をした人がいると分かった。しかもその人物は銀河の外まで飛んだという。

 自分のような一瞬の体験から、その人物のようなレベルまで、幅があるのだろう。

 この騒ぎのおかげで、あれが何だったのかが分かるかもしれない。

 山田は嬉しくなって、鼻歌を歌いながら会社に戻った。


 

 日本政府は取りあえず、宇宙船を東京から移動してもらうことにした。

 いつまでも新宿に居座られたら、目障りで仕方ないし、航空スケジュールにも差し障る。

 それで富士の中腹辺りに移動してもらい、代表団同士で直接話し合うことを提案した。


 メディアは、それはもう大騒ぎだ。


「宇宙人と対面での会議決定!!」

 各国の言語で、その見出しが飛び交った。誰もが驚き慌て、大騒動になっている。

 この数日、地球中に飛び交った、「宇宙人は本当にいた!!」を上回る衝撃だ。

 いるのが分かったのと、実物が目の前に姿を現すのとでは、インパクトは倍ほども違う。

 詳細が決まるのも待たず、地球中のテレビ局が、一斉に日本に向かって追加の特派員を送り込んだ。東京は既に宇宙船を見ようとやって来た人でパンクしそうになっていたが、それが富士よりに移動することになった。


 交渉会場は富士の自衛隊駐屯地。

 その周りを米軍が演習と称して、取り囲むことになっている。他国は、自国内で臨戦態勢を取る。

 そんな事をしても、銀河を横断できる相手からしたら、猫パンチ程度でしかないだろう。

 それでも黙って見ていられるものではない。


 そんな中、日本国民はと言えば、地下シェルターにこもる者や、海外に逃げる者もいるが、なんとなく呆然と成り行きを見守る者が主流だった。


『さすが、クールジャパン』


 諸外国から、そう評された。


 この会議に、宇宙人側は三名でやってくると言う。

 日本政府からは、外務大臣と官僚三名、学者三名が出席する。

 それに米軍のオブザーバーとして、軍人三名と、宇宙開発局のお偉いさん二名が出席することに決まった。


 日本代表が外務大臣でいいのか、と論争が起こったが、外交ではあるのだ。

 それに何かあった場合に備え、最高指揮官たる首相は距離を置くべきということになった。

 その代わり、首相は東京からWEB参加することになっている。


 会議に先立ち、地球側の出席者が十二名と多いこと、宇宙人は地球の外気に触れても問題がないか、の二点を確認した。


 宇宙人側は、人数に関して承諾し、外気の問題は、一人一人がシールドを張っているので、双方に影響はでないと保証した。


 その日、富士周辺は大混乱に陥った。

 富士から避難しようとする人々と、富士に向かおうとする人々で、新幹線も東名高速道路も大混雑している。

 国際便は全便欠航で、日本への渡航は禁止になった。

 それでも日本に向かおうとする人々で、各国の空港や港ではトラブルが起きていた。


 そうした大混乱の中、両代表団の会議は行われた。


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