エンディング
「……アリア様。感動的なシーンの最中に水を差すようで申し訳ないんだが」
俺は右手に握った、眩いばかりに発光する『黄金のたわし』を顔の前に掲げた。
「なんでたわしなんだ? 伝説の聖剣とか、奇跡を呼ぶ宝玉とか、もっとこう……勇者っぽいアイテムはなかったのか?」
アリア様は慈愛に満ちた微笑みを浮かべたまま、一切の迷いなく答えた。
「あら。だって、あなたが一番心を動かし、記憶の底で必死に握りしめていたのは、その『たわしの欠片』だったではありませんか。想いの強さが形を成すのなら、それは当然の結果ですわ」
「それはそうだけど! あれは状況的にそれしかなかったからで……!」
「いいじゃありませんか、主様! 見てください、この毛並み……いえ、毛先の揃い方! 以前の安物とは比べ物にならないほど、汚れ(悪意)を絡め取りそうな弾力ですわ!」
トランが目を輝かせ、うっとりとたわしを指で突っついている。
「ご主人様、これならボクの銃身も、一拭きでピカピカだね! 試しにちょっと擦ってみてよ!」
フォルムまでが期待の眼差しを向けてくる。
「……はぁ、分かったよ」
俺は半ば諦め、その黄金のたわしでトランの盾を軽くひとなでした。
すると、どうだ。
シュルッ、と心地よい音が響いたかと思うと、盾にこびりついていた影の残滓やジャムの汚れが一瞬で消滅し、鏡のような光沢を取り戻したではないか。
それどころか、磨かれた箇所から「物理耐性アップ」や「全属性防御強化」というログが視界を埋め尽くしていく。
「……え、これ、磨くたびにバフがかかるのか?」
「ふふ、言ったでしょう? 絆を刻むたびに強くなると。それは、彼女たちを『慈しむ心』が形になった、ある意味で究極の聖遺物なのですから」
アリア様は満足げに頷くと、最後にいたずらっぽく付け加えた。
「ただし、あまり磨きすぎて、彼女たちの肌までツルツルにしすぎないように気をつけてくださいね?」
「そんな器用なことできるか!」
俺のツッコミに、フォルムとトランが顔を見合わせて笑い出す。
記憶はまだ完全じゃない。でも、この妙にシュールで、それでいて温かい空気感。
この「たわし」と一緒に、俺たちはまた一から、最高にバカバカしくて強い絆を磨き上げていくんだろう。




