ストックと無縁の
きっともう、僕は人を好きになることはない。
凡そ人という生き物の愚かさを知ってしまったために。
愚かで醜い。
そういう生き物を、昔は愛していたはずだった。
いつからか、信じることを諦めてしまった。
裏切られたわけでもなく、ただ信じる意義を感じなくなっていった。
「まあ、別に気にするほどのことでもないのかもしれませんが」
隣りに座っていた蛙鳴は、静かに頷いてから口を開く。
「受け売りですが」
やりたくないことが生まれるのは当然で、それが人間関係でも仕事でも勉強でも同じ。
やりたくなくなったならやらなくてもいい。ただし、後悔しないように。
「…流石だね、君の恋人」
「やっぱりわかりますか」
「わかるさ。」
気にするなというよりは、何もしなくていいという意味だろう。
「カエルさんは?」
「僕は…」
きっと、僕にもそんな時が来ます。
でも、僕はそれでもいいと思う。
自分が信じれなくても、自分を信じてくれる人がいれば、僕もきっと信じ方を思い出せる。
だから、きっと大丈夫ですよ。
珍しく、彼は笑った。
照れくさそうに、擽ったそうに。
愛に満ちたひとというのは、こんなにも眩しかっただろうか。
かつては僕もこうだったはず。
でも、もう戻りたいとは思わない。
願っても、叶いはしない。
彼の語ったように、僕を信じてくれる人に出会うまで、このままでもいい。




