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もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

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48 火属性の授業



 両親に相談したところ、私の得意な火魔法をより勉強するため、属性選択は火属性がいいと言われた。


 ついでに離宮から戻ったあとに王家から通達等はないかを聞くと、何もないらしい。


 逆に離宮で問題を起こしていないかどうかや他の招待者のことをあれこれ聞かれてしまい、余計なことを聞いてしまったと思った。





 私はすぐに火属性を選択する内容を書いて書類を提出した。


 なので、属性別の授業の時には火属性のところへ行けばいい。


 アヤナは光属性、レベッカは氷属性、エリザベートは雷属性、マルゴットは土属性の授業に行くとのこと。


 火属性の授業を担当する先生や同じ選択をした生徒が誰なのかが気になっていた。


「ルクレシア」


 隣の席に座ったのはイアンだった。


「一緒だね」

「どうして?」


 イアンは風魔法が得意のはず。風属性の授業に出ると思っていた。


「他の属性にも興味があるから」

「それはわかるけれど……」


 私はすぐに周囲を見回した。


「レアンはいないよ」


 何を確認したのかがわかってしまった。


「レアンは風属性?」

「そう。どんな感じだったかはあとで教えてもらえる」


 イアンが別の授業に出ても、レアンから風属性の授業については教えてもらえばいいってわけね。


「火属性に興味があるの?」

「ルクレシアにも興味があるよ?」


 眉を思いっきりしかめて見せた。


「冗談を言っている場合ではないわ。属性選択はとても大事なのよ?」

「わかっているよ。だからこそ、風属性以外の可能性も考えたい。もしかしたら、複属性使いになれるかもしれないから」


 確かにそれはある。


 風属性はとても有用度が高いので、風属性を得意にしたい、専門にしたいという人は大勢いる。


 もちろん、その中で優秀になれるかどうか、風魔法を使いこなせるかどうかはわからない。


 でも、上位になるほど狭き門を潜り抜けることができる者は限られてくる。


 風魔法を極める覚悟で励むのが正道だけど、本当に風魔法だけしかない者は途中で弾かれてしまうのが現実らしい。


 そうなると、複属性使いになることで有利になることを目指してもいい。


「風と相性がいい属性はいくつかあるからね。火もその一つだよ」

「そうね」

「僕もレアンも跡継ぎじゃないから、風魔法を極める必要はない。別の可能性を探してもいいって言われているからさ」


 なるほどね。


 もし伯爵家を継ぐということであれば、極めて有用な属性である風の系譜を守れるようにしたい。


 家の事情で属性選択は風しかありえない、ということになる。


 でも、イアンとレアンは次男と三男。


 風の系譜は跡継ぎの長男に任せ、次男と三男はより多くの選択から自分に合うものを選べばいい。


「次は雷属性の授業にも出てみるつもり」

「いろいろ試したいわけね」

「ルクレシアは?」

「私が得意にしているのは火魔法だわ」

「そうだけど、風や雷の属性授業も試しに出ることだってできる。一緒に出てみない?」


 心が揺れた。


 雷はともかく、風属性の授業に出てみたいのはある。


「考えておくわ」

「中間テストまでは考えてもいい」

「でも、選択属性の書類は出してしまったわ」

「大丈夫だよ。中間テストまでは変更できる。でも、ギリギリだと変更できない。火属性のテストを受けることになるから注意して」

「わかったわ」

「他の属性の授業に出るのもきっと楽しいよ。魔法以外のことでもね」

「魔法以外のこと?」

「いずれわかるよ」


 火属性を担当する先生が教室に来た。


「やはり多いな。隣の教室も火属性だ。席がない者は隣の教室に移動しろ」


 火属性の授業をする教室に来た生徒の数が多く、席が足りてなかった。


 特級クラスから入れるので私やイアンは席に座ることができたけれど、上級クラス以下の生徒や遅れて来た人は席がなく、立っているしかない状態だった。


「今日は二学期の授業についての説明になる。授業のスケジュールについて書かれたプリントを配布する」


 これは便利ね!


 プリントを見れば二学期中にどのようなことを習うのかが把握でき、中間テストまでの範囲もざっとではあるけれどわかる。


「まだどの属性を選択するかを決めていない者もいるだろう。他の属性についても初日はこのようなプリントを配る。気になる者は学生課で手に入る。教科書の配布も同じだが、ここに来た者については教科書も配る」


 火属性の教科書も配られた。


「基礎や初級はできて当然だ。中級魔法を習うための準備として初級魔法の授業から始まるが、中間テストは中級だ。他の属性に気を取られていると、中間テストの成績が悪くなるのは目に見えている。さっさと覚悟を決めて自主勉強に励め!」


 中間テストは中級……。


 一気にハードルが上がる気がした。


 でも、魔法学院は優秀な魔法使いに育てるための学校。


 甘くはないのは当然のこと。


 予想以上に早く授業が進みそうだった。





 属性別の授業が終わり、特級クラスに戻った。


「イアンが一緒だったみたいね」

「教室に戻る途中、廊下で話している女子がいたわ」


 エリザベートもマルゴットも知っているらしい。


「風属性の授業に行くと思っていました」


 レベッカが加わって来た。


「私も風属性の授業だと思っていたからびっくりしたわ」

「ルクレシアが誘ったと聞いたけれど?」

「誘っていないわ」


 やめてほしい。変な補正は。


「そう。でも、イアンが火属性の授業なんて意外だわ」

「最初だから他の授業も気になったんじゃない?」


 アヤナも会話に加わった。


「光属性はすごかったわよ。席が足りないどころか、教室に入れない人が沢山いたわ」

「そうなの?」


 私にとっては意外だった。


 確かに光属性はディアマス王国において重視されている。


 でも、現在における光魔法の使い手は全体的にみると少ないはずだった。


「魔法学院は光魔法の使い手が多いのかしら?」

「違うわよ。光属性の授業に必ずいる人物を見るために決まっているじゃない!」

「誰なの?」


 私がそう言った瞬間、四人の女子が揃って呆れたような表情を浮かべた。


 なんとなく仲間はずれな気分。


「王子」

「アルード様よ」

「アルード様に決まっているわ!」

「本当にわからなかったのですか?」


 言われて納得。でも。


「アルード様以外に注目されている人がいるのかもと思って」

「アヤナね」

「アヤナよ」

「アヤナです」


 三人はほぼ同時にそう言いと、アヤナに嫉妬するかのような強い視線を向けた。


「アヤナはかなり注目されていたらしいわ!」

「ルクレシアのせいよ!」

「高位の令嬢が友人になりたがっていたせいです」


 非常に心当たりがある。


「一学期の総合順位では女子の二位、しかもこの見た目だからよ!」


 頭が良くて魔法の実力もある、ピンクの髪をした可愛い女子。


「図々しい性格なのに!」

「見た目に騙されているわ!」

「目が曇っています」


 エリザベート、マルゴット、レベッカに同意。


「他の属性の授業はどうだったのよ? 休み時間には限りがあるのよ?」

「次は自習になった! 各属性の授業についての情報交換をして、各自の属性選択を速やかに決めるようにとのことだ!」


 生徒が来て通達した。


 そこで一人ずつ各属性の授業がどうだったのかを話すことになった。


「私から話すわ」


 アヤナが申し出た。


「あまりにも人が多いから、先生が光魔法のテストをしたわ」


 先生が指定した魔法を使えるかどうかをテストされ、使えない者は教室から出ていくように言われ、全員が着席できるようになったところでプリントと教科書が配布された。


「次はエリザベートよ」

「雷属性の選択希望者は少なくて、全員席に座れたわ」


 エリザベートを始めとした優秀な雷魔法の使い手と言われる生徒が揃っていたが、属性選択の書類を出している者が一人もいなかった。


 そのため、雷属性の授業を担当する先生はいかに雷属性が重要な属性であるかを力説し、ぜひ属性選択を雷にしてほしいといってプリントと教科書を配った。


「こんな感じね。次はレベッカよ」

「氷も少数でした。水が多いのはわかりきったことなので、様子見に氷属性の授業を見に来た生徒もいました。それでも教室から溢れることはありませんでした」


 先生もそのことはわかっていて、水属性の選択希望者は多く、その中で良い成績を取るのは難しい。


 この機会に氷属性への変更も考えてみてほしいと説明し、プリントと教科書を配って終わった。


「マルゴットのほうは?」

「土はとても多かったわ。いきなりプリントと教科書を配り出して、他の属性の授業に途中から参加できるようなら行けばいいと言って終わり」

「説明はないの?」


 ちょっと驚いた。


「ないわ。水も同じような感じだったと聞いたわよ」

「水魔法と土魔法を得意にする人が多いからでしょうね」

「他の属性に変更させて人数を減らしたがっているらしいわ。授業をする先生の負担が増えるから」

「なるほどね」

「次はルクレシアよ」


 私も火属性の授業がどうだったのかを話した。


「一応聞くけれど、基本的にはそれぞれが得意な属性にするつもりなのよね?」


 アヤナはすでに光属性に決めているけれど、エリザベート、マルゴット、レベッカはわからない。


 今後のために聞いておいた。


「来週は風属性を見に行くわ」


 エリザベートが言った。


「得意な属性は少しあとからでも授業についていけるから、最初は他の属性のほうを見に行っていいとお兄様に言われたわ」

「私も同じ。お姉さまもいくつかの属性を見て回ったらしいわ。だから、私も同じようにすればいいと助言してくれたわ」


 エリザベートやマルゴットは兄や姉の助言を受け、他の属性の授業に出るようだった。


「ルクレシアも他の授業を見に行くの?」

「火属性の授業はすぐに出なくてもいいと思っているわ。初級魔法の授業をしている間に他の属性がどんな感じなのかを見ておくのも悪くないわよね」

「だったら、一緒に風を見に行かない? 火と風の相性はいいわよ」


 突然、エリザベートに誘われた。


「そうね。行くわ」


 正直、誘ってくれて嬉しかった。


「私は光属性がどんな感じなのかは気になっているの。レベッカは?」

「私も次は光属性にしようかと思っていたところです」

「えー、二人が来るの? 他の属性の授業に行くか迷うわ」


 離宮で言っていた仲良くなるプランはどうしたのよ?


 嫌そうな顔を隠そうともしないアヤナに言いたくなった。


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