49 風属性のテスト
二回目の属性授業はエリザベートと風属性に行く約束をしていたので、指定されている教室へ一緒に向かった。
「レアン!」
エリザベートは教室にいたレアンに声をかけた。
「イアンやカーライト様は?」
「イアンは雷、カーライト様は火だよ」
レアンはそう言ったあと、私とエリザベートを交互に見つめた。
「きっと二人は残念がっているよ。火に行けばルクレシア、雷に行けばエリザベートと会えると思っているだろうから」
「どうせ様子見でしょう?」
「私たちもそうだけど」
私とエリザベートはレアンの隣の席に座った。
「二人は風に興味があるんだね」
「属性変更をするかどうかはわからないけれど、浮遊魔法は使えるようになりたいわ」
エリザベートは私と同じようなことを考えているらしい。
「ルクレシアも?」
「使えたら便利だとは思うわ。でも、習得できるかどうかはわからないわ」
「そうだね。でも、浮遊魔法は風の属性以外の者でも使えるよ」
「流動性がある属性はね。土と氷は絶望的だわ」
エリザベートが補足した。
「そうだね。でも、系譜次第って場合もあるよ」
系譜というのは先祖の血筋的に見てどうかということ。
自分の先祖がどの属性の魔法使いだったかによって、自分もその属性の魔法を使える可能性があるかどうかを判断する場合もある。
「エリザベートは大丈夫だろうけれど、ルクレシアは問題ない?」
「ええ。風の系譜にもつながっているわ」
一応、確認しておいた。
コランダム公爵家は火の系譜。
婚姻相手の属性は火、光、風、雷。
なので、私は火魔法以外にも光魔法、風魔法、雷魔法を使える可能性があった。
あくまでの系譜だけで判断した場合だけど。
「授業を始める」
風属性を担当する先生は教室に来ると、席が足りていないのに気付いた。
「人数が多いため、テストする。私の魔法を風魔法で防げ。できない者は隣の教室へ行くか別の属性へ行け!」
いきなり教室に風が吹き始めた。
もちろん、自然の風ではない。魔法の風。
「風魔法で防ぐの?」
「そうみたいね」
私が慌てることはない。
ヴァン様から習った風魔法を使った。
「ちょっと! 風魔法が使えるの?」
エリザベートが驚く。
「初級の魔法だから」
私の前方から逆方向に風を吹かせればいい。相殺される。
「隠していたのね! ずるいわ!」
エリザベートも同じ魔法を使った。
「エリザベートも使えるのね」
「お母様から習ったのよ。お母様は風の系譜だから」
納得。
教室に吹く風はどんどん強くなる。
生徒たちは次々と風魔法を使って防御をするか、無理と感じて教室を出ていく者かに分かれた。
「教科書を開け。復習からだが、気を抜くな」
風属性の授業が始まった。
クラスへ戻ると、アヤナが席でぐったりとしていた。
「どうしたの?」
「疲れただけ」
「大丈夫?」
いつものアヤナと明らかに違う。私は心配になった。
「早速実技の実践があったのよ。円、三角、四角の結界をテーブルの上に張って、効果を高めるために凝縮するってやつ」
「すでに光魔法の実践授業があったのね」
「教科書を見て読む時間はなし。自分で教科書は読んでおけって」
「スパルタね。風は教科書を読んでいたわよ」
エリザベートが言った。
「でも、教室に生徒が多かったから、最初に風魔法で防ぐ課題が出たわ。脱落者は他の教室に行くことになったのよ」
「じゃあ、ルクレシアは脱落じゃない?」
「それがちゃんと使えたのよ。密かに練習していたらしいわ」
「やるわね!」
「初級の風魔法で対応できたからよ。中間テストは中級なのよ? どんどん難しくなるだろうし、無理な気がするわ」
「ルクレシアは風だったのか」
カーライト様とイアンが来た。
「火属性に行ったがいなかった」
「エリザベートも雷にいなかったね。まあ、風かなとは思ったけれど」
イアンがいたずらっぽい表情を浮かべた。
「ルクレシアは離宮で風魔法を習っていたんだよ」
「なんですって?」
エリザベートが驚いた。
「まさか水泳の授業の間、ずっと風魔法を?」
「火魔法も練習したわよ。だけど、私についている魔導士の専門は消火係だったのよ。だから、少しだけ風魔法を教わったのよ」
「消火係ってことは水か氷じゃないの?」
「風と水が使える魔導士だったわ。王宮にいる魔導士は優秀で、複属性使いが普通にいるってことも教えてもらったわ」
「そんなことも知らなかったの?」
エリザベートが胸を張った。
「王宮に就職する競争率はとても高いのよ? よほどの実力者でなければ、一つの属性というだけでは書類選考で落とされるわ」
「そうなのね」
「すごいわよね。エリザベートの兄やマルゴットの姉は王宮の魔導士なのよね? 複属性使いってこと?」
「そうよ! お兄様は雷と風を使いこなせるわ!」
「そういえば、マルゴットとレベッカは?」
二人は光属性の授業に行くと言っていた。
「結界を作れない人は全員教室から追い出されたわ。使えるようになってから戻ってこいって言われたから、他の属性の授業に行ったのかもね」
「光属性は厳しそうね」
「噂では物凄く厳しい先生だって……アルード様は全然平気って感じで、さすがだと思ったわ」
アルード様は難易度の高い変形結界を使える。
幼い頃からトップレベルの英才教育を受けているはずなので、魔法学院の授業はむしろ簡単なのではないかと思った。
休み時間が終わる頃、レベッカとマルゴットが教室に戻って来た。
「遅かったわね」
「水の方を見て来たのよ」
「光属性の教室から追い出されたって聞いたわ」
レベッカとマルゴットの強い視線がアヤナに向けられた。
「しゃべったのね」
「告げ口をするとは」
「事実を伝えただけでしょう? 光属性の教室にいた者は全員知っているわ!」
「わざわざ言いふらすなんて」
「性格が悪いです」
確かに性格が良いとは言えない主人公だと私も思った。




