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双子星  作者: ユエラ
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後悔




その日の夜。

海の音を聞きながら二人一組(女性は3人で寝る予定だったが揉めていたので分けた。詳細は秘密)で借りたテントを張って寝ることになり、僕は珍しくラズさんと一緒になった。

隣のテントからはドバルとダイチさんの楽しそうな声が聞こえる。

「…今日拾ったのは何だ?」

ラズさんが寝る準備を終えて一息ついた僕に声をかけた。

「あぁ、そういえば見てませんでした」

僕は言われて思い出し、水着のポケットからそれを取り出す。

ポケットに入っていたのはとても透き通った蒼色の石だった。

宝石だと言われればそう見える。

それくらい綺麗だった。

「…ただの石、ではなさそうだな」

ラズさんが言うとおり、この石には不思議な力が込められている。

僕も今初めてよく見てよく触れたので最初気付かなかったのだが、これは明らかに魔道具。

呪術や闇魔法を使う時に使用するもので宝石、水晶などに星水の力を込められているもの。

「魔道具を見るのはこれで2度目だが落ちてるものなのか?」

「いえ。魔道具は魔法使いでも普段なかなか見ることができないものです。魔道具と言うもの自体、ウジ虫が作った星水の塊よりも先に人間が大きな力を求めてできた方法です。しかし作成には相当な聖水コントロールが必要です」

…ライルさん達のお父さんのような大魔術師でも限られた人にしかできない。

「ダイチを勘違いしたやつらが持ってた、ということは?」

「彼らならあり得なくもないですよね。むしろそっちの方が悩み一個減るんですけどね」

「…エリウスと歩いていた時にウジ虫らしき人はいなかった。俺たち以外の人に出会わなかった。俺の見落としもあるかもしれないがあいつらが持っていた説を推そう」

ラズさんは僕を安心させるように言った。

悩んでいても仕方ないよな。

「そうですね。僕もそう思います」

「…ちょっと散歩に行くか?」

ラズさんは僕が断らないと分かっているようにマントを羽織った。

「ご一緒させてください」

僕も立ち上がってテントを出た。

街灯も何もない砂浜はとても暗かった。

テントからあふれる明かりと星の輝きのみが唯一の明かり。

ラズさんの少し後ろを歩いてついて行く。

彼の背中はいつ見ても堂々としていて、安心感がある。

ドバルとは違う、安心感。

「ジェリオス」

僕は突然名前を呼ばれて足をとめた。

「暗いと見えないものがたくさんあって怖く感じる時もあるが、暗い中だからこそ見えるものや輝きを増すものもあると思わないか」

ラズさんは空を見上げて言った。

「ええ。それは僕も最近思うようになりました」

「俺も暗闇が怖かった頃があってな」

僕は驚いて笑って言う彼を見た。

「それは意外でした。勝手なイメージですがラズさんは怖いものなんてなさそう…」

そう言うとラズさんはますます楽しそうに笑った。

といってもドバルみたいな笑い方ではないけど。

「小さい頃は誰にでも怖いものくらいあるだろう」

でも、とラズさんは声を沈ませた。

「お前に言うのは何だか申し訳ないんだが、俺も昔幽閉されていたことがあってしばらくは暗闇が怖かったんだ」

「まさか…!?」

僕が慌てて聞くとラズさんは首を振った。

「ウジ虫じゃない。それにジェリオス達のような酷い目には合っていないから安心してくれ。…今思えば自業自得だったんだ、と思う」

曖昧な言い方でラズさんはそう言うとふっと笑った。

そして空に輝く星を一つ一つ見つめた。

「ガキの頃にいっぱい失敗をしておくべきだと、俺は教わって育った。だけど、失敗の中でもやっていいことと悪いことがある」

「それを学ぶために失敗を繰り返すんじゃないんですか?」

「本当は、な」

ラズさんは一瞬僕を見てから再び振り返って歩き始めた。

僕は意味を考えながらあとをついて行く。

そして答えが出ないまましばらく歩くとラズさんが歩きながら僕の名を呼んだ。

「いくら子供だからと言っても許されないことはある。それはジェリオスだって知っているはずだ。だからこそ今頑張っているところもあるのだろう?」

「…それをラズさんが?」

複雑な気持ちで尋ねると首をかしげた。

「わからない」

予想外の返答で僕の方がわからない。

ラズさんがこんな曖昧なことを言うなんて、いったい…。

「ラズさんそれは…」

「話がそれてしまったな」

僕の言葉をさえぎるようにラズさんは言った。

「それは気にしないのですが、あの…」

深く聞かない方がいいのだろうか。

でも気になる。

「すまない。俺もたまには昔の話を誰かにしたかったんだ。もっと楽しい記憶の話をするつもりだったんだが…久々に暗いのが怖く感じるよ」

ラズさんは足をとめた。

気付くと僕達はあの丘の上に来ていた。

ますます暗さは増していてお互いの顔もしっかりと分からない。

「僕は…ラズさんがいるから怖くないです」

それでも僕にはラズさんが見えてる、存在がわかる。

それだけで安心するんだ。

「目には見えなくても見えるんです。根拠のない戯言だと自分で思いますが、きっとラズさんにも見えてるから、怖がる必要はないって思います」

「ありがとう、ジェリオス。大丈夫だ、俺にもちゃんと見えている」

ラズさんもエリウスさんも大事なことを話そうとしてくれない。

でもやっぱり無理に聞くのはよくないと思う。

それにウジ虫の事とは関係なさそうだし…なんて考えてしまうのは二人に失礼だな。

でも気になるのは本心。

仲間だしいつも助けてくれる二人の事をもっと知りたいとも思う。

もし過去の事で悩んでいるのなら何とかしてあげたいと言うおせっかいの気持ちも今の僕にはしっかりとある。

「何かあったら言ってくださいね。僕でも何かお役に立てるかもしれないので」

「ああ、いつか話すよ」

暗くてよく見えないけどラズさんが笑ったように見えた。

僕たちは横に並び海と空を見た。

外の世界に出て、旅を始めて本当に色々な景色を見た。

僕とラズさんが見ているこの景色はきらきらしていてとても綺麗だった。


翌日。

色々あったが楽しんだ海を離れて施設探しを再開した。

近くに一ヶ所発見し、破壊をした。

その後も南に下りながら施設を見つけ次第破壊をしていった。

そして数日が過ぎた。

「今日もいい天気ですね~」

ライルさんが気持ちよさそうに背伸びをする。

「太陽から元気をもらうよね」

エリウスさんが笑って言った。

それを見てメリッサさんがつまらなさそうにため息をつく。

「太陽からは元気はもらえないわよ。紫外線が…おぉ怖い」

「紫外線って…」

本当にメリッサさんは変わっていると思う。

ま、そこが彼女の持ち味なんだろうけど。

「おまえは乙女の心持ってないのかよ?」

ボソッと言ったダイチさんの言葉を彼女は聞き逃さなかった。

「ん~?紫外線を気にしない方がガサツで女子力低いと思うわよ?」

「そんな女子力なら俺はいらないね」

そのやりとりを横にラズさんが食料の入った袋を見て唸っていた。

そして袋の口を閉めると僕に声をかけた。

「一度食料の補給を行いたいのだが、近くに村か街はあるか?」

僕は地図を広げた。

運よくすぐ近くに村があることが分かった。

「小さい村みたいですけどお店はあると思います」

「なかったら少し辛抱すればいいだけだ、最低限の食料は自然からも調達できるからな」

僕は頷いて皆のいる方を向いた。

「みなさん、一旦近くの村に行こうと思います」

「お!久々のベッドか~♪」

ドバルが村と訊いて喜んだ。

ずっと野宿続きだったから体を休めるにはちょうどいいかもしれない。

「小さな町なのであまりいい環境ではないかもしれませんが…」

「それでも全然いい!剣もそろそろ買いたかったし」

「いいのあるといいね」

エリウスさんが笑顔でドバルを見る。

「村まではそんなに距離ないのでゆっくりいきましょうか」

「は~い」

ライルさんの元気な返事に皆で頷いて村へと向かった。


半日くらい歩いて目的地に着いた。

本当に小さな村だった。

それでもきちんとお店などは開いており、僕たち以外にも旅人らしき人達が見られた。

僕たちはまず宿で部屋を予約して夜までそれぞれの自由時間とした。

僕は村のお店にあった子供向けの『かきかたのほん』という本を買い、宿のロビーで鉛筆を持って字の練習をしていた。

ドバルには負けたくないからね。

何回もなぞったりして文字を書いていく。

元から読むことができたのと少しは書けていたので覚えるのは苦労しなかった。

本をしまうころにはだんだんと日は沈んでいき、何人かが宿に戻ってきた。

みんなは自然と僕のいたロビーに集まり雑談をして全員がそろうのを待っていた。

「もう真っ暗になったね」

ライルさんが僕たちにそういった。

窓から差し込んでいたオレンジ色の光は消え、宿の照明があたりを明るくしていた。

「それにしてもエリウスのやつ、遅いわね」

メリッサさんがラズさんの隣で買ってきたらしい棒のついたあめをくわえながら扉を見た。

ここに戻ってきていないのはエリウスさんだけだった。

ダイチさんが少し考えた後心配そうな顔で口を開いた。

「そういえばここでて解散してからエリウス見てないかも…」

「俺は店で剣を見てたときに後ろを通ったのを見たぞ~?」

ほかのみんなも情報を提供したがエリウスさんをみたのはドバルだけだった。

「確かに夜、というあいまいな時間設定はしましたがさすがに遅すぎますね」

僕は立ち上がって言った。

ウジ虫のこともあるし心配だ。

僕のそれを聞いてみんなも立ち上がる。

「探しにいこう!」


二組に分かれてエリウスさんを探した。

もしかしたら入れ違いになるかもしれない、と宿ではメリッサさんとライルさんが待っていてくれている。

僕とラズさんは名前を呼びながら走った。

村は小さいのですぐに見つかるかと思ったが見つからない。

「まったく、どこに行ったんだ?」

ラズさんが困った顔で辺りを見回した。

「村の中は探しつくしましたよね…。もしかして外に?」

空では星が輝いている。

村の外にいるとしたら探すのは困難だ。

ラズさんと僕は顔を見合わせた。

「一度宿に戻りましょう。もしかしたら戻っているかも」

ということで戻ってみたがそこには帰ってきていなかった。

メリッサさんがイライラした様子で腕組をし、扉をにらみつけていた。

「いくらなんでも遅すぎるわ。セリアファクト騎士団の恥よ」

そういう彼女をラズさんは制しながらも顔は曇っていた。

そのとき扉が開かれ、一斉に扉に注目する。

入ってきたのはドバルとダイチさん。

エリウスさんの姿は見えなかったがダイチさんが宿いっぱいに伝わるくらいの声で僕たちに言った。

「村から少しはなれたところでエリウスらしき人を見たって!」

その言葉で僕たちは全員で宿から飛び出した。

村を出て5分もしないところに家一件分の小さな瓦礫の山があった。

火事でもあったのかところどころに焼けたあとが残っていた。

そのあとや建物の風化具合から行って随分と昔にこの姿になってしまったように見える。

エリウスさんを見た、という声はここの場所を指していたという。

「エリウスー!」

ダイチさんが息を切らしながら叫ぶと瓦礫の中でガタッと何かが動くような音が聞こえ、少しすると中からエリウスさんが現れた。

「…みんな」

その声はいつもの彼女からは想像できないほど元気がなかった。

それは僕たちに心配をかけたことによる声ではないとすぐにわかった。

「心配したんだぞ」

ラズさんがその雰囲気から優しく声をかけた。

「うん、ごめん…」

「ここで何をしてたんだ?」

「その…ここが昔住んでた家だったから、それで…」

複雑そうな顔をして黙り込んでしまったエリウスさんに声をかけずメリッサさんが村のほうへと歩き始めた。

「はぁ~、誰かさんのせいでお腹すいちゃったわ~。帰りましょ」

「…行こうか」

ラズさんはエリウスさんの肩を優しく叩いてメリッサさんのあとを追った。

それを見てダイチさんとライルさんとドバルが笑顔でエリウスさんに近づいた。

「エリウスさん♪」

「無事だったんだしよかったよ!一緒に帰ろうぜ」

「今日の飯はなにかなぁ~」

「…ごめん」

三人の言葉に少し笑いながらエリウスさんもそう小さく言って二人と歩きはじめた。

僕はエリウスさんの産まれた家であるというその場を見て少し遅れてみんなのところへ向かった。

なんだかとても重く暗い雰囲気が漂っていた。





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