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双子星  作者: ユエラ
29/33

海戦





「ドバル、起きてください」

僕がいくら声をかけてもドバルは起きなかった。

まったく、変な時間に寝るから…。

僕を待ってたらしいけどそんなに心配しなくていいから。

「ドバル、起きて」

体を揺すってもドバルは起きなかった。

駄目だな、これは。

僕は扉を開けてからドバルを自分の背中に乗せた。

「…重い」

僕はドバルを背負って部屋を出た。

「帰るの?」

少女は僕を見ないで言った。

「はい、お世話になりました。また来ます」

彼女は何も言わないで本を読んでいた。

僕は出口に手をかけて一度彼女の方を振り向いた。

「今度来た時はまたお話ししてもらえますか?」

すると彼女は本を閉じ僕を見て頷いた。

「ではまた」

「…また、来てね」

僕も頷き扉を開いて廊下に出た。

廊下はとても明るくて僕は目を細めた。

すっかり朝だ。

「よいしょっと」

僕はドバルを担ぎなおして一度部屋へ向かった。

「おはよう」

道中ラズさんに会った。

ラズさんも今日は普段着のようでとてもラフな格好をしていた。

普段の服もいいがこのラズさんもまたカッコいい。

「ドバルか?」

僕の背中を見てラスさんが言った。

「本読んでだら寝ちゃったみたいで。困りますよね」

「俺も本を読むと眠くなるから気持ちはわかる」

ラズさんは笑ってドバルの頭をまるで父親かのように優しく撫でた。

「意外です。ラズさんは沢山本を読むんだと思ってました」

僕がそう言うとラズさんは小さく笑った。

「よく言われる。だが勉強は苦手でな、よく学校をさぼって剣の修行をしていた」

「えっ!?ラズさんが、ですか?」

「そこまで驚かれたのは始めてかも知れんな」

僕は笑うラズさんに謝った。

でもまったく怒っていなくてむしろ笑顔のままだった。

「謝ることじゃない。俺も自分でもう少し勉強した方がいいと思っているんだ」

「でもラズさんは人間としてすごく大人だと思います…僕に教えてほしいくらい」

ラズさんは足を止めた。

「なら俺はジェリオスに勉強を教えてもらおうかな。早くドバルを寝かせてやれ」

僕がラズさんの方を見るとドバルの部屋があった。

話をしているうちに着いていたようだ。

気付かなかった。

「ラズさんの意外な一面を知れて楽しかったです」

「それは何よりだ」

僕は一礼して部屋の扉を開けた。

そして振り返ってラズさんを見た。

「また後で」

「ああ、またな」

僕はラズさんが歩きだすのを見届けてから扉を閉めた。


約束の時間になり僕は荷物をまとめて部屋を出た。

少しだが仮眠もできたし…頑張ろう。

「そういえばドバルは起きたかな?」

僕は窓の外を見て思った。

なんだかんだで起きてそうだけど、部屋に行った方がいいのだろうか。

僕はドアノブに手をかけて止まった。

…起こしに行った方がもしドバルが寝ていた時に出発に遅れることが無くなるし、僕としても確認できて安心する。

だけどもしも部屋に行ってドバルが起きてたら何て会話するべきなんだろう。

だ、だめだ!

考え出したら止まらない。

こんなしょうもないことを考えている自分がおかしいんだ!

僕は固まったまま思った。

そうだよ、別にあの馬鹿が遅れたとしても僕にとって何も不利なことはないじゃないか。

そう思うと急に気持ちが楽になって僕はドアノブを回した。

廊下には誰もいなかった。

僕は一度隣の部屋を見て扉の前まで歩き出そうとしたが一歩だした所であきらめ、集合場所へと進み始めた。

もしドバルがいなかったら起こしに来ればいいだけだし。


「…はぁ」

僕らは港に着いた。

海の上には小さくなった船が見える。

「…すんませんでしたっ!!」

その船は僕たちが乗るはずだった船だった。

あぁ、僕も船で移動するってことをすっかり忘れてた。

僕は額に手を当てながらもう一度ため息をついた。

「ドバル、あなたを起こしに行かなかった僕にも非はあります」

あの時悩まずに起こしに行けばよかったと後悔しながら言った。

「二人ともそんな顔しないで。船も予定より早く出航しちゃったみたいだし…」

エリウスさんが僕たちを心配そうに見ながら言う。

予定よりも早く出航するとかウジ虫がらみとしか思えない。

「他に方法を考えましょう?」

僕たちはライルさんの案に同意した。

でも船に乗らなくてはマーリアには行けない。

ちなみに次に船が出るのは3日後。

グズルとは比較的近いのでそっちの方は多く出ているのだが、マーリアは距離があるためなかなか船は出ていなかった。

3日間待ってもいいけどもったいない気がする。

だからってグズルに一回行って歩いてマーリアに入国というのは逆に遠回り。

「…どうしましょう」

僕達が悩んでいるとドバルが手をたたいた。

「なぁ、泳いで行くのはどうだ?」

「かなり無理あると思うよ、俺は」

ダイチさんが苦笑いで返答する。

やっぱりドバルは馬鹿だ。

「私、泳げないからダイチと一緒で反対するわ」

メリッサさんが手を小さく上げて言った。

…へぇ、彼女泳げないんだ。

少し意外だなぁと思いながら僕はメリッサさんを見た。

「じゃぁさ、飛んで行くのはどう?」

「エリウスしか飛べないだろ?」

エリウスさんの提案にはラズさんが答えた。

「皆を一人ずつ運べばいいんじゃない?」

「それではエリウスさんに負担をかけすぎちゃいますし何日かかるかもわからないですし…」

僕がそう言うとエリウスさんは落ち込んだ様子で口を尖らせた。

「じゃぁ、どうしよう」

「船はまだあるんだ、出してもらえないか聞いてみよう」

ラズさんが周りを見ながら言った。

ドバルは頷いて早速船長らしき人に声をかけて行った。

乗せてもらえればいいけど…。

僕もダイチさんと共に一人の男性をあたった。

「すみません、マーリアまで船を出して行っただけませんか?」

「無理だね」

僕達がいくら説明をしても駄目そうだった。

むしろOKしてくれる人がいるんだろうか?

それでも僕たちはお願いした。

「しつこいな、無理だから」

そう言って男性が去ろうとした時、船の中から若い女性が現れた。

「何かあったの?」

僕が船に乗せてくれるようお願いしようと思った時、ダイチさんが彼女の前まで走った。

「いきなりで悪いんだけど船に乗せてほしんだ」

ダイチさんは彼女に言った。

「そう言われても…」

「そこをどうにかお願い!俺達急いでるんだ…」

ダイチさんはいきなりその女性の手をがっちりと握った。

「頼むよ…!」

険しかった女性の顔がだんだんと緩んできて、しまいには二人の周りが明るい色でキラキラと光り始めた。

いや、女性からそれは出されている。

「だめ?」

そのダイチさんの一言で女性は一気に笑顔になった。

「そんな、駄目だなんて…どうぞ乗って行ってくださいっ!」

急に声が優しくなり女性は目を輝かせた。

「おい、勝手に決めるな!」

先ほど僕たちが交渉していた男性が女性に言うと彼女はきっと睨んだ。

「父ちゃんは黙ってて!!」

「なっ!?」

どうやら彼は彼女のお父さんで船の所有者だったみたいだが…。

「さ、さ乗ってください」

「悪いな!助かるよ、サンキュー」

船に乗れることが確定したようだ。

ダイチさんは女性を待たせて僕の方まで走ってくると笑顔で言った。

「船、乗れるよ!皆を呼んでこよう」


僕は船酔いの事をすっかり忘れていた…。

うえ…気持ち悪い。

今回の揺れは前回よりもひどく体調の悪さもそれに比例して悪くなった。

もちろん隣でも同じ状況の人がいるわけだけど…あいつほど酷くはないんだけど。

僕は布団からでて立ち上がり、風に当たるために外へと向かって歩いた。

「あ、ジェリー大丈夫?」

外に出るとエリウスさんが一人で立っていた。

風でピンクの髪が揺れている。

「ええ。エリウスさんは一人なんですか?」

僕は彼女の隣に立った。

風が気持ちい。

「さっきまでダイチといて、その前はラズと一緒だったけど今一人~」

エリウスさんは笑って僕の方を見た。

「今度はジェリーだね♪」

「お邪魔ではありませんか?」

僕が尋ねるとエリウスさんは首を振った。

「そんなことないよ!せっかくだし、話そうよ」

僕は頷いた。

でも何を話せばいいんだろう。

そう思った時エリウスさんが再び笑った。

「ジェリーは疲れてない?昨日ずっと本読んでたんでしょ」

どこでそれを知ったのかわからないが心配してくれているようだった。

「疲れてませんよ。色々と読めて楽しかったです」

「ジェリーは読書好きなんだね」

「本は知識をくれますから。最初は読めない文字ばかりで苦労しました」

僕が苦笑いしながら言うとエリウスさんはそうだよね~と空を見上げた。

「ジェリーって文字も自分で勉強したの?」

「施設に入る前の小さい時には簡単な文字は読めてましたから難しいものだけ」

エリウスさんはしばらく黙って空を見ていた。

僕が何か悪いことでも言ってしまったんだろうかと思って顔を見ると彼女は僕の方を向いた。

「私は学校に行けただけ幸せだったのかな?」

僕はどうしてエリウスさんがそんなこと言うのかわからなかった。

でもなんだか少し悲しそうな顔に見えた。

「エリウスさんはマーリアの小学部でダイチさんに会ったんでしたね。でも転校したんでしたよね?」

彼女は頷いた。

「その後もいろんな学校を転校したんだけど、小学部4年の時から学校には行ってないの…」

「そうなんですか」

僕が申し訳なさげに言うと彼女は笑った。

「気にしないで。家の事情だから仕方ないの。そう言えばライルもご両親に捨てられたんだよね」

僕はその言葉に疑問を覚えつつも普通に返事をした。

「ええ。彼女達はその後拾ってもらったみたいですけど僕たちと出会った日にその育ての親にも捨てられてしまったみたいです」

「どうしてだろうね」

「え?」

「だって彼女達は悪いことをしていていないのに親に二回も捨てられたんだよ。それって酷いよね。ライルたちが悪い子なら仕方ないけど…」

「ちょっと待ってください!」

僕はエリウスさんの言葉に割り込んだ。

彼女は驚いている様子で僕を見ていた。

「悪い子なら親に捨てられてもいい、そう思っているんですか?」

エリウスさんは下を向いてしまった。

「先ほどの言葉と言い、もしかしてエリウスさんも…」

「違うよ、私は捨てられてなんかない。私は…」

何かを言いかけた時、船は急に酷く揺れた。

僕は一気に具合悪くなってその場に座り込んだ。

「大丈夫?」

エリウスさんが僕の肩に手を載せた。

いきなり揺れて何があったんですか…。

僕は船につかまりながら立ちあがった。

「なんとか…」

「顔真っ青だよ?…ここで待ってて!何があったか調べてくるから」

エリウスさんはそう言って僕を置いて走って行った。

具合悪くなかったら僕も今すぐ行くのに…。

船の揺れはだいぶ落ち着いた。

周りが騒がしい。

船の故障か、はたまた別の何かか。

僕は壁によしかかりながら甲板へ向かった。

そこには海を見ているラズさんがいた。

「ラズさん」

「なんだジェリオスか」

僕の方を向いたラズさんの所まで歩く。

体調もだいぶ落ち着いた。

「何があったんですか?」

「それが何かにぶつかったらしい…だが」

ラズさんはまた海を見た。

「海の中が気になる」

僕も一緒に海を見た。

穏やかに揺れている海。

「おーい!」

後ろから声がして振り返るとエリウスさんとメリッサさんがいた。

メリッサさんはラズさんを見つけた瞬間に走ってきて抱きついた。

「ラズ様私怖いわ~」

「よかったな…」

僕たちは合流してお互いの情報を伝えた。

「そういえばドバルが死んだわよ」

メリッサさんが楽しそうに言った。

さっきの揺れでだろうな。

「弟は大丈夫なのね?」

「そう簡単に死んでられませんからね」

「無理はしないでね」

エリウスさんに心配されながら僕は海を見た。

「ラズさん、海が気になるってどういうことでしょう」

エリウスさんとメリッサさんは特にこれといった情報を持っていなかった。

今は何もなく進んでいる。

たかが一回何かにぶつかっただけなんだし、気にすることもなさそうだけど。

「さっき何かが泳ぐのが見えた」

「魚とかじゃないの?」

「魚にしては大きい。人二人分くらいあったぞ」

海にもモンスターはいる。

ラズさんはそれが揺れの原因なんじゃないかと思っているみたいだ。

たしかに海でモンスターに襲われて船が沈没、人が死んだ事故もある。

しかし海のモンスターは比較的穏やかなものが多くて、なにより自分よりも大きいものを襲ったりしない。

「二人分くらいなら襲われることないと思うけど…」

エリウスさんがそう言った瞬間、船が再び揺れたかと思うと大きな水の音が聞こえた。

そしてそれと同時に水面から大きな何かが飛び出した。

「はわわわわっ」

エリウスさんがそれを見て口を開けた。

そこには大きなたこがいた。

この船くらいはあるだろう。

そのたこの足には魚モンスターの顔が…。

「何よ、これ!ちょっとジェリオス、説明」

「そ、そんなこと言われてもこんなの僕も初めてですよ!」

メリッサさんが鞭を構えるのを見ながら僕は言った。

敵意剥きだしのそれはとても気持ち悪い姿をしていた。

モンスター自体あまり可愛いものではないのだが、これは特に酷かった。

「これは人二人分じゃ済まされないね」

エリウスさんは苦笑いしながら剣を構えているラズさんの横に立った。

「すまない」

「とりあえず船を壊させるわけにはいかないでしょ。やるわよ」

皆は頷いてモンスターを見た。



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