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テンプレ貴族なサムシング

 先週は投稿忘れていてすいませんでした……。


 お詫びも兼ねて今日中にもう一本投稿する予定です。


 ps.やっぱり成金猫にはツイッターは早すぎました。見てる人いないなら消そうと思うんですけど、どうでしょう?

「ぼっちゃま、朝でございます」

 

「後5分……」


「よいのですか?今日から学園に通うというのに、いきなり遅刻してしまっても……」


「うぉぉぉぉ!そうだったっ!!……時間はまだある!?」


「はい、余裕を持って準備できますとも」


「よ、良かった……」


 はあ、安心したら眠気が……。


「って本末転倒じゃねーか!!」


 慌てて目を覚ますと、何やら良い匂いが漂ってくる。何だか胃袋を刺激するような……。


「ぼっちゃま、もう少しで朝食ができますので、先に服を着替えて待っていて下さいね」


「爺やが作ってくれているのか」


 キッチンではエプロンをつけた爺やがせっせと朝食を作っており、手際の良さから料理が得意なのが分かる。


「絵になるなぁ」


「ありがとうございます……ですがその言葉は、将来の奥様の為に取っておかれた方が良いですな」


「あー、そう言う事はカルロス兄さんに言ってやって。長男だし、鈍感だし」


 カルロス兄さんってば、村にいる時はいつも村の女の子がキャーキャー言っていたのに、それがどういう意味か分からないときた。


 ちなみに、クライン兄さんにもガロム兄さんにもファンクラブみたいなのはいた。

 俺?……いつも森にばっかり行ってたからな、いなかったよそんな人達。


「カルロス様は大丈夫でしょう」


「えぇー?兄弟の中で一番心配じゃない?」


「カルロス様は気づいていないようですが、既に幾人かからは好意を寄せられている様子です」


「兄さんの場合、それに気づけるかなんだよなぁ……」


 この場に居ない兄さんを心配しながらテーブルにつく。昨日も思ったがここの家具はどれも大きい。


「おいしそーな匂い……」


 そこにミューナが朝食の匂いを嗅ぎ付けて自分から起きてきた。


 これはミューナ史上初の快挙だ。


「ミューナ様、おはようございます」


「おはよーミューナ。目を開かないと躓くぞー」


「おはよー……。うにゅぃ、ねむねむ……」


 ミューナは俺の言葉で一瞬目を開いたが、俺のもとに着くなり膝の上で眠ってしまう……。


「って、駄目だぞミューナ。これ以上寝てると、爺やが朝食を一品ずつ減らすなんて事に……」


「だめ!」


 残念ながらまだ目は半開きの状態だが、どうやら完全に起きる事には成功したらしい。本当にご飯の力は偉大だ。


「よーし、服を着替えて飯にしようか」


 眠い時は兎に角身体を動かしていれば目が覚めるはずと言う事で、ついでに服も着替えさせる事にする。

 

「今日は……この服で行くか」


俺の選んだ服は無地の地味な服ながら、良い素材らしい(屋敷の使用人さんから聞いただけ)ので、大抵の所は失礼にならないはずだ。

 俺は茶色のズボンに白いシャツ(ちょっと前世の学校を意識した物)で、鏡で一応チェックしてみるが違和感は無いと思う。


 昔、『侍道』と筆で書いたようなプリントがされた服を好んで着ていた時期があったが、楓に「ファッションセンスが壊滅的」との指摘を受けてからはその辺に気をつけるようになった。


 今思えば、まるでジャパニーズラブの外国人みたいな格好だったと反省している。


「ミューナは……おぉ!似合ってるなぁ」


「うにゃ♪」


 その場でくるっと回るミューナだが、ミューナ自身の可愛さと相まって凄く良い!


 多分これは昨日爺やかヘリスが用意したんだろうが……控えめな形の白いワンピースに胸のリボンがアクセントになっていて、道ですれ違ったら思わず二度見してしまいそうだ。


「俺もだけど、服が白いんだから朝ご飯落としたら駄目だぞ~」


「はぁーい」


「お二人とも、朝食が出来上がったので席について下さい」


「にゃー♪」


 ミューナは漸くできたか!と言った様子で直ぐに席につく。


 ミューナが全部食べる前に、俺もさっさと食べとかないと……っ!?


「ちょっと……朝からこれは重いかなぁ、なんて思うんだけど」


 目の前にはテーブルを埋め尽くす程の料理の数々!

 まるで今から宴会が始まるようじゃないか!!


「おお、私としたことがつい作り過ぎてしまいました。

 ……たしかに、冷蔵箱の中身を半分程使うのは多すぎましたな」


 もうそれはついなんてレベルじゃ無いだろ……。

 

 ちなみに、冷蔵箱は地球の冷蔵庫とあまり変わらない物だ。……例のごとく転生者の仕業だ。

 “庫”じゃなくて“箱”なのはよく分からないが、地球とは違うオリジナル感でも出したかったのだろうか?


「とりあえず食べて、残ったら冷蔵箱かアイテムボックスに入れとくか……」


「そうですな、昼時は学食にするとして、余りは今日の晩にでも食べてしまいましょう」


 多分、普通の貴族は廃棄処分にするんだろうなぁ……勿体無い。


 

 こうして、朝食の処遇が決まったところで漸く食べ始めたのだが……



「無くなったな……」


「無くなりましたな……」


「無くなったねー」


「いや、ミューナが殆ど食ったせいな!?」


 はい。ぜーんぶミューナのおかげで食べきれました!さすがミューナだね!


「って、そのくせ腹が全然膨らんでないし、スライム凄いな……」


 某ハンター漫画の試験官の人みたいに、自分の体積以上は食えないだろうが、それでも軽く物理法則が無視されてる気がする。

 ……食えないよな?


「兎に角、ミューナはあればあるだけ食べる事が分かったな」


「これからは食事の量も気を付けなければなりませんな」


「えぇ~」


 ミューナはなんか拗ねてるが、仕方ないだろう今回の事は。


 ……今度スライムの生態も調べよう。俺はそう心に誓ったのだった。




















 現在は男子寮から出てすぐの所。部屋まで来てくれていたカルロス兄さんと一緒に歩いている。

 ヘリスもエリシア姉さんと一緒に来るらしいから、校舎に入るまでの道で待機だ。


 校舎に向かっている生徒らしき人達が皆此方を一瞥していくが、気にしない気にしない……。


「アル、お前がこれから行くクラスは主に貴族の為のクラスだ。

 他にも裕福な商人の息子なんかが来ているだろうが、どちらにせよ貴族社会には暗黙のルールみたいなのがある。これに関してはアルが知っている範囲でやれば大丈夫だが……問題は作法以前の部分だな」


 一応、今日から数日間はカルロス兄さんが案内役として授業以外は一緒にいてくれるので、今の内に学園についてレクチャーを受けようとしていたところだった、のだが……


「何でいきなりそんな不安な事言うんだよ……」


「わるいわるい。でもこれは聞いといた方が良いって」


 全く悪びれない兄さん。まあそりゃそうだ。一応兄さんは助言をしてくれているだけなんだから。


「とにかくだ。貴族のそれも今年入ったばっかりの奴等は自分の家柄自慢やら自分より格下の者たちを傘下に率いれようとするもんだ。俺の時も落ち着くまでに丸一年かかったからな……アルも気を付けた方が良い」


「うげぇ……」


 すげー面倒くさそうなクラスだなぁ。正直やっていける自信がない。


「まぁ心配すんな。学園長が言っていただろう?後でクラス変えれる的な事」


 それならもういっそのこと、ミューナと同じクラスでいい気がするんだけどな……。


「まあ一回行ってみろ。Aクラスは気疲れする分少し優遇されるからな」


「それってただ単に貴族だからって感じなんだろうけど……学園長も大変だなぁ、平等を目指しているのに、差別化はどうしても行わないといけないし」


 こっちの世界の貴族って皆こんな感じなんだろうか?……って俺も貴族だったっけ。


「まあ、この学園はましな方だろ。他じゃあ教師が貴族に頭下げてる所もあるって聞くし」


「うわ、行きたくないなぁ~」


 たしかに教師は平民の人もいるだろうし、どうしてもプライベートなんかにつけこまれたら抵抗出来ないだろう。


「「アル~!」」


「おっ、予想より早かったな」


 カルロス兄さんが敵兵発見!俺は素早くミューナを盾にガード!


「ミューナガードだっ!」


「うにゃっ!?」


「捕獲完了よ」


「作戦成功です!」


 なんと敵兵は二手に別れてミューナごと抱きしめてきた!!


「くっ!殺せっ!!」


「ふふふ、貴方は殺さずにじっくり痛めつけてやるわ」


「観念して校舎まで連行されて下さい!」


「うにゃー!のびしろをようきゅーする!」


「ミューナまで!?……お前ら、なんか打ち合わせでもしてたのか……?」


「「「別に」」」


「もう一回しよ~!」


 いや、本当に何も打ち合わせしていない。実際、本家とは内容も違うし。

ってか、ミューナに関してはどこで学んだのか、伸びしろ?を要求するよく分からない状態だ。


「エリシアなんかは以外とそう言うのノるのは知ってたけど……ヘリスは意外だったな」


「うん。俺もそう思った」


「つ、ついその場の空気で……うぅ」


「恥ずかしがるの遅いよ!」


 いや、エリシア姉さんは父さんの冗談なんかに付き合ってあげてたのを見た事あるから良いけど、ヘリスがこういうのにノってくれるなんて……。


「そろそろ行きましょう。少し注目を浴びすぎてるし」


 たしかに、道行く人達全員がこっちを見ている。こりゃ下手したら初日から問題になりそうだな。……やべぇ。

 




「そう言えばヘリス、作戦通りってのもノリだったのか?」

 

 なんとなく気になっただけだが質問してみると、反応は劇的だった。


「えぇっと、それはその、何と言いますか……」


 もう見え見えなくらい慌てているヘリス。だが、そこにエリシア姉さんが手を差し伸べてくれた。


「ヘリス、ここは私に任せて」


「エ、エリシアお姉様……」


「アル、さっきのは私たちが、私たちだけで、私たちの為に作った作戦よ。作戦名は『アル&ミューナ、モフモフ大作戦』よ!……ちなみに、発案は私、名前はヘリスが考えたわ」


「エリシアお姉様!?」


 どうやらエリシア姉さんが裏切った?ようだ。 

 ……何してんだろ、この二人は。


「おい、三人ともー、着いたぞ」


 カルロス兄さんの声に前を向いてみると、そこには昨日と変わらず、いや、昨日よりも間近で見たせいでいっそうインパクトが強くなった本校舎が建っていた。


「えぇーと、アルとジール、ミューナとメイドさん、ヘリスとエリシアに別れるんだったな」


 そういえばカルロス兄さんはカルロス兄さんで授業があるのか。今からは俺と爺や二人だけ……か。


「それじゃあ私たちは行くわね」


「アル、頑張って下さいね!」


「ヘリスも頑張れよー」


「では私たちも行きましょう、ミューナ様」


「はーい。……アル、バイバーイ!」


「また後でなー」


 こうして皆それぞれの教室に向かっていった。

 

「アル、俺たちも行くか」


「うん……」


 ヤバい……。あの二人よりも俺が一番緊張してるかも……!


「アル、とりあえず父さんがお前に学園行けっていったんだろ?ならお前が貴族っぽい事出来ないの分かってるって」


「そうかなぁ……そうかも」


 なんたって父さんだもんなぁ。あの人は何考えてるか正直分からん。


「私からも1つ」


「何?爺や」


「学園に通っていた頃の旦那様も少しばかり……いえ、かなりマイペースでしたな。あのマイペースぶりにはさしものぼっちゃまも勝てないかもしれません」


 なんか想像できてしまう……。


「ありがとう二人とも」


 いける気がしてきた。













 




 教室にて、目の前には6歳児ながら目が既に子供のような純粋な目に見えない人達。

 隣にはなんか初めて会った時から腰が低い先生。もしかしてカルロス兄さんが言っていたのはここなのだろうか?


「先日、中途入園試験を合格したアルギウス・グランバードさんです。皆さん、仲良くするようにしましょう」


「ただいまご紹介に預かりました、アルギウス・グランバードと申します。

 ……途中からの入園となりますが、皆さんに早く追いつけるよう頑張っていきたいです」


 セリフは完璧に出来たはずだ。後は周囲の反応だが……なんか舐め回すような視線が多くて身体が痒い。

 

「では空いている席……一番後ろから二番目の、真ん中の席にお願いします」


「はい」


 ちきしょう、入ったばかりなんだから端っこの席が良かったのに。


 教室は講堂のようになっているので、自分の席まで階段を上っていく。


 よし、足を引っかけてくる奴はいないな。


 後、使用人は自分の後ろに椅子を用意して座らせている人ばかりなので、俺もそれに習う。……新しいな。


「では、一時限目の準備をお願いします」


 そう言って先生はそそくさと部屋から出ていく。だが誰も気には止めない。


「お前がグランバード家の異端児と言う奴か」


 ……は?


「失礼ですが、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」


 とりあえず今の言葉を無視してスマーイルスマイル。

 多分、というか、間違いなく俺よりも家格は上だ。殴ってはいけないし、魔法を撃ち込んでもいけない。


「ふん、グランバード家の異端児は見識も狭いと見える。余はボルクトナ子爵家が3男、アズラエル・ボルクトナだ!」


「はぁ……」


 子爵だから一緒じゃん!……と思ったが、そういえば俺の家は“名誉”子爵だったっけ。

 つまり上司。オレ、リカイシタ。


「そうだ貴様。貴様の実力はどのくらいなのだ?いくら異端児と言えどあのグランバード家の者だ。武力に関しては無駄に有り余っているのであろう?」


 うわぁ……さっきから異端児異端児煩いなぁ。でも異端児のジョブを持ってた事もあるからあながち間違えでは無いけど。


 とりあえず穏便に済ませないといけないかな。


「まぁ多少は腕に自信はあるかと……」


「ほう……噂によると、幼竜を討伐したとか」


 ありゃ、もうバレてら。


「一人でではありませんが、一応倒しましたね」


 俺がそう言うと、アズ……ボ……じゃがいもはいやらしい笑みを浮かべてくる。


「そうか……では貴様が我等の派閥に入る事を許可しよう。ありがたく思え」


 何を言ってるんだ?こいつ。


「(ぼっちゃま、ボルクトナ家は色々と黒い噂が絶えません。ここは断っておくべきです)」


 爺やが教えてくれるが、そもそも俺は貴族の派閥争いに入るつもりは無い。将来の夢は悠々自適な冒険者ライフなんだから。


「そう言えば、仮にも貴様はあのエリシア様の弟だったな。どうだ?エリシア様が私の側室となれば、両家がより親密な関係になれると思うが……」


 相変わらずいや、更に気持ち悪い笑みを浮かべながら喋っているが、つまり俺にエリシア姉さんとの橋渡しをしろと。


 そもそも俺が派閥に入る事が確定事項として勝手に考えているし、そもそもこんな奴にエリシア姉さんは渡さないに決まってるだろ。


「すいませんがお断りさせて頂きます」


「なっ!?貴様っ!!……そう言えば、最近、グランバード子爵がもう1人の娘がいると公表したらしいな?

 たしか産まれた時は病弱だった為に外界との接触を絶っていたのだったか?なんでもその娘も容姿端麗と言うではないか。その者で手を打とう。な?」


 なんでヘリスの事を知ってるんだ?と思ったが、さすがに貴族には広まってしまってるか。

 それにしてもこいつは容姿でしか判断しないのか。


「お断りします」


「貴様ぁっ!!此方が下手に出ればいい気になりよって!!」


 どこが下手に出てるんだ?それにしてもこいつの目は前世で楓を狙ってた男共の目を数倍危なくした感じだな。

 後々面倒くさそうだし、本当に何とかならないだろうか?


 ピンポーン♪


 突如聞こえた音の音源を探すと、黒板?の上にかかっている物を見つけた。位置的にスピーカーのような物だろうか?形は全然違うが。


「えー、初等部1年A組のアルギウス・グランバード君。至急学園長室まで来て下さい」


 声的に学園長本人だろうか?普通の喋り方もできるんだあの人。


「ぼっちゃま、授業もあるので急いで行きましょう。……ボルクトナ様、申し訳ありませんがまた後日と言うことで……」


「うむ……良い返事を待っておる」


 じゃがいもの聞き分けが良くなるなんて、学園長って予想以上に凄い人だったりするのだろうか?


 それにしてもクラスの皆は最後まで傍観してたけど……じゃがいもっていつもこんな事してるんだろうか?

 じゃがいも君はよくいる嫌な貴族のつもりですが、どうしてもこの子との会話が茶番みたいにしか書けてない気がする……。


 あんまり書くものじゃないかもしれませんが、じゃがいも君の名前、ちょっと書いてる時に聞き覚えがあるような気がしたら、某格ゲーのキャラにいましたね。

 一応、違う物が元ネタなんですが、あっちのワイルドなアズラエルさんも同じ元ネタなんでしょうか……?

 

 今日の昼頃にもう一話投稿予定です。

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