51 魔法塔(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「あの……、さっきもちょっと話したんですけど、アサニヤ王国でマイルズ共和国のスパイというか、アサニヤ王国の大きめの商会に潜入して情報を集めているって人に助けてもらって……」
「マイルズ共和国も転移者のことは気にしているわ。
これまでマイルズの魔法塔に保護された転移者の、その経歴というかね。
本当に……、数は少ないけれど、様々だから。保護できずに亡くなった人の情報もあるわ。
シーザー王国、アサニヤ王国では、王家に見つかって自由を奪われた生活で、それを良しとした人もいれば、逃げることもできず衰弱した人もいる。
それが自分の人生だと……、諦めて……。
アサニヤの現聖女のマリナ様のことも聞いているわ。
『自分はアサニヤの民を救うためにこの世界に遣わされた』と思い込んで……、思い込まされているとしても、もう考えを変えることは難しいと。
シーザーは国民と転移者を関わらせていないから、いなければいないで済むかもしれない。
でも、アサニヤは次の聖女、転移者を確保できていないことに焦っているでしょうね」
「……実はシーザー王国まで、アサニヤの王族関係者らしき人物が来ていたようです。
俺達が怪しいと思いながらも、なかなか行動を起こさなかったので。
警戒しながらも……、ミコトのそばに居続けていた者がいました」
エドガーがカイラムのことを言ってくれる。もしかしたら、そうだったのかもしれない。
「ミコトは、アサニヤには存在がばれているってことね?
今は行方をつかませていないとしても。
シーザーでは貴族にはばれたけれど、王家まで話は行っていない?」
「いや、どこが動いているのかわかりませんが、シーザー王国の人間がマイルズ共和国の方へ人探しに来ていることは確認しています。
シアとユミエラとミコトを追ってきているようなので、その貴族なのか……、王家や神殿なのかはっきりしませんが」
「そうね……。
実はちょっと気になる話を聞いて……。
シーザー王国から王城の文官がマイルズ共和国の視察に来るそうよ。
なんでも王妃の思い付きだとか!
今までなかったことだから気になってね。
もしかしたらミコトを探している?」
エドガーは頷いた。
「そうかもしれません。
今、どこに?」
「どうだろう?
ゆっくりと視察して移動してるんだろうから。
ただ、コタンも目的地に入ってたわよ。
ジュノーの方が先だろうから、まだまだ先だと思うけど。
ミコトはどうするの?
マイルズ共和国の魔法塔に入る気はあるの?」
私は考えながら言った。
「私は……、エドガーとシアとユミエラとライカンと一緒にいたいです。
もう家族のような……。
それにエドガーとは結婚の約束をしてます」
マルミさんは目を丸くして「えっ!?」と叫んだ。
そして私とエドガーを見比べて……。
「あらあら、そういうことなの!?」
そういうことって、どういう……?
「……魔法塔に入らないと保護してもらえない。
みんなと別れて、ひとりで入らないといけない!?」
私が困ったように言うと、マルミさんが笑った。
「……なんか誤解しているみたいだけど、魔法塔のことをどう思ってるの?」
「え?
首都のジュノーになんか高い塔があって、そこで魔法使い達が閉じこもって研究してる?
そこにずっといなきゃいけない?
保護されるってことは出してもらえない……。
その塔には魔法使いしか入れない?」
マルミさんが笑い出す。少し落ち着いて、目尻の涙を指先で拭って払った。
「あはっ! ごめんごめん。
魔法塔は確かに施設としてあるけど、団体の名称だと思って!
私も『魔法塔』所属だけど、夫とコタンに来てる。夫も『魔法塔』所属の魔法使いであって、魔法学の研究者よ。
最初はジュノーに行って少し滞在しなきゃだけど、監禁されることはないから!
安心して!」
「魔法使いとして認められれば、『魔法塔』の仲間として、マイルズ共和国に守ってもらえるってことですか?』
なんかまだイメージがつかめない。
「俺も多属性持ちで聖魔法の力もあるみたいです。
俺も入れる?」
エドガーが急に告白して、私はびっくりする。
「えっ? エドガーも!?
あ、そうか、転移者の子どもでもあるから!?」
マルミさんが微笑む。
「母が来たら相談してみましょ!
予定では明後日くらいに来るのよね」
そしてマルミさんのことを聞いた。
マルミさんの旦那様は魔法学研究所にいて、お家もそっちにあるのだとか。
お子さんは7歳と5歳。
上の子は学校、下の子は小さい子が通えるかプレ学校みたいのが週3回あり、ない日には魔法学研究所の託児所に預けているそう。
あれ? カイトも週3って、同じ所じゃない!?
これから下のお子さんをプレ学校に迎えに行き、上のお子さんも迎えに行って帰宅するというので一緒にどう? と誘われる。
メグミさんが来たらお家にお邪魔することもあるだろうし、お子さん達にちゃんと会っておいた方がいいかも、ということになった。
マルミさんと一緒に薬学研究所を出て、乗合馬車に乗り図書館へ!
そこに学校があるのだそう。
まず下のお子さん5歳を迎えに行ったら、やっぱりカイトとカテリーナさんがいた!!
「ミコト! エドガー!」
カイトが走って来て、カテリーナさんも驚いている。
「仕事で知り合った方のお子さんもこちらに来ているそうで……」
話をしているとマルミさんが女の子を連れて戻って来た。
「カイト!」
「ナル!」
なんかふたりとももうお友達みたい。
カテリーナさんとマルミさんも挨拶して、私達もナルちゃんに紹介してもらった。
「ミコトももう帰る?」
カイトに聞かれるけれど、マルミさんを見て説明した。
「ナルちゃんのママさんと、お兄ちゃんを学校へ迎えに行って、ナルちゃんちへ行く予定なの」
「ナルんち、来るの!!」
ナルちゃんがちょっと照れながらうれしそうに私に言った。
「ええ、お邪魔していい?」
「うん! きてきて!」
するとカイトが口を尖らして言った。
「オレ! ミコトのうちに泊まったことあるもんね!」
オレ?
僕じゃなかったっけ?
ナルちゃんが「お泊り!? すごーい!!」と素直に驚いてくれるとカイトが少し赤くなって照れた。
「カイトの家はお隣なの」
私が説明するとナルちゃんが笑う。
「おとなりにお泊りかー!
でも、すごいよ!
カイトってアサニヤから船の中で寝て来たんだよね!
今度、話し聞きたいな!」
「ああ、いつでも話してやるぜ!」
いつになくカッコつけているカイト……。
なんかニヤニヤしてしまう。
また後で! と挨拶して別れるとナルちゃんと手を繋ぎ、学校の中へ向かう。
ナルちゃんのお兄ちゃんはエルくんという名だった。
ちょっと照れたように私達に挨拶してくれて、一緒に乗合馬車に乗って、魔法学研究所前まで。
すぐそばの家で、お邪魔したら、旦那様がもう帰宅されてて、夕食の準備を始めていたところだった。
「お客様!?」とすごく慌てていたので、「いえ、ご挨拶したらすぐ帰ります!」と叫んじゃったよ。
読んで下さり、ありがとうございます。
王家と考えると
アサニヤ王国にはミコトは知られていて、マイルズのどこかにいると思われてます。
シーザー王国ではミコトはまだ認識されてません。王妃に探されているはクルト(エドガー)です。
第2王子のエリオットが個人的にミコト、プリシラ(シア)、ミカエラ(ユミエラ)を追わせています。
王妃は気がついてるけど、転移者、そしてエドガーと一緒とはまだわかっていません。
でも、ミコト達も細かいとこまでは把握できてないです。




