↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/82

49 これからのこと(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 朝起きて、思った。

 うん、この家にはだいぶ慣れた。

 まだ数日だけど、街はギルド周辺しかよくわからない。

 

 今日は初日に行った狩場だし、いざとなったら歩いて帰れるとこだから安心だ。

 家、自分の家……。

 そう思ったら、心がほわっとした。

 いつでも帰れる、いていい場所。


 お味噌汁のせいか、昔の自分の家を思い出してた。

 お母さんとお父さんとお兄ちゃんと……。

 急にあの世界から切り離されて、私だけこっちに来ちゃった。

 あの世界にいた9年間より、こっちでの5年間の方が短いけれど、こっちの方がいろいろな体験をしてるというか、家族でないのに私を大切にしてくれる人達に恵まれて、今の私がある。


 でも、いつも、どこかで不安がある。

 また、ああなったらどうしようと。

 家に帰るために一歩進んで、周囲の景色が違うことに気がついて、ひとりきりで知らないところにいて……。

 あの恐怖というか絶望というか、それは未だに忘れられない。

 そんなことを考えてしまったせいか、家を出る時にすごく怖くなってしまい、エドガーの腕にぎゅっとつかまってしまった。


「どうした?」

「……大丈夫。ちょっと、昔のことを思い出して……」


 エドガーは「この方が歩きやすい」と手を繋いでくれた。


「ありがとう」


 シアが心配そうな表情で私を見ている。

 私は微笑む。うまく微笑んでるといいんだけど。 

 ライカンはシアに話し掛けてて、ユミエラもそっちの話に加わってる。


「……この世界に来た時のことを思い出しちゃった?」


 エドガーが小さな声で言った。

 私は頷く。

 エドガーの辛そうな顔。


「……帰りたいとか、思い出して悲しいとかじゃないの。

 私にとっては今が、私の世界で。

 日本のことは……、もう『あの世界』っていうくらい、私の中では思い出で、整理がついてきてる。

 帰れなかったスミレコさんやマリナ様のことも聞いてるし……。

 帰れないってわかってるっていうか、もし帰れるってなっても迷うっていうか……。

 こっちにいたいって思うだろうなってくらい」


 エドガーは何も言わずに話を聞いてくれている。


「私が怖いのは……、あの時みたいに、エドガーやシアやユミエラやライカンの前から、そんなこと起こるわけないと思っているのに、気づいたら全然違うところにいて、ひとりだと絶望すること……。

 その怖さを思い出しちゃって……」


 自分でも起きていないことを怖がっているって、バカだなと思う。でも、本当に一度、そういうことが起きてしまっているから……。

 どうしても起きないと思いきれなくて怖いと……。


「……そういうことがあったんだもの。

 もし、またって怖いのはわかる」


 エドガーが真剣な表情で語りかけてくれる。

 

「怖かったら言って、ずっとそばにいるから」

「うん、ありがとう」


 狩場まで手を繋いで歩き、到着したら、だいぶ気持ちが落ち着いた。

 やることがあるってのがいいのかもしれないな。


 私は魔力を探る。

 大きな……、前回のセーブルの魔力は覚えている。


「……前に行った草原の方に大きめの反応がある。

 6頭の群れ、かな?

 後こっちの右の方の森の中、草原へ出るあたりに、あ……、こっちは親子連れかな。

 子牛を入れて7頭ぐらいの群れ、みたい」


 私の言葉にライカンが言った。


「草原の方が全部成獣?」

「うん、小さい反応はないから、みんな大きいね」

「ということは角も期待できるな」


 この前と同じように森の中を進み、草原に出る前に隠れながら群れを偵察できた。


「今回のは大きいな。

 オスだけの群れのようだ」


 エドガーが囁く。


「うん、水だけのドロップで逃げてくれるかな?

 怪我させちゃうと皮が傷ものになっちゃうもんね。

 ストーンバレットはだめだし、アクアバレットも強すぎるよね?」

「ミコトの大量ドロップなら大丈夫だろ。

 前回もそれでうまくいってる」

「うん、ありがとう」


 私はウォータードロップを大量に打ち出した。

 セーブルが私とエドガーの姿に気づき、ぶつかってくる水玉に驚いて、反対側へ走り出す。

 全部向こうへ行ってしまった。

 私とエドガーは追い立てるように走り、ライカンが1頭仕留めたのを見た。

 ユミエラとシアがセーブルの走る勢いに苦戦している。

 シアのアクアバレット!

 うまい! 足を狙ってる。

 パニックになって、足踏みをして興奮状態になっているセーブルもいる!

 それにユミエラと追いついてエドガーが斬りかかる。

 私はシアと合流したんだけど、その時逃げるそぶりを見せていた1頭が方向を変えて私とシアに突っ込んできた。


「わ! ウインドストーム!!」


 私は叫んでいて、竜巻を作りぶつけた。

 竜巻の中に稲妻が光り、セーブルの頭に直撃して……、そのセーブルは倒れた……。

 

 私とシアは抱き合って座り込むみたいになってて。

 ライカンが走って来てくれた。


「シア! ミコト! 大丈夫か!

 ミコトは雷の力を使えるようになったみたいだな!」

「ライカン!

 使いこなすまではとても……。

 とっさに出たって感じ……」


 でも良かった……、特にケガもせず、セーブル3頭確保!!


「ライカン!

 セーブル、ライカンの方に収納して欲しい!」

 

 エドガーの言葉にライカンが収納してくれた。

 私はまた魔力を探る。

 草原にはいない。

 森の中に逃げ込んだ感じ、だな。

 子ども連れの群れも、私達から遠ざかりつつある。

 セーブルはもう少し時間を取ってから、だな。

 出歯ウサギの群れが茂みの中に隠れてるのを見つけ、エドガーとストーンバレットで狩った。

 これもライカンが収納してくれた。


 昼食を早めに食べることになり、見晴らしのいい草原に戻って食べることにする。


 食事をしていると他のパーティを見かけた。

 セーブルがここで獲れたという話がギルド内で共有されたようだ。

 ライカンのその説明を聞いてユミエラはちょっと不満そうな顔をした。

 まあ、秘密の狩場じゃないしね。

 きちんとどこで獲れたかを報告して、情報共有をするとパーティや私達のランクも上がりやすいようだ。

 優良パーティ、優良冒険者ってことだね。

 

 それに……、ここには長くいられるかわからない、そうわかっているのに、居心地が良くて、ずっといたいと思い始めている自分の気持ちに気づいて、少し戸惑った。

 ユミエラを見る。


 ユミエラはマイネを出なければならなくなった時に泣いた。

 こういう気持ちだったのかな。

 なんだか……、私と、ここにいるみんなは似ているのかも。

 前の世界というか……、それまでの居場所を理不尽に奪われたり、信じていたものが違っていたと突きつけられたり……。

 私は、みんなにも幸せになってもらいたい。

 傷ついた心や気持ちや……、そういうものを取り戻せるチャンスがあるなら、諦めないで欲しい気もする。

 でも、もう忘れて幸せになるって道もあるんだよね。

 ひとりひとり、どの道を選ぶかはわからないけど、私が助けてもらったように、私も助けになりたいと思う。


 まずは私がこれからどうするか、どうしたいか。

 情報を集めて考えないと!


 うん、またどっかに行かされちゃうんじゃないかって、不安がってる場合じゃないな!


読んで下さり、ありがとうございます。

ちょっと怪我をしてしまい、座っているのが辛い状態です。

午後の投稿はお休みさせて頂きます……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。