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129 これからも(シド視点) 《完結》

これで最終話。

完結です!

最後は書いてる途中ですごく気に入ったシドに〆てもらうことになりました。

最終話、かなり長めになっちゃいました。

どうぞよろしくお願いします。

 あれからエリオット王子とエレノア王女は王城で懸命に執務に励んでいる。

 仕切っていた大臣がいなくなったこともあり、最初は先例に倣って、また、その分野の文官と相談しながらの政務となったが、だんだん流れや良いところ、悪いところが見えるようになってきたようで、優秀な文官を役職に抜擢し、貴族でも若い有能な者がいれば重要な地位に取り立てた。そして、その者が力を奮えるように背景や環境、つまり、旧態依然の状態をさりげなく壊して風通しを良くしていく。

 エレノア王女がとても上手に動いている。

 エリオット王子が王になり、エレノア王女が神殿の主となり、王城と神殿を回す。

 そんな未来を心の中に描く者が増えていっている。


 エラン王子は休みの度、エリオット王子やエレノア王女について現場へいらして、よく話を聞いていた。

 長期休みにはマイルズ王国、アサニヤ王国の視察にも行かれていた。

 もちろん、イサクが文官として付いて行き、知識を叩きこんでいた。


『エリオット王子とエレノア王女はエラン王子を外交の要に育てようとされている』なんて噂があったほどだ。


 シーザー王国への魔法塔からの魔法使いの派遣はメグミ様がいらした。

 俺はシーザー王国での護衛担当として付くことになった。

 メグミ様は王妃の嫌う『転移者』だが、自分や王より年上ということもあり、特に問題なく謁見も済んで、1カ月の滞在期間中に大きな街を回って頂いた。

 が、いろいろな問題点を次々に指摘された。


 シーザー王国では転移者は王家が神殿に囲ってしまっていたこともあり、聖魔法の治療のことを知らない民が多い。

 周知に努め、聖魔法使いがシーザー王国に来た時には魔法治療してもらえるかもしれないくらいな認識になったと思う。

 そして、神殿や王家の主導という形ではなく、その街の病院や医師と提携協力することなど、いろいろな制度やルールを実際にやりながら付け加えていくというような日々だった。


 ミコトはメグミ様の前、すでにアサニヤ王国に1カ月行っていたそうだ。

 アサニヤの元聖女のマリナ様と仲良くなり、王家を出てマリナ様の世話をしていたカイラム王弟とも友人になり、ラスタル第3王子に懐かれていたとか。

 ミコトらしい。

 その時にミコトの護衛をしていたザイマが、今回もメグミ様の護衛として来ていたので、そういう話を聞けて楽しかった。

  エラン王子の母である側妃の実家はロディーニ伯爵家だった。あまり政治に関わってこなかった伝統のある伯爵家という立ち位置の家だ。

 エレノア王女は時々側妃と二人でお茶を飲むようになった。

 エラン王子のことを話しながらさりげなく外国の文化やしきたりなどを話題にしている。それから、王都の最近の様子など。


 王妃が気にして真意を問うと「王城での生活もエランが卒業となれば変わると思いますし」とエレノア王女は答えた。

 王妃は「そうだな」と問題視するのをやめた。

 勝手に、エラン王子と側妃が王城を出ることを想像しているのだろう。


 さらにエレノア王女はマイルズ共和国の商会と貴族を引き合わせるなんてことを始めた。

 ノルテスのエーリン商会(現ドージュを支える大商会だ)、オルガ商会のロバート、そしてユニコーン商会のホーク、ディー、ライカンも来ている。

 ライカンはモンテール伯爵家当主の弟だったということがわかった。

 モンテール伯爵は有能で、エレノア王女が神殿と魔法塔の連絡担当者とするべく、王領としたケルン伯爵領の統治を依頼し、侯爵に陞爵したのだ。

 何となくモンテール侯爵が神殿と外交を、ロディーニ伯爵家が他の高位貴族と協力して王城と王都を、エリオット王子とエレノア王女が王国の全体の政務を担うような形になり、それが上手くいっている。

 王妃は王にエリオット王子への譲位を迫るようになっていた。

 エラン王子が学校を卒業すると、ロディーニ伯爵家が何か言い出すかもと、もう王はエリオット王子、神殿の主はエレノア王女と決定してしまいたいのだろう。

 そのためならば、少々早く自分達が王城を出ることになっても致し方なしと判断したのだろう。

 王妃は未だに自分の力を過信している。

 大臣であった兄、オーテルロー侯爵は失ったが、オーテルロー侯爵家は代替わりとして息子、つまり俺の異母兄が継いだ。

 しかし、王妃の兄がしでかしたことの責任を取り、10年間要職にはつけない罰則が与えられている。

 侯爵家が残ったこと、自分の甥が継いだということに安堵しているのだろう。

 新オーテルロー侯爵には、俺とエレノア王女とエリオット王子で王妃と大臣がしていたことは全て伝えて、この先王妃についていてもなにも利がないことは伝えてある。

 実際は、もう、エリオット王子とエレノア王女の母という立場でしかない。


 エリオット王子に譲位をと言う王妃を、のらりくらりとかわして焦らせ、エラン王子が学校を卒業する直前、王と王妃に神殿に移って頂くことが決定した。

 焦らされていた王妃はこれで思い通りになると、王城を出て王と神殿で生活を始めた。

 王は既に譲位する書類にサイン済みだ。

 そして、その日がやって来た。


 大広間に貴族当主達が集められていた。夜会とは違い、ただ集められ、王の譲位、王室のこれからのことが発表される場だ。

 壇上の玉座はひとつだけ。

 一段低い所へ、前王と前王妃が入場し、椅子に腰かけた。俺はその後ろに控えた。

 その反対側にはエリオット王子、エラン王子、エレノア王女が並び、そしてその後ろに側妃が控えている。

 

「何故、側妃があのようなところに?」


 前王妃がそちらを睨みながら低い声で言う。


「エラン王子の母だからでしょう」


 俺は素っ気なく答えた。

 エリオット王子とモンテール侯爵、それに法務に関わる有力者であるアンドリュース侯爵が一緒にこれまでの貴族や文官の働きを褒め、褒賞を始めた。

 その中にイサクと母ライザの名があった。

 イサクは図書文書係からエリオット王子付きの文官になり、外交の責任者のひとりになっている。あの視察の旅のおかげだ。

 そしてライザは王都で親を亡くした子ども達を援助する団体を立ち上げ、その活動が大きくなっており、エレノア王女やロディーニ伯爵家が後ろ盾になっていることが発表された。

 つまり側妃が民のために動いてるということにもなる。

 前王は感心しているが、前王妃は面白くなさそうに手にした扇をぎりぎり握りしめている。

 ふふふ、まだこんなもんじゃないぞ。

 そしてイサクには子爵位が与えらえれることになった。

 前王妃が立ち上がろうとし、俺は後方から肩を押さえる。


「ここで異を唱えると貴族の心証が悪くなりますよ。

 もともとイサクを視察に出し、学ばせたのはあなただとみんな知っています」

「でも!! これではロディーニ伯爵家の、側妃の手柄に!」

「エリオット王子もそれはちゃんと考えて、対抗する自分の味方としてモンテール侯爵家やアンドリュース侯爵家を置かれているじゃありませんか!」


 そう言ってやれば、立ち上がるのをやめた。

 そこからエレノア王女が前に進み出てきた。


「前王がこれまで……、1年半の私達の動きを見て、譲位を決め、すでに正式に決定したことを報告致します。

 まず、前国王夫妻は既に譲位され、神殿で過されています。

 神殿は彼らの警護、そしてこれからますます重要になる魔法塔、アサニヤ王国、マイルズ王国との連絡窓口として今までより重要な場となるでしょう。

 そこで、エ(・)リ(・)オ(・)ッ(・)ト(・)が神殿の主となりました」


 大広間中から驚きの声。

 一番驚いていたのは前王妃だろうな。

 正面から顔を見られなくて、本当に残念だ。

 ようやく声を絞り出しつつ、だんだん声が大きくなる。


「え、エレノア!?

 あなたが王に!?

 それがお前の狙いだったのっ!!」

「いえ、違います。

 シーザー王国、新国王はエ(・)ラ(・)ン(・)!!」


 エラン王子が驚いた顔で兄と姉を弾かれたように見た。

 兄と姉は弟とその母である側妃の手を取り、エラン王子を玉座に、そしてその後ろに側妃と並んで立った。

 前王妃は顔面蒼白になっている。

 そして、喘ぐように私を振り返り見て、私の微笑みに気づくと「謀ったわね……」と呟き、前王の腕を掴んでゆすぶった。


「王!!

 何故、エランが!!

 私の子どもが王になるはずでは!!」


 前王は穏やかに言った。


「エランもエリオットもエレノアも、そしてエドワードとエドガーも、私の子だが?」


 王妃は信じられないものを見たように動きを止めた。


「え……、王は……。

 では、私の、私の今までは?

 何のために私は……。

 は、名と血の縛り……。

 エランの名……、わからない……、血のつながりもない……」


 もうその声は、どこにも届かないし、誰も聞こうとしないだろう。






 俺はエラン新国王の使節として、イサクとイサクに降嫁したエレノア、つまりヴェステ子爵家夫妻と一緒にマイルズ共和国の首都ジュノーを訪れていた。


 あの、夜会から2年、エラン国王発表の場から、もう半年経っていた。

 ユニコーン商会はマイルズ共和国とシーザー王国で着実に販路を扱う商品を増やしている。

 そして、その日に俺達が泊まることになったのは、ホテルでもドージュの屋敷でも魔法塔でもなく、ユニコーン商会の拠点となった屋敷だった。

 魔法塔とギルドのちょうど中間辺りの立地で、今はみんなで住んでいるのだそう。

 ライカンに案内されて到着すると、シアがエントランスで出迎えてくれた。

 よちよち歩きの子どもの手を引いている。


「あ、ヴィオラちゃんね!」


 エレノアが目を合わせるように座りこんでヴィオラに挨拶するが、恥ずかしがられている。

 ヴィオラをライカンがひょいと抱っこした。

 ユミエラとディーが少女を連れて出てきた。

 

「シドさん!

 お会いしたかったです!」

「ミレニア?

 大きくなったな!?」

「はい、もう私16歳です!!

 ユニコーン商会長の秘書をしてるんですよ!」


 もう大人になりかけているという感じのミレニアが笑う。

 助けた少女が成長しても幸せそうに笑うのを見れるのはいいな。


「ミコトとエドガーは部屋で待ってるよ!」


 ユミエラに言われて、シアが「こちらです」と歩き出す。

 

「男の子だったんですよ。

 もうエドガーより、エディやホークがメロメロで」

「え?

 女の子ならわかるけど!?」


 エレノアが楽しそうにイサクと笑い合う。


 ドアが開けられた先にエドガーとエディとホークがいて。エディとホークは身体つきもひと回り大きくなっている。

 イサクとエレノアはそちらと話を始めたので、俺は吸い寄せられるように部屋の奥へ。

 ソファにミコトが、少し大人っぽくなったミコトが小さな赤ちゃんを抱いている。


「ようこそ! シド!

 ユニコーン商会へ!」


 ミコトが小さな声でぼそぼそ言うので、こちらも声のトーンを下げる。


「元気そうだな」

「ええ、みなさんの活躍はマイルズ共和国でも話題になって!

 王妃への……復讐? 見たかったな」

「ああ、俺も正面から見たかったよ。

 それより、この子……」

「はい、私とエドガーの息子です。

 まだ生まれて2カ月。

 名前はヤマトです」

「ヤマト?

 ん、ミコトに響きが似てる」

「うん、向こうの世界の名前に近い。

 エドガーが向こうにちなんだ名前がいいと」

 

 ヤマトは黒い髪に青い瞳で「エドガーに似てるな」と俺は呟いた。

 

「本当!?

 みんな私似だって言うんだけど!?」

「まあ、ちっこさで言えば?」

「これから大きくなるんです!」


 そこへイサクとエレノアが来た。


「わー」

「イサク、叔父さんね!」

「えー」


 イサクが一音ずつしか発しない。

 エレノアが首を傾げた。


「うん、この涎掛け?

 女の子用?」

「あはは、やっぱそうだよね!?

 ホーク、やっぱり、これヤマトに似合わないみたいよ」

「だって、ミコトみたいなかわいい女の子が生まれると思ったんだよ!

 プレゼントしたの2年以上前だし!」

「だから……、婚約のお祝いに赤ちゃんの涎掛けって、どう考えてもおかしいだろ!?」


 エドガーがため息をついて言った。



   《   完結   》

長い間、お付き合い下さり、最後まで読んで頂けて、本当にありがとうございます。

どの登場人物もけっこう好きなのですが……、特にシドとホークは最初はこんなに最後まで関わる人だとは思わずに書いてました。

個人的にホークの当て馬設定、気に入ってまして、次はミレニアあたりに当たってくれたら面白そうだなと思っています。

で、ホークのプレゼント、ずっと気になってまして。

本当に最後までわからなかったんですよ。何をくれたか。

ミコトの出産となった時に出てきました。

すごいラブリーな涎掛けが!

私の息子がすごい兄さん顔で、退院時のセレモニードレスが超絶似合わなかったことを思い出しました。

生まれた時から「苦み走った顔をしているなー」と思っていて、1カ月健診で看護師さんに「に、兄さん!?」と二度見されながら言われましたからね。


読んで下さった方にちょっとでも、良かった! 面白かった! と思って頂けたらとてもうれしいです。

評価やブックマーク、感想を頂けたら、すんごくすんごく喜びます! 私が。

どうぞよろしくお願いします。

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