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世界に一人だけの〈彼女〉  作者: 坂本光陽


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理想の彼女


 女は星の数ほどいる。間違ってはいない。確かにその通りである。だけど、一人の男が一生のうちに出会える女の数は限られている。それも、また真実である。


 確信をもって言えるのだが、理想の彼女に出会える可能性は、限りなくゼロに近い。これは、アラサー男子の実感である。僕は悲観的すぎるだろうか。これまでに数人の女性と付き合ってきたが、運命の出会いを信じられるほど楽観的にはなれないのだ。


 賃貸物件に例えれば、わかりやすいのではないだろうか。もし、あなたがマンションの賃貸物件を探す場合、数多くのファクターについて考えなければならない。


 部屋の広さ、家賃、日当たり、ベランダの有無、コンロは直火式かIHか、洗濯機を置くスペースはあるか、トイレとバスルームは一緒か別か。さらに、最寄り駅までの距離、スーパーやコンビニとの距離、うるさい工場や小学校は近所にあるか、などなどエトセトラ。


 すべてが理想通りという可能性は、ほぼゼロだろう。いくつかのファクターは妥協しなければならない。それができないのなら、賃貸契約を結ぶことは、まず不可能である。


 言いかえれば、数多くのファクターを総合的にとらえて、いくつかは妥協を考慮しながら、賃貸契約を結ぶかどうかを判断するわけだ。


 さて、女性に置き換えた場合、年齢、性格、ルックス、スタイル、健康、体力、会話の楽しさ、ユーモアのセンス、心の安定性、経済的余裕、料理の腕前などの要素が、判断基準として挙げられる。


 数多くのファクターを総合的にとらえて、いくつかは妥協することを考慮しながら、彼女と付き合うかどうか、結婚という契約を結ぶかどうかを判断するわけだ。


 僕が女性たちと付き合っていた時、妥協点があったのかどうか、記憶をさかのぼってみる。その時点では彼女たちの魅力に目がいってしまい、欠点には気が付かなかったというところだろう。別れてしまったのは、その部分に妥協できなかった、我慢できなかったということになる。


 ここまで書いた時点で、どこからか女性たちの声が聞こえてきそうである。「おまえは一体、何様のつもりだ」と。このままでは反感をかってしまいそうなので、一応、弁明しておきたい。


 僕は決して、日本一の美女やアイドルと付き合いたいわけではない。会話が楽しくて、そばにいてほしいと思える、そんな理想の彼女をさがしているだけなのだ。


 そこで僕が目を付けたのは、AIキャラクター搭載型スピーカーだった。最新型には複数のAIキャラクターが設定されており、好みの人格を選ぶことができる。性格や声音の微調整も可能。しかも、しかも、データ入力によって人間のように成長するという優れものである。


 理想の彼女に育てあげるのに、まさに、うってつけではないか。かなり値の張る代物だったが、自分への御褒美として、思い切って購入することにした。


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