73 入院してからの日常?
改めて目覚まし時計を見たら14時を10分ほど過ぎたところだった。思ったよりも長話をしていなかったようで、安心した。実際に話していたのは30分にも満たなかったみたいね。
冷蔵庫から紅茶を取り出して一口飲んだ。
さて、どうしよう。困ったことになったと思ったの。なぜかというと、肝心なことを言い忘れたことに気がついたのだもの。皆に闘病記への名前出しをお願いするのを忘れたのよね。
・・・とりあえず今はどうしようもないよね。こんな事なら携帯ぐらい持ち込んでおけばよかったよ。そうすればメールでお願い出来たじゃん。
・・・イヤイヤ。それをしたら意味がない。安静にするつもりで携帯も持ってこなかったんだし。
そんなことをしばらく考えていたら、カーテンが揺れた。
「えーと、お母さん?」
「夏葉? どうぞ」
私の返事にカーテンを開けて娘が顔を見せた。その後ろに旦那と息子の姿も。三人して意外そうな顔をしている。
「ねえ、キャンさん達は?」
「もう、帰ったよ」
・・・そう訊くってことは待合スペースにいなかったってことよね。あそこは病室にくる前に通るもの。
何気なく時計を見て目を疑った。
「3時38分? いつの間にそんな時間に」
「母さん、寝惚けてんの」
「いや、さっき時計を見た時に2時10分くらいだったから、そんなに時間が経ったんだと思ったのよ」
「え~? ねえ、皆さん来たのよね。来てすぐに帰ったの?」
「(ギクッ)えーと、30分くらいかな。いたのは」
「なあ、母さん。いま、ギクッとしなかったか」
「はっ? いやいや、時計がそばになくてわからなかっただけだし」
「ほんとか~」
「本当よ~」
息子の疑わしそうな視線を躱しながら、私は笑顔を浮かべた。
「それなら良かったです。皆さん意外と常識人だったのですね」
旦那の台詞に苦笑いが浮かんだ。息子と娘も同じような笑顔を浮かべていた。この会話の間にも娘は持ってきた着替えなどを片付けてくれていた。
「あっ、そうだ。あのさ、本を持って帰ってほしいんだけど」
「読み終わった本? どれを持って帰るの」
「それもあるけど、昨日持ってきてくれた本は持って帰ってほしいのよ。そこまで読めないでしょう」
「母さんの速度なら読めんじゃないの」
「いや、これはじっくり読みたいから無理だと思う」
「でも、お母さんは凄いよね。入院してから7冊読んじゃったじゃない」
「だってさ、暇なんだもの。基本ベッドで寝てなさい。なのよ」
「入院ってそんなもんだろ」
「でも、暇」
「そういう言葉が出るのでしたら、もう大丈夫ですね」
「はい。ご心配をおかけしました」
「じゃあ、帰るね」
「ええ~、もう、帰るの~」
「長くいてもお母さんが休めないでしょ。水曜日を楽しみにしているから」
「俺は明日と明後日、顔出すからな」
「私もです」
「うん。ありがとう」
家族はそう言ってササッと撤収しました~。
その後は・・・誰もお見舞いに来なかったです。そして、夕食を食べて、夜の問診。いつものように闘病日誌を書いて、本を読んでいるうちに消灯時間になりました。
はい。お休みなさ~い。
翌朝、2月6日月曜日。昨日と打って変わっていい天気だ。いつものようにブレずに5時30分に起きた。
・・・でもな~、こんな時間にゴソゴソするのは、他の人の迷惑よね。
ということで、6時までは静かにしていたの。前みたいに闘病日誌も闘病記も書かなかった。5時50分。テレビをつけていつもの番組を見た。
朝食後、今日の予定を看護師さんが言いに来てくれた。今日はもう一度MRIを撮るといわれた。なので、その時間まではゆっくりした。それから尿検査と血液検査もといわれたよ。
検査が終わって病室に戻り少しして昼食だった。昼食を食べ終わるとすることがない。
また本を読んだり、闘病記の続きの、・・・病状説明について考えた。
えーと、まずは扁桃腺肥大症のこと。目のこと。耳のこと。それから、薬の副作用のことでしょ。・・・で、これのやり取りは軽妙にしないとね。本当のやり取りは・・・書かない方がいいよね。とりあえず、ここは家に帰ってから資料を見ながら考える・・・と。
病室に戻ってからは・・・、の前に、息子をデキるやつにしたんだから、参加させるかな~。そうすれば、混ぜっ返しができるよね。・・・うん。この案もありよね。じゃあ、ここは推敲するとして、病室に戻ってからの話・・・。
あー、どうしようかな? あのブラックアウト。えーと、ケイが来てて・・・本当に気持ち悪くて抱えてもらって・・・。
やっぱ、憧れのお姫様抱っこ入れとくか~。・・・でも、誰得? 言葉をもう少し考えて、どちらでも取れるようにするとか?
・・・ここって暗いかな。どうすればコメディー調になるのかな?
しばらく唸って考えたけど、言い案が浮かんでこない。やはりちゃんと書き上げないと無理っぽい。なので、あきらめることにしよう。家に帰ってパソコンに向かって考えることにしたの。
闘病記を閉じて、日誌の方を開いた。それで、検査のことを書いておいた。
今日も昼間にお見舞いに来る人はいなかった。夕方の4時30分頃、息子が顔を見せた。洗濯ものは後で旦那が来るだろうから、その時に渡すと言ったら残念そうだった。少し話をすると帰って行ったのでした。




