68 設定についての相談なの
ケイは少し考えていた。足を組んで左ひじを曲げて顎に当てる、考える人のポーズが様になっている。思いついたのか私を見てきた。
「それってさ、もしかして俺だけ特別にしてくれるの」
「まあね。というかさ、もう一つ現実問題があるじゃない」
そう言ったらわからないのか眉を寄せて、私の事を見てきた。
「なんのことだ」
「ケイ~、忘れているようだけどさ~、皆にさ、私達の関係が怪しまれているじゃん」
そう言ったらケイは手を打ち合わせた。・・・コントかよ。
「そういや、そうだったな。親戚だってこと知らないんだっけ」
「そうよ。分かったのが成人後ってこともあって、皆には話してないわよ」
「・・・それなら、ついでにその闘病記の中で暴露するか」
「いいの?」
「別にいいんじゃないか。話してないのもタイミングが合わなかっただけだし」
「ん~・・・それじゃあ、少し考えるよ。のりちゃんと会ったところでカミングアウトにもっていけばいいかな」
「あと、どうせなら、その中の俺。怪しい奴にしないか」
「へっ? 怪しい奴?」
「そうだな、どうせなら病んでる奴とかって、どうだ」
思わずケイの顔をマジマジと見つめてしまった。
「それって・・・本気?」
「モチ。話しの持っていき方次第では面白いことになりそうじゃないか」
・・・考えてみる。
・・・考えてみた。
・・・思いついた!
「いいの?」
「そうだな~。あとはどうせなら疑惑を使って、その中の俺は舞のことを好きなように見せるとか?・・・おい。その嫌そうな顔はなんだよ」
いかん。リアル想像して本音が顔に出てしまった。
「えー、めんどくさいことになりそうだからヤダ」
「それとな、どうせならケイのつく名前を考えてくれ」
「ケイ? なんで」
「前に舞が活動報告に俺達をイニシャルで出しただろ」
「いや、あれはイニシャルじゃないし」
「まあまあ、でも俺のこと、Kにしてただろ。それならケイと呼ばれるようにしてほしいかな」
ウ~ムと考える。・・・まあ、それなら希望通りにしますか。じゃあ、名前はいいよね。あとの設定は・・・。
「じゃあさ、とりあえずケイが出る部分を書き上げたら、パソコンに送るから添削してよ。気に入らなきゃ書き直すからさ」
「わかった。それじゃあ退院後を楽しみにしているよ」
ニヤリと笑う珪に、私もニヤリと笑い返した。
「ところでさ、遅くない。皆」
「そうだな。きっと宏文が遅れてるんじゃないか」
「あー、そうかも。でもさ、こんな雨の中を悪いよね」
「舞は気にするなよ。たまたま天気が悪かっただけだからな」
窓の外を見ると灰色の空が見えた。かなり雨が降っているのが分かる。
「そういえば舞に聞きたかったんだけど、お前はさ、なんで小説を書きだしたんだ」
「はあ~? 今更聞く?」
「今更なのは分かっているよ。話しを考えるのも、設定作るのも好きなのは知っているけどな。なのに初投稿作品がファンタジーだったから、なんでかと思ったんだよ」
「ああ~。月光の姫はたまたま勢いで書きだしただけよ。なろうに登録して思っていたより簡単に作品の投稿が出来ることが分かって、それなら書いてみようかな~、ってね」
「本当か~」
私の事を疑わしそうに見てきたけど本当のことだもん。
「本当だってば。あの頃はなろう関連で読んでいたものが、『悪役令嬢』ってキーワードで検索した短編ばっかでさ、似たような話ばかりで飽きてたんだよね。それで、自分ならどう書くから始まったの。まさかあんなに話が長くなるとは思わなかったし」
「あー、それも聞きたかった。なんで初連載があんなに長くなったのかも」
「それは設定をしっかり作り過ぎたからかな」
「凝りすぎって事か」
「凝ったつもりはないけど、短編じゃないから背景をしっかりさせようとしたらああなったのよ」
「だからって登場人物多すぎないか」
「でもさ、普通に考えたらあれくらいの人物は関わるわけでしょ。それにこれからもっと増えるはずだし」
「増えるのか」
「当たり前でしょ。まだ最低二人は名前が決まった人がいて、それとセリアちゃんのいとこが一人は増えるわけだし。あと、各国の王族も出てくるから、その名前もね」
「・・・ちなみに何か国だっけ」
「63カ国。そのうち2カ国はもう名前が出ているよ」
「? ・・・ああ、サンフェリスとヴァイスコップだっけ」
「片方が違う。リングスタットだってば」
「あ~、そうか。自国ね」
「そうよ。まずは自国の設定しっかりさせなきゃでしょ」
「確かにな」
ひとしきり頷いたあと、また珪が聞いてきた。
「だけど無駄に凝りすぎだろ」
「だから凝ってないってば。それなら前に考えた話のほうが凝っているもの」
「それはどんな話だ」
「国が興ってから滅ぶまでの話」
「なんかすごくないか、それって」
「すごいかどうかは知らないけど、皆を登場人物にした話も関わっているから」
「はあー?・・・ちなみにどんなのだっけ、それは」
「これは元ネタが新井素子さんの扉を開けてからヒントをもらったもので、中3の皆が異世界に跳んじゃう話だったのよ。ただ、これ2つの話が同時進行で起こっていたからねえ」
「2つの話? そんなこと言っていたっけ?」
「う~ん、言ったと思うけど?」
「始まりってどんなだった?」
「えーと、ある火曜日の昼休みに廊下から教室に入った女の子が消えちゃったのよ」
「消えた? どうやって?」
「文字通りよ。教室に足を踏み入れたはずが、姿が消えちゃったの。見ていたのは彼女に声を掛けた友人の女の子と、廊下で立ち話をしていた男の子のみ。他の人に話しても信じてくれなくて、消えた子は行方不明扱いになるのね」
「舞、一言言っていいか。なんでそんなめんどくさい設定にするんだよ」




