30 (気分的に)ふっふっふっ 止めを刺そうかの~!
嘘・・・というか変な方向に持っていったせいで、収集がつかなくなったような?
こんな先生イジメはしなかったのに・・・?
孝一は舌で唇を湿らせると言った。
「確かに漢方薬に代わりになる物があるという話は聞いたことがないな」
「でしょ。で、詳しく話した方がいいんでしょ」
「まあ、話してくれるのなら」
私は一度息を吐き出した。
「あのさあ、黙っていたのは悪いとは思うけど、今回がいろいろ例外なんだからね」
と先に言っておく。
「私の扁桃腺って12歳からのつき合いなわけでしょ。私は高校を卒業して就職で東京に行ったのよ。その時に咳である大学病院にかかったことがあったのね。そうしたら、そこでもこの扁桃腺を見て珍しいって言われたのよ。おかげで定期的に通うことになったのさ」
一度言葉を切ったら孝一が訊いてきた。
「定期的ってどれくらいの頻度だったんだ」
「う~んと、その時は咳が収まるまで1ヶ月の間毎週で、そのあと毎月通うのが1年続いたかな。そのあとは3カ月に一度が10年、だったよ」
孝一が驚いた顔をした。
「10年って、こっちに戻って来てからも東京まで行ってたのか」
「そうだよ」
「そうだよって、なんでわざわざ」
「まあ、経過観察よ。それで、東京にいる間に薬を飲むと胃が荒れるのが判って、相談していたのよね。薬の成分が強すぎると、弱いのにされたりしたけど中々治らなくてね。あっ、でも、その頃は食べられなくなることはなかったのよ。おかげで製薬会社にも話が言って、三者面談したことがあったわね。結局は漢方薬系なら胃を荒らさないって結論が出たのよね」
孝一も飯尾先生も言葉が出ないようだ。まあね、あんまり聞かない話だと思うわよ。
「その時にお世話になった先生が言ってたのよね。これもある意味アレルギーの一種じゃないかと。それが表に出るか、内側に出るかの違いじゃないかって。だけどその先生が言うには、一般の薬も服用期間や成分によって胃の負担は左右されるから、胃を荒らすとは限らないってことと、気をつけないと胃潰瘍になって、はては胃癌になるぞと脅されたのよ」
孝一先生たちの顔にそんなことは聞いたことが無いって、ありありと浮かんでいる。
それを見上げていたらなんか、おかしくなってきた。
ふっふっふっ。困惑した顔をしているな、孝一よ。飯尾先生は・・・あれ。顔色が悪いよ。あー、気がついたか。血栓を溶かす薬が相性が悪いということに。だから、黙っていようと思ったのにさ。
まあ、こればっかりはどうしようもないわさ。薬を飲まなきゃ、血栓は無くならないしね。
ふっふっふっ。
止めを刺してやるとするかのぉ~。
「おい、池上。何を言う気だ」
「・・・あれ?また声に出してた?」
「しっかり出てた。これ以上精神的にフルボッコは勘弁してほしいんだけど」
孝一が情けない顔をしながら言った。私はベッドに起き上がって座り直した。点滴が訊いてきたのか、気力が出てきたからなのか、頭がしゃんとしてきている。
「起きて大丈夫か」
「まあ、なんとか。それで、ついでだから耳に痛いこといっていい?」
「聞きたくないと言っても言うんだろ」
「うん」
「うんじゃない」
「まあ、そう言わずに聞いてよ。私ね、孝一先生も言ったように自分の病気や症状について、それなりの知識はあるのね。いろいろ調べたしさ。調べるのも好きだし、そうやって雑学を増やすのも面白いし。あと、遺伝?野村先生も言っていたけど、親の病歴って子供にも遺伝している可能性があるわけでしょ。健康診断や人間ドックの問診にもあるじゃん、家族にこの病気になった人はいるかってやつ。でもさ、それだけじゃ、今は一概にいえないよね。歴史を紐解くと時代によって、なりやすい病気ってものがあったりしたしね。それに医学の進歩で昔は助からないような病気が、簡単な手術で治ったりしているじゃない。それはすごいことだと思うのよ」
「ちょっといいか、池上。その話はどこに向かっているんだよ」
「あのね、孝一先生。とりあえず言いたいことを言わせてよ。まあ、脱線しかけたことは認めるけど。・・・それでさっきも言ったけど、12歳から扁桃腺とはつき合ってきているわけでしょ。他にも親や祖母を見てたから、体質は似ると思っているのよ。私さ、本当は胃は丈夫な方なのね」
「嘘だろ」
孝一~。合いの手は要らんからな。
「いや、ほんとに。どちらかというと腸の方が弱い。緊張で胃を痛くするんじゃなくて、トイレに行きたくなるのよ。冷えるとゆるくなりやすいもの。夏場でも調子に乗ってアイスを2つ食べるとダメだし、氷を入れてガンガンに冷やしたものは一気飲み出来ないもの。それなら氷を口に含んでゆっくり融けるのを楽しんだ方がマシかな。でさ、この話もおっちゃん先生に言ってないから初耳でしょ」
そう言ったら頷く孝一先生。
「つまりね、こんな症状持ちのやつが、薬の臨床試験の協力なんてするわけないだろ。どうして孝一が了承したと思い込んだか知らないけど、患者に対して不誠実でしょ。中学の時からの同級生ってこともあるし、普段私はヘラヘラしているから頼みやすそうに見えたかもしれないけど、もう少し患者のことを大事にしろや!」
そう言って睨みつけたら、孝一先生も飯尾先生も首を竦めて頷いたのでした。




