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 特別篇 別ルートエンド

主人公の主人公による主人公のための妄想。

ティリヒさんがこの夜に寝所を訪れた場合の別ルートエンドです。

あくまでも妄想です。本編とは関係がありません。

続きのみが気になるというかたは読まなくても何の問題もないでしょう。

登場人物や設定については、今後の変更もありえます。ヒロイン先出しです。

ハーレムというタイトルにしておきながら、ヒロインが十一部まで登場しないので。

あ。これ投稿したので最初のヒロインが出てくるのは十二部になります。

こんなの書かずにさっさと続き書け、ってことだよな。

ものは投げないでください。


「この村に何かあるのでしょうか、ご主人様」


 ミリアがそのネコミミを立てて訊いてきた。


「いや。まあ何かあるわけではないが」

「そうですよね、保養地でもないようですし」


 セリーもキョロキョロと左右を見回している。

 警戒、というよりは好奇心か。


「昔来たことがあるというだけでな」


 その頭に手を乗せた。


 彼女たちを連れ、村に入る。

 どことなく昔と変わったような気もするが、ほとんど変わっていないような気もする懐かしい村。

 村に入ってすぐ右に、馬小屋があったはずだ。



ビッカー 男 41歳

商人Lv14



 馬小屋の前に、男がいた。

 顔を見ても、こんな顔だったか、というほどの記憶しかない。

 十年経ってもレベルはあまり上がっていないようだ。


「××××××××××」


 話しかけてくるが、相変わらず何を言っているのか分からない。


「××××××××××」

「××××××××××」


 ロクサーヌが何か答えると、商人は小さく頭を下げ、村の方に戻っていった。

 あの商人は、ブラヒム語でも通じたはずだがな。


「ご主人様、この村に何かご用なのでしょうか」

「ああ。さっきの男に聞いてな、キュピコがあったら、いくつか買ってきてくれ」


 ロクサーヌに頼む。


 ロクサーヌがミリアを連れて去ると、俺は馬小屋に近づいた。

 馬小屋の中には馬が一頭いる。


「馬小屋ですね」


 セリーが右隣にやってきてつぶやく。


「ご主人様、その馬小屋が何か?」

「いや、こんなんだったかなあ、と思って」


 左に立ったベスタを見上げ、ついでに馬小屋の屋根も見ながら答えた。

 懐かしいといえば懐かしいが、覚えていないといえば覚えていない。


「はあ」


 いぶかしげに返事をするベスタの背中を軽くなで、窓から馬小屋の中を覗き込む。


 十年前、この世界に最初に来たときにいた馬小屋。

 俺の旅はここから始まった。

 とはいえ、十年も経っていると本当に同じかどうかは分からないが。


 あの商人がここにいたということは、この馬小屋は商人のものなのだろう。


 考えてみれば、気づいてもよさそうだった。

 この村に何頭もの馬はいない。荷馬車を曳く馬が一頭いるくらいだろう。

 その荷馬車は商人が持っている。荷馬車を曳く馬も多分商人のものだ。その馬を飼っている馬小屋も商人のものだろう。

 つまり、あのサンダルブーツは商人のものだったのだ。


「俺のこと、覚えてるか」


 声をかけながら、馬の肩をなでた。

 もっとも、十年も経っていれば別の馬かもしれない。


 あのときと同じ馬だとすれば、この世界で俺を見た最初の生き物ということになる。



「ご主人様、もらってきましたあ」


 道の向こうから、ミリアが走ってきた。

 両手に赤い果物を持っている。


「あったか」

「はい、ご主人様」


 ミリアは俺に二つキュピコを渡すと、すぐに駆け戻った。

 向こうからはロクサーヌが歩いてきている。


「お姉ちゃん、早く」

「はい」


 ミリアはロクサーヌの元に駆けつけると、手を引っ張った。

 ロクサーヌも引っ張られて走り出す。


 俺は、見た目ニンジンのそれを、セリーとベスタに渡した。

 そしてロクサーヌを待つ。


「あったようだな」

「はい、ご主人様。この村の特産品だそうです」

「そうか」


 商人は栽培に成功したようだ。


「ご主人様、どうぞ」


 ロクサーヌは、袋からキュピコを取り出し、麗しい笑顔で渡してきた。

 この笑顔は十年前と変わらない。

 俺はロクサーヌからキュピコを受け取る。

 二つ受け取って一つはルティナに渡した。


「ご主人様、ありがとうございます」


 ルティナが頭を下げる。綺麗な金髪の間からのぞく、エルフ特有の長い耳が可愛らしい。

 ルティナに見とれていると、ミリアが期待のこもった目で俺を見ているのに気づいた。

 別に先に食べてくれてもかまわないのだが。


 俺はキュピコにかじりつく。


 うん。キュピコ。

 なんだっけ。サクランボに味が似てるのだったか。

 サクランボの味なんてあんまり覚えてないなあ。


「甘酸っぱくておいしいです」

「ああ。うまいな」


 ミリアの頭に手をやり、ネコミミをなでさせてもらう。

 なんか触り心地がいいんだよね。



 村はずれの菜園に目をやった。

 キュピコとはどんな植物だったか。


 菜園では小さな男の子が働いている。

 感心なことだな、黒髪の男の子。


 ……黒髪の男の子?


 胸の辺りまでの高さがある作物の陰に見え隠れしながら、黒髪の男の子は何か作業をしていた。


 この辺りは金髪や茶毛の人が多い。

 黒髪は少数派だ。

 この村に黒髪の男性がいただろうか。


 胸の高まりを感じながら、鑑定と念じる。



ミオ 男 9歳

村人Lv1



 ……。


 ミオとミチオ。


 うん。

 まあそうだよな。


 そうなんだろう。

 多分、きっと。

 苗字は受け継いでいないとはいえ。


 俺はこの子に何かできるだろうか。


「はにゃあ……」


 耳をなで続けていると、ミリアが小さく声を漏らした。

 耳をなでられてほうけたのか、果物の甘さに満足しているのか。


「ロクサーヌ、通訳を頼む」

「はい、ご主人様」


 菜園に足を運んだ。


「ちょっといいか」

「××××××××××」


 ロクサーヌの言葉で、男の子が菜園から出てきた。

 顔は、……似ているのか?


「何を作ってるんだ」

「××××××××××」

「××××××××××」

「キュピコだそうです」


 まあ見れば分かる。

 赤い実がなっていた。


「親は元気か」

「××××××××××」

「××××××××××」

「母親は元気だそうです。父親は生まれる前に亡くなったと」


 そうか。

 そうだよな。


 俺はアイテムボックスから一本の剣を取り出す。



いかりのシミター

スキル 攻撃力五倍 HP吸収



 もう使わなくなってしまった古い剣。

 パッシブスキルだからちょうどよい。


「母親のいうことはちゃんと聞いているか?」

「××××××××××」


 ロクサーヌが通訳すると、男の子はうなずいた。


「おまえの父親を、俺は知っているような気がする」

「××××××××××」

「この剣を母親に渡し、母親がいいといったら、使うんだ。母親を守ってやれ」

「××××××××××」


 男の子が剣を見つめる。

 かなり興味がありそうだ。


「遠慮するな」

「××××××××××」


 うながされて受け取った。


「この剣を使って強くなったと思っても、それはおまえが強いんじゃない。この剣が強いんだ。それを忘れるな」

「××××××××××」


 つかを放す前に、警告を与える。

 どこまで耳に届いただろうか。

 母を捨てて冒険者になるなどと言い出されても困るが、まあ後はこの子の人生だ。


 ロクサーヌが通訳し終わるのを待って、俺は手を放した。


「××××××××××」

「ありがとうって」


 男の子は大きく頭を下げる。剣を大事そうに抱え、走り去った。


 おそらく、家には母親ティリヒさんがいるのだろう。

 来る前に去るか。


「ご主人様、あれは大切にしていた古い剣では」

「悪いな、ロクサーヌ。おまえに最初に渡した剣でもある」

「いえ。私は気にしません。そういえば、ご主人様から最初にいただいたのはシミターでしたね」


 昔のことを思い出したのか、ロクサーヌが笑顔を見せる。

 うん。いつ見ても可愛い。

 十年間、見飽きなかった笑顔だ。


「じゃあ帰るぞ」


 この村にはまた来ることがあるかもしれない。

 あるいはないかもしれない。


 俺は村を背にして、空間移動魔法を念じた。


俺たちの戦いはまだまだこれからだ。

蘇我捨恥の次回作にご期待ください。

(本編はまだまだ続きます)

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― 新着の感想 ―
これが正史でも良い気がしてきた。奴隷は異種族だから子供できないしな。ロクサーヌが初めてではなくなるが。
[一言] web版の完結にこだわる方々は、この話を最終話と見立てたらよろしいかと。 なんだかんだでこのお話好きです。 パーティーの雰囲気が変わっていない中にも、ミリアのブラヒム語が流暢になったり、と…
[一言] これがアニメ二話の冒頭に入るとは・・・
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