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グミスライム

 

「クーラタル二十三階層の魔物は、グミスライムです。火魔法と風魔法と水魔法が弱点で、耐性のある属性はありません。土属性の全体攻撃魔法を使ってきますが、土属性に耐性があるわけでもないようです」


 二十三階層に移動した。

 セリーからブリーフィングを受ける。


「グミスライムか。懐かしいな」

「戦ったことがおありならご存知だと思いますが、剣や槍で攻撃してもなかなかダメージは通りません。人に取りついた場合、魔法以外で下手に攻撃すると取りつかれた人がダメージを受けてしまいます」

「溶かしてしまうのだったか」

「完全に取りつくとそうなります。消化される前に倒さなければいけません」


 改めて聞くと厄介そうな魔物だ。

 二十三階層に出てくるならLv23だから、強くなっているだろうし。


「一階層の魔物じゃなくても地上に出ることがあるんだな」

「一階層の魔物が地上に現れるのは人里近くの迷宮ですね。周りに人も多くいますから、出現位置からさほど動かず、積極的に人を襲ってくることもあまりありません。人が少ないところの迷宮では十二階層の魔物が外に出てきます。さらに奥地にある迷宮では、二十三階層の魔物が地上に現れます。餌を求めて長い距離を移動し、積極的に人を襲います」


 そんなことになっているのか。

 迷宮ができて人が住めなくなるのは分かるが、じゃあ人が住めなくなったところに残った迷宮は何を餌にするのか、ということだよな。

 残った迷宮はより強い魔物を地上に送り出し、移動して人を襲わせると。


 ベイルの近くにいたグミスライムも、どこか遠くから来たのだろう。

 珍しくはない感じだったから、ルートでも決まっているのだろうか。

 迷惑な話だ。


「様子を見るために一回か二回、戦ってみよう。ロクサーヌ、分かるか?」

「多分こっちです」


 グミスライムの弱点に合わせて遊び人のスキルを変えたいが、設定後はしばらく変更できなくなる。

 遊び人のスキルは初級土魔法のままでいいだろう。

 クーラタル二十二階層の魔物であるクラムシェルもクーラタル二十一階層の魔物であるケトルマーメイドも弱点は土魔法だ。

 朝食までここで狩を続ける手もあるが、クーラタルの二十三階層はあまりいい狩場ではない。


 グミスライムは、弱点属性が多いのに、土魔法だけが弱点ではない。

 一回か二回試しに戦って、さっさとハルバーの迷宮に移動するのがいいだろう。

 初めての魔物には全力で当たるべきかもしれないが、グミスライム自体とは戦ったことがあるし、Lv23の魔物はシザーリザードで経験している。

 問題ないはずだ。


 ロクサーヌが案内したところに、グミスライムLv23が三匹いた。

 懐かしいゲル状の魔物だ。

 他の魔物もいないし、三匹なら前衛陣全員が対戦できる。

 さすがロクサーヌだ。


 四人がすぐに走り出した。

 俺は土魔法と火魔法の溶岩地獄を念じてから、追いかける。

 前衛がぶつかるまで、グミスライムは全体攻撃魔法を使ってこなかった。


 グミスライム三匹と前衛陣の三人が対峙する。

 魔物の体当たりをロクサーヌが軽く避けた。

 ベスタが二本の剣をグミスライムに叩き込む。


「確かにあまり効いてない感じです」

「私とベスタはあまり攻撃せず、防御と回避に専念した方がいいでしょう」

「そうですね。そう思います」


 ロクサーヌの意見にベスタがうなずいた。

 ロクサーヌなら回避に専念しなくても回避できそうだが。

 ミリアは硬直のエストックがあるので攻撃してもらった方がいい。

 ダメージがそれほど通らなくてもスキルは通るだろう。


 途中、左側のグミスライムの下に魔法陣が浮かぶ。

 全体攻撃魔法を使おうとしたのかどうかは、セリーがキャンセルしたので分からない。

 真ん中のグミスライムがぶるぶると大きく揺れ、ロクサーヌに襲いかかった。

 ロクサーヌがスウェーしてかわす。


「やった、です」


 右側のグミスライムには石化が発動した。

 スライムが固まっている。

 攻撃の途中で固まったためか、重力に逆らった変な形だ。


 やはり石化添加のスキルはきっちり通るらしい。

 ミリアは石化した魔物の後ろを回り、真ん中のグミスライムを攻撃した。

 俺は魔法でグミスライムを破壊する。

 石化したグミスライムに続き、他の二匹も倒した。


 戦闘時間はシザーリザードより長くかかったが、遊び人のスキルが土魔法なのでしょうがない。

 上の階層へ進めばこれくらいが標準になるということでもある。

 シザーリザードとグミスライムが両方出てきたら、どっちかはこれくらいの時間でしか倒せない。


「ロクサーヌさん、グミスライムが取りつこうとしていませんでしたか?」

「そのようです。取りつかれないように気をつけなければいけません」


 戦闘終了後にセリーがロクサーヌに問いかけている。

 さっき、大きく揺れていたのがそれなんだろう。

 ああやって取りつくのか。


「まあでも最初に経験できてよかった。クーラタルの二十三階層はこれくらいでいいか」

「そうですね。大丈夫だと思います」


 ロクサーヌが周囲のにおいを確認してから言った。

 近くに戦いやすい魔物がいたら寄っていこうということか。

 抜け目がない。

 ロクサーヌはスライムスターチを拾い上げて、俺に渡す。


「グミスライムとも戦えるようです」


 セリーが太鼓判をおすなら安心だ。


「スターチ、です」


 ミリアとベスタもスライムスターチを持ってきた。

 てんぷらやから揚げにするとき使ったから、名前を覚えているのだろう。

 魚が絡むと強い。


 三個残ったところを見ると、スライムスターチはレアドロップではないようだ。

 アイテムボックスに入れ、ハルバーの二十三階層に移動する。

 朝食まで探索を行い、その後も迷宮に入った。

 シザーリザードを相手に戦っていく。


 シザーリザードは土属性が弱点だ。

 二十二階層の魔物であるマーブリームも弱点は土属性だから、ハルバーの二十三階層は割と戦いやすい階層といえる。

 二十三階層からは魔物が強くなっているから、これはありがたい。

 比較的スムーズに上の階層に適応していけるだろう。


 シザーリザードは強くなったが、俺の方も聖槍とひもろぎのイアリングで強化した。

 問題なく戦えている。

 二十三階層では申し分ない。

 もう少し上の階層へ行っても俺たちのパーティーは通用するだろう。


 レベルも再び上がり始めた。

 夕方近く、俺は探索者Lv46になった。

 探索者の場合、アイテムボックスを使っていればレベルが上がったことは分かりやすい。


 探索者Lv45に上がったのは数日前で、その前は長いこと探索者Lv44だった。

 探索者Lv45だった期間は短い。

 シザーリザードは強くなっている分、経験値も多いのだろう。

 そうでなければ、探索者Lv46になるには探索者Lv45になる以上の時間がかかるはずだ。


 毎日レベルが上がるというようなことはもう期待できないが、しばらくはレベルが上がりやすいだろう。

 Lv40になってからは俺のレベルが上がりにくくなり、ロクサーヌたちはLv30から上がりにくくなったから、次の壁はLv50にくるのではないかと思う。

 それならそれでいい。

 冒険者は探索者Lv50が条件のはずだから、探索者Lv50でストップしても冒険者にはなれる。


 ロクサーヌたちも昨日と今日でレベルが上がっている。

 ロクサーヌは獣戦士Lv32、セリーは鍛冶師Lv35、ミリアは暗殺者Lv21、ベスタは竜騎士Lv30だ。

 ロクサーヌは騎士Lv33になったので、こっそり獣戦士Lv32につけ替えた。

 替えてからはまだ上がっていない。


 セリーも鍛冶師Lv35になったので、鍛冶の心配はますますなくなっただろう。

 もし新しい革の装備品の製作に失敗していたら、すぐに再チャレンジとなるところだった。

 成功してよかった。


 ミリアの暗殺者は、まだまだレベルが低いので上がって当然。

 夕方くらいには、心なしか石化の発生が多くなったような気がする。

 気のせいかどうか。


 ベスタは、Lv30まで上がったから完全に一人前と見ていいだろう。

 そうでなくても頼もしく前衛をこなしているし。

 大柄なベスタが前衛で二刀を振り回す姿は後ろから見ていると安心感がある。


 魔物が現れ、四人が駆け出した。

 シザーリザードとマーブリームが一匹ずつだ。

 土魔法を二回念じて、追いかける。


 ロクサーヌとベスタが魔物と対峙した。

 ミリアは横に回ってシザーリザードを攻撃する。

 同時にセリーもたどり着いたので、全体攻撃魔法を受けることはない。


 俺も魔法を放ちながら追いついた。

 聖槍をマーブリームに突き立てる。

 セリーの邪魔にならないようにベスタの斜め後ろから突いた。


 聖槍の攻撃で魔法の回数を減らすほどのダメージを与えられるかどうかは疑問だ。

 魔法の合間にときおり攻撃するだけだし。

 しかしやらないよりはやった方がいい。

 訓練としても必要だろう。


「やった、です」


 途中にはシザーリザードも石化した。

 はさみを振り上げたまま固まっている。

 やはりミリアの石化は発動しやすくなっているか。


 全員の攻撃がマーブリームに集中する。

 サンドボールでマーブリームを倒した。

 聖槍をアイテムボックスにしまい、キャラクター再設定でデュランダルを出す。

 ちょうどMPが減っていたところだ。


 俺一人でシザーリザードを攻撃した。

 デュランダルの連続攻撃でトカゲを屠る。

 動かないので問題なく倒した。


「ロクサーヌ、次は剣で戦うので魔物の少ないところへ」


 ひもろぎのイアリングをはずし、身代わりのミサンガを取り出す。

 面倒だが安全第一だ。

 何かあったときに後悔はしたくない。

 シックススジョブにして、戦士もつけた。


「えっと。私が巻きます」

「そうか。じゃあ手首につけてくれ」


 ミサンガを足首に巻こうとするとロクサーヌがやると言ってきたので頼む。

 身代わりのミサンガを持った右手を出し、渡してそのまま巻いてもらった。


「ご主人様のお役に立ててうれしいです」

「ロクサーヌにはいつも役立ってもらっている。ありがとう」

「いえ。こちらこそありがとうございます」


 ロクサーヌは、周囲のにおいを確認しながら巻きつける。

 巻き終わるとすぐに先導した。

 ついていくと、前と同じくシザーリザードとマーブリーム一匹ずつの団体だ。

 全員が走り出す。


 ベスタがマーブリームの正面に立った。

 俺はマーブリームにラッシュを一発叩き込んで、そのまま横を抜ける。

 迷宮の洞窟で前衛四人だと狭い。

 前衛三人に加えて俺がデュランダルを持って参加すれば、ベスタが二刀を振り回すことは無理だろう。


 だから魔物の少ないところに案内してもらっている。

 誰かに聖槍を持たせて下がらせてもいいが、ロクサーヌを前列からはずすのはもったいない。

 ミリアには硬直のエストックがある。

 ベスタも、竜騎士Lv30までなれば前衛がいいだろう。


 ロクサーヌがいるのだから魔物の少ないところに案内してもらえばそれですむ話だ。

 魔物が少なければ俺が攻撃を浴びることも少ないしな。

 相手が二匹なら、ボス戦と同様、後ろから安全に戦える。

 最初にマーブリームを、続いてシザーリザードを仕留めた。


 もう一つ魔物の団体をいただいてから、デュランダルをはずす。

 シザーリザードともなれば一匹からかなりのMPを吸収できる。

 数は少なくてもそう何度も戦う必要はない。


「じゃあはずしてもらえるか」

「えっと。はずすのはセリーが」

「じゃあセリー、頼めるか」

「はい」


 これも順番なのか。

 右手を出し、セリーに身代わりのミサンガをはずしてもらった。

 それからひもろぎのイアリングを装備する。

 やはり面倒だ。


 MPを回復したので、本日最後の探索を行った。

 全体攻撃魔法も受けてしまう。

 後列に回ったシザーリザードが放ったので、セリーの槍は届かなかった。


 全体攻撃魔法はこちらが危うくなるほどではないが、地味に痛いな。

 もっと頻繁に使ってくるかダメージが大きければ対策が必要になるし、もっとダメージがなければ無視できるのに。

 ピンチになるほどではないが、無視できるほど軽いわけでもなく。

 嫌がらせに近い。


 連発されなければ問題はないので、先に魔物を倒す。

 マーブリームが消えると後ろにいたシザーリザードも前に出てきた。

 これで連発されることはない。

 マーブリーム、石化したシザーリザードと倒し、ロートルトロールと魔法を放ったシザーリザードが最後に煙になる。


 アイテムを集めながら、全員に手当てをした。

 ベスタはやはり手当てを受ける回数が少ない。

 ダメージに対する感度が鈍いのだろうか。


 いちいち全員の手当てをするのは面倒だが、これはしょうがない。

 大変なので、自分に念のためもう一回手当てするのはやめた。

 いい傾向だろう。


 それに、手当てについては多少の目算もある。

 明日は頼んでいた服ができる日だ。

 すぐに修行をすればいいだろう。

 滝が俺を待っている。

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