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私はお前らが大嫌い   作者: ヒスイ
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18話


「勿論勇者達も…紫穂、お前も元の世界に帰れる。」

「どうやって?私はこの世界に魔族として生まれ変わったんだ。彼方には帰れないんじゃ…。」


私は一度死んだ。

もう元の世界には帰れない筈だ。


一体どうやって…。



「今のお前は彼方には存在しない魔族に生まれ変わった。だがもう一度お前を人間として生まれ変わらせる事が可能になった。」

「闇の神、それってどんな方法ですか?俺にも協力出来ますか?」



しゃしゃり出てくるな勇者!

何で嬉しそう何だ!?



「手伝いは要らないよー!何せコレがあるからね!」


光の神が懐から取り出したのは白く輝く玉。


「もしかして…それが光の玉?」


雅人と香奈を蘇らせた玉、もう無くなったんじゃ。



「頑張ってもう一個作ったんだ!急いで作ったからちょっと小さいけど、

今までのと性能は一緒だから!」

「3年で作ったにしては中々の出来だ。紫穂を人間として生まれ変わらせるのにも造作ない。」

「よかったな紫穂!これで一緒に向こうに帰れるな。」



自慢の光りの玉を見せてくる光の神と

光の神が玉を落とさない様見張る闇の神、

光りの玉を見てニコニコ笑う勇者。



光りの玉を使えば向こうに帰れる…。

向こうに…。



「皆で帰ろう紫穂!」

「勝手に決めるな勇者!私は帰らない。此方でこれからも魔族として生きる。」

「「「!!?」」」

「なっ!何でだよ紫穂!戦争はもう終わるし、人間に戻れるんだぞ?こっちにいる理由が…。」

「理由ならある。…私が此方の世界が…魔族の皆が好きだからだ。」



此方の世界の人間には恨みしかない。…彼方も似たようなモノだが。

けれど、魔族の皆は、いつも暖かかった。



皆を守りたい。


例えどんな厄介事に巻き込まれたって。



ーーーーー


魔王視点



「勿論勇者達も…紫穂、お前も元の世界に帰れる。」


シホに向かって闇の神がそう言う。



そうだった…シホは元は向こうの住人。

此方の住人ではない。

それなのにコレからもずっと一緒に居られると思ってしまった。



シホが居なくなる…。

それだけでもこんなに胸が痛くなるのは何故だ?


別れなど生まれた頃から今日までに何度も味わったのに。


どうして他の者に比べシホにだけこんなに悲しくなる?

どうして帰るなと言いたくなる?



「勝手に決めるな勇者!私は帰らない。此方でこれからも魔族として生きる。」

「!!?」



帰らない?

向こうは確かにお前を苦しめる者が多いだろうが、お前の故郷じゃないか。



「理由ならある。…私が此方の世界が…魔族の皆が好きだからだ。」

「っ!!だが、いいのかシホ!彼方にはお前の家族が居るのだろう?」

「魔王、お前にとって魔族の皆は仲間であり家族の様な存在何だろう?私も同じでな、

皆から離れたくないんだ。」

「…。」



確かにそうだ。俺は魔族(みんな)を大事に思って居る。


皆と離れるのも辛い…。



「めだ…。ダメだダメだダメだダメだダメだ!!?」

「優也…っ!?」




突然に狂った様に話しだす勇者。

その眼はシホしか写してない。



ゆっくりシホに近づいた勇者はシホの肩を強く握った様でシホの表情は苦痛を浮かべる。




「帰らない何てダメだよ紫穂!!頼むからもう俺から離れないでくれ!俺の傍に居てくれよ!

紫穂が好きだから一緒に居たいんだ!なぁ紫穂紫穂紫穂紫穂紫穂紫穂紫穂紫穂紫穂!!」

「いっつ…離せ優也!?」

「紫穂が一緒に帰るって言ったら離すよ。だから言って一緒に帰るってさ。

向こうに帰っても今度こそ俺が守るから、ね?」

「貴様ぁ…シホを離せ!」

「ぐあっっ!」



シホを離そうとしない勇者の後ろに回り込み、その無防備な首に手刀を落とせば

勇者はあっさり気絶した。



「無事かシホ?」

「あっああ…。」

「?どうかしたか?」



呆然とした顔をするシホ、肩でも怪我したのだろうか?



「いや…、あんなにキレた表情の魔王は見た事ないなと思って…。」

「?、そうか?」



確かに腸が煮えくり返る位に苛立ち、勇者に手刀を落としたが…。

恐い顔だったのだろうか?



そう考えていると咳払いをする闇の神。



「よい雰囲気をぶち壊す事になるがすまんな。そろそろ世界の分断を始めてよいか?あと…、

勇者達はこのまま気絶させておくべきか?」

「よい雰囲気かは判りませんが始めてくださって大丈夫です。」

「勇者はうるさいから気絶させても構わないけど、賢者には話しをしても?

幼馴染達(コイツラ)の中で一番ましだからな。」

「なら紫穂は離れた場所で話をするといい。俺達は作業を始める。」

「そうそう、大船に乗ったつもりで待っててよ。」

「シホ…。どちらかと言えば、(おお)(ぶね)(どろ)(ぶね)に乗ったつもりで居るほうがいい。」

「確かに…。」



ーーー


離れた位置にて起こした賢者と話すシホと、同じく離れた位置にて白く輝く光の神と黒く輝く闇の神。



そんな2つの中間で気を失ってる勇者と聖女を俺は見張る。




世界を分断…。

そうなったら魔族の皆はどう思うのだろうか?

荒れたりしなければいいが。








そうして世界は白と黒に呑み込まれた。







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