16話
「しぃぃほぉぉぉ!」
「ゆぅうしゃぁぁ!」
闇魔法を纏わせた剣と
光魔法を纏わせた剣がぶつかり合う。
ガキィィィィン
弾き飛ばされたのは光魔法を纏った剣だった。
「ハァ…ハァ…私の勝ちだ…勇者。」
「っつ…。」
魔力も互いに底をつき、今や丸腰の勇者。
「止めだ…覚悟しろ勇者!!」
そんな勇者に向かって剣を振り下ろそうとした時。
「はい、お終い。」
「「!!?」」
私と勇者の目の前に現れたのは光の神だった。
「だっ誰だお前?!危ないから早く離れ「光の神」…えっ!?」
「僕が君達を召喚した光の神だよ。奥村優也君。」
「おっお前が…。」
割り込んだ乱入者が光の神と知り驚く勇者。
初めてあったのかコイツ等…。
まぁ今はどうでもいい。
「何をしに来た光の神?今私は勇者と戦っているんだ。分かってるなら其処をどけ。」
「だから、言ったじゃないか。お終いって。」
「お終い?勇者を倒す事をか?」
「それもあるけど…この戦争を今日、これを持ってお終いにしようと決めたんだ。」
「「!!?」」
お終い?戦争が?
まだ人間を…勇者を倒してないのに?
「ふざけるのもいい加減にしろ光の神!?元はと言えばお前が戦争をしようって決めたんだろ!」
「っ!コイツが戦争を…。」
「そうだよ?元は僕が戦争を提案した。」
「だったら!」
「でもね。本当は君達、人間と魔族の手で戦争を止めてほしかったんだ。」
「何?」
何言ってんだお前?
暇だから戦争させようって提案した癖に?
どうせ心が読めるなら分かってるだろ?
さっさと答えろ!
そう思い睨み付ければ、顔を青ざめる光の神。
「ヒッ!?あ…いやぁ、その…暇だから戦争させようって決めたけどさ、人間や魔族がこう…
長い月日をかけて争えば。友情とか芽生えないかなぁって思ってさ…。
とっ当時の人間と魔族は互いに近づこうとしないから。
戦争して友好になるドラマとか見れないかなぁって。」
「…は?」
つまりこの光の神は人間と魔族を戦争させ仲良くなるという、
青春くさいドラマを暇潰しに見ようと考えたのか?
そんなくだらない事の為に召喚されたのか?私は…
「だってぇ!異世界の勇者なら別け隔てなく接するかなぁって思って呼んだんだもん!
そこの奥村優也君、異世界じゃ別け隔てなく誰とでも接してたからさぁ。」
只の人選ミスだな馬鹿め。
この勇者は別け隔てなく誰とでも接してるんじゃない。
単にコイツのまわりに別け隔てなく集まって群がっていただけだからな。
嫌いな奴は嫌いとはっきりしてるんだ。
「え!?僕…またミスちゃったの…。」
人選ミス、という言葉に反応し更に青ざめ震える光の神。
そんな光の神に対し私は笑顔を見せる。
そして首元に親指を持っていき左から右にスライドさせる。
「これの意味…わかってるか?アホ神。」
「はい…。」
ブ・チ・コ・ロ・ス
と態度で示せば涙目で返事をする。
「今はその辺で許してやってくれシホ。後で煮るなり焼くなり好きにしても構わないから。」
「あっ!闇の神!」
仲間を売る発言をしながら現れたのは闇の神。
その傍には少しボロボロの魔王と空間魔法に閉じ込められ意識を失っている聖女・賢者。
「雅人!香奈!」
「安心しろ…気を失って居るだけだ。」
そう言って魔王は賢者や聖女を勇者の傍へ運び魔法を解除する。
気を失っているだけの2人はそのままその場へ倒れる。
「魔王、ボロボロだが無事か?怪我は?」
「平気だ。それより、闇の神が我々に世界の事で話があるそうだ。」
「話?」
「そうだ。今この時を持って魔族と人間の戦争を終わりにする。」
そう宣言する闇の神、
先の光の神も同じ様に戦争を終わりにしようと言っていたが、一体どういうつもりだろうか?
「一体どういう事ですか闇の神?…ついでに光の神。」
「僕ついで!?酷いよ魔王!」
「光の神うるさい!」
魔王に抗議しようとする光の神は魔王に黙らされ、落ち込むが放置しよう。
「話を続けるぞ。戦争を始めたきっかけはまぁ周知の通り光の神だ。…終わりのきっかけも光の神だが。
元々この戦争は魔族と人間の友好関係を向上させる為の戦争だったんだが。
そう簡単に2つの種族が相容れる事は無理だった。戦争はもう五百年以上は続いている。」
五百年以上も…、だが仕方ないかも知れないな。
互いに仲間を殺されあっていたのだ、一度始まった負の連鎖は簡単には終わらないのだから…。
「闇の神…我々魔族は人間に多くの同胞を殺されている。俺にとっては大切な家族の様な者達だ。
簡単に人間を許す等できない。」
「アルデニアの皆もだ。魔族に家族や仲間を殺された人は沢山いる。
皆が魔族に復讐しようって言ってる。」
魔王は同胞を、
勇者は人間の皆を、
それぞれが出会い死に別れた者達でも思い出しているのだろうか。
「そうだ…。魔族も人間も互いを許す事が出来ない程に憎しみ合っている。
我々にも止められない程に。」
「だったらどうやって止めるつもりだ?魔族の皆も人間達もこうやって私達が話し合っている間も戦争をしている。」
未だ砂煙や血の臭いが立ち込める辺りを見れば魔族や人間達の怒号が聞こえる。
「それなら…。」
「もう僕がやったよ闇の神!」
「!?」
光の神がそう言った直後、周囲の音が聞こえなくなる。
「時間を止めたのか…。」
「そっ!これ以上、転生作業が増えても面倒だからね。」
((((メンドクサがるな仕事しろ!!!!))))
この場の皆の心が一つになった瞬間だった。




