表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐ってもタイ! 連載版  作者: 中村沙夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/94

大魔術師のセカンドライフ⑦ 大型ゴースト

「おい、領主さん、何かでけえもんが近づいて来てるみたいだぜ!」

 バシリオが水晶盤を見て言う。クレインもそれを覗きこみ、驚きの声を上げた。

「何ですかこれは……! こんなのめったに見ませんよ!」

「真っ直ぐこっちに向かって来てるな。相当スピード速いぜ。あと10分以内には接敵するだろうな」

「くっ、各員戦闘配置につきなさい!」

 クレインが指令を飛ばすと、船内がにわかにバタバタしはじめた。船員は他の船にも連絡を取り、準備を進めているようだ。各小島に散らばっていた船が集まり、隊列を組む。

 クレインは懐から取り出した石――恐らくは何か連絡用の魔術具――に向かって誰かと話している。

「ちょっとランドル君、君の領地の方角からすごく大きなゴーストが来たんだけど……何? しばらく狩ってない!? 何でさぼるんですか! ……人間が? 火の豆を投げた……?? 何を寝ぼけたことを言っているんですか! 寝てる場合じゃないでしょう、今すぐゴースト討伐隊を出しなさい!」

 とても怒っているようだ。

「他所の領主がゴースト狩りをさぼったんだとさ。それででっかく育っちまったのがこっちの領地にまで来るなんて、迷惑な話だよな」

「そうですね……」

 ビリーが説明してくれたのでヤヒコも相槌を打つ。全く迷惑な話だった。一体どこの領主だ。

 しばらくすると、船室の外が急に騒がしくなった。

「来ましたか。僕も出ます」

「俺も出るぜ」

 クレインとバシリオは連れだって船室から出ていく。ヤヒコもそれに続いて、そしてソレを見た。






「な、何だあの大きさ!?」

 ヤヒコは思わず声を上げた。

 20メートル四方はあろうかと言う大きさのぶよぶよとした煙の塊が、海面を這いずるように蠢いていた。塊の表面には沢山の人面のような模様が現れては消えていく。

「ゴーストってのは、成長すると他の個体と合体してどんどん大きくなるんだ。そしてやたらと強くなる。こいつは相当な数のゴーストがくっついちまったみたいだな。面倒なこった」

 バシリオが溜息をつく。

「ヤヒコ君は危ないから下がっていてください。これは僕も手を出さないといけない大きさです」

「は、はい」

 こうなってしまうとレベルの低いヤヒコにできることはない。他の船員の邪魔にならないように大人しく後ろに下がっているしかなかった。

「これがうちの島まで来たらどれだけの損害が出るかわかりません。ここで始末してしまいましょう。バシリオ、僕は詠唱に入りますから、その間お願いしますね」

「んじゃ、派手にやっちまうか。魔導砲、砲撃用意!」

 バシリオの指示と共に、各船が大型ゴーストに側面を向ける。船体の側面にいくつか穴が開き、大砲らしきものが突き出した。

「砲撃開始!」

 掛け声と共に斉射される大砲。どれも大型ゴーストに命中する。痛みに悲鳴を上げているのだろうか、表面の人面の群れが上げる呻き声が不協和音を奏でた。

 反撃のためだろう、大型ゴーストは船に向かって触手のように体の一部を伸ばす。その動きは緩慢だが、接触されては堪らない。各船から砲撃の第二波が放たれ、魔術が使える者達が火魔術の弾幕を張る。ヤヒコも邪魔にならないように弾幕に参加してみる。見ているだけなのも悪い気がしたのだ。

 なんとか触手を全部撃ち落としたようだ。その分大型ゴーストの体積も減っているような気がする。その苦鳴はいよいよ大きくなり、聞く者の耳を苛んだ。

 砲撃の第三波、四波、五波。

 それでもまだ抵抗は止まず、なおも触手を伸ばしてこようとする大型ゴースト。その時、クレインの詠唱が完成した。

「火属性はそこまで得意じゃないし、海上なんで威力は落ちますが……《インフェルノフレア》!」

 大型ゴーストの下に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がり……一気に燃え上がった。とんでもない火勢である。一際大きくなる呻き声。


「すごい……」

 ヤヒコは大型ゴーストが焼ける様に釘付けになっていた。正確にはその魔術だ。どれだけ高位の火属性魔術なのだろう。もしかしたら、噂に聞く人外種族の使用する魔法であるかもしれない。これだけの威力で「得意じゃない」というのなら、得意属性の水属性魔術はどんなことになっているのか。

 敵対してなくて良かった。いくらレベル百を超える攻略組がいようとも、ここまで統制のとれた集団と高性能魔術師に対抗できるかどうかは難しいところではないだろうか。それこそハイエンドなレイドコンテンツ、というやつだろう。


 各船は熱と痛みに暴れる大型ゴーストにぶつかられないように距離を取る。

 大型ゴーストはしばらくもがき暴れ苦しんでいたようだったようだったが、くたりとへたるとボロボロと崩れ去り、そのまま他のゴーストのように霧散してしまった。

 一瞬の沈黙からの歓声。船内の船員がレーダーを確認するが、他にはもうゴーストはいないようだ。

「はあ、何とかなりましたね……」

「まさかあんなデカいのが出てくるとは思ってなかったからなあ……」

 クレインやバシリオだけでなく、全員がくたくただった。ちまちま下級魔術を撃っていただけのヤヒコもへばっていた。MPが底をついてしまっている。

「拙者も攻撃魔術を覚えるべきでござろうか……」

「あれば便利ではあるだろうが、我々リビングアーマーは魔術師には向いていないからな……」

 剣撃による衝撃波が届く距離ではなかったので何もできなかった白銀はとてもしょんぼりしていて、グラウに慰められていた。

「皆さんお疲れ様でした。討伐は終了しましたのでこれで帰りましょう」

 クレインの締めの後、全軍はジェイレット本島に帰投した。


 ちなみに、その日の夜は誰も脅かしに来る者はいなかった。皆疲れていたのだろう。


このゲームではプレイヤーの行動(例:最終兵器炒り豆)がNPCの行動に影響を与える(例:とある一地方の領主が寝込み、統治がおろそかになる)ことが多々あります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ