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腐ってもタイ! 連載版  作者: 中村沙夜


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吸血鬼にご注意② ご近所さんにご注意

 エリンが忙しくなると言っても、ヤヒコ達には手伝えることもないので、彼は近くの洞窟改め地竜鉱山に行くことにした。イリーンベルグに行く前に、鉱石の類は使い切っておいたのである。


 鶴嘴と果物を買い込み、地竜へのイリーンベルグ土産を持って鉱山に行くと、途端にコウモリ達に出迎えられた。完全に果物を期待されている。大勢からの期待に満ちた円らな瞳に勝てるはずもなく、ヤヒコは果物を小さく切っていく。切った先からコウモリ達は果物を取っていくので、多めに買ってきた果物はあっという間に殆どなくなってしまった。

「餌付けしすぎたかな……」

 しかし、それがなければ採掘中に襲撃を受けるのは確実だ。それに、このゲームのコウモリは全体的に結構可愛い顔をしていて、餌を食べているところも可愛いのだ。この洞窟のコウモリ達はヤヒコに慣れてきたのか、その存外もふっとしてさわり心地の良い体に触れても嫌がらない。むしろ果物をおねだりしにほいほい寄ってくる始末である。普段は山に生えている木の実や虫を食べ、警戒心が強いという《鑑定》による解説文に説得力というものが見当たらない。

 それに混ざって果物をねだる福助にも数切れ与える。幸せそうな顔で果物に咬みついているので、無防備なその体を撫でまわしてみる。彼の野生はどこへ行ってしまったのだろう。

「それにしても、吸血鬼か……銀で短剣でも作ってみるかね」

 一応そのくらいのものを作れるだけのスキルは身についている。あとはヤヒコ自身が短剣を扱えるかという問題だが、準備しないよりはマシだろう。鉱石を掘った後は短剣の練習をしてみようか、と考える。

「しかし殿、殿がいつも使っているのは杖でござるし、銀メッキしたメイスでも作った方が使いやすいのではござらんか?」

「それもアリだな。両方用意するか。ここでも銀が掘れるようになったことだしな……」

 コウモリの縄張りを過ぎ、鉄や銀などを掘れる場所まで来ると、鶴嘴を取り出す。しばらく掘っていると、そこそこの量の銀が溜まった。鉄も結構出たので、鉄でメイスや短剣を作り、銀メッキするか、銀合金のみで作るか悩ましいところではあったが、量自体は十分あるので両方作ってしまうことにした。


 あれやこれやと考えながら鶴嘴を振るっていると、いつの間にか背後に地竜が来ていた。採掘を見物していたようだ。

「あ、レィエルディスさん、お久しぶりです」

「しばらく町で見かけなかったが、どこへ行っていたのだ」

「海とかイリーンベルグとかに行ってました」

「吸血鬼から逃げていたのか」

「いや、それは知らなかったんですけど。大体、事件が起きたの俺が出かけた後らしいですし。っていうか、吸血鬼に会ったんですか!?」

「うむ。一度人間と間違えて襲ってこようとしてな。まあ、ひと睨みしたら逃げて行ったが」

「本当にいたんだ……今町にいる吸血鬼の性別とか人数とかわかります?」

「我が知っているのは、男が1人と、女が1人。襲ってきたのは女のほうだな」

 変なところで重要な証言が出てきた。犯人以外にも吸血鬼がいるとなると、そちらの方へも疑惑の目が向いて、今後の生活に支障が出るのではないだろうか。

「犯人じゃないひとは大変だなあ、これからも住んでられるのかな……」

「それは今後どれくらいで事件が解決するかだろう。吸血鬼からの被害が少ないほど、吸血鬼への恨みは少ないのだからな」

「……そうですね。そうだ、その犯人の顔とか髪と目の色、背格好、教えてもらえませんか? あと、吸血鬼全般についても。俺としては平和な方が好きですし、種族間対立とかいうめんどくさいのは御免なのでとっとと解決してしまいたいです」

「構わぬが……」

「ここにリンゴと、イリーンベルグから持ってきたマンゴーがあるんですが」

「!? なんだその黄色いものは! 麓の町では見たことがないぞ!」

「もっともっと南の方の町じゃないと売ってないんですよ。これ、めちゃくちゃやわらかくて甘いんです」

「なんと! 世の中にはそんなものが……早く、早く我に寄越すのだ!」






 十分な数の鉱石を掘り、鍛冶場で親方に、吸血鬼の話題は伏せた上で、銀製武器製作について相談をする。すると、銀合金の作り方を指導され、あれよあれよという間に銀のほとんどがスターリングシルバーのカトラリーになってしまった。

 仕方がないので、スターリングシルバーの残りで数本短剣を作ってみる。ついでにメイスの突起部分を作ったら銀が無くなってしまったので、柄は鉄にした。軽く振ってみたが、結構重い。合金とはいえ銀なので強度が心配だったが、食器になるくらいなので硬い防具に当てない限りは大丈夫だろうと思うことにした。

 へとへとになったヤヒコが白猫料理店へ食事をしに行くと、店が閉まっている。この時間に開いてないのは珍しい。定休日か何かだろうか?

 ヤヒコが帰ろうとしたその時、扉を開けて慌てた様子のサーシャが出てきた。

「あ、サーシャ、今日は休みなのか? 朝の仕入はしてたみたいだけど……」

「ヤヒコ君! うちのギルマス見なかった!? 他のギルマスと会議してくるって言って、まだ戻ってきてないんだよ!」

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