第96話 背徳こそ甘美
その部屋の様子は
小一時間前に見た時と、
まったく変わっていなかった。
ベッドの上には、
胸に包丁が突き刺さった
六条の死体があった。
菅野はベッドの横に立って、
その死体をまじまじと見つめていた。
「・・菅野さん。
1つ聞きたいことがあります。
六条さんを殺したのは・・。
あなたですか?」
そして僕は自分の推理を伝えた。
僕の話を聞き終えた菅野が
「ふゎぁぁ」
と口を大きく開けて欠伸をした。
そして。
「馬鹿ね。
何でアタシが、
このオバサンを
殺さなくちゃいけないのよ?」
と言って、
首を竦めた。
「違うんですね?」
菅野は呆れたように、
深い溜息を吐いた。
つまり。
六条を殺したのは、
千雪の推理通り西岡なのか。
「ま、いいわ。
兎に角。
これで生き残ってるのは、
アタシ達2人だけね」
菅野は
「ふふっ」
と笑った。
「それにしても。
アンタ。
見かけによらず、
ヤる時はヤるのね。
見直したわ。
でも。
ちょっと意外ね。
まさかアンタが
あの子猫ちゃんを
手にかけるとはね」
「・・ガキには。
興味ありませんよ」
そう言って、
僕は菅野に片目をつぶってみせた。
「あははは」
菅野は声を出して笑うと、
徐にワンピースの肩口を開いた。
「か、菅野さん・・?」
「いいじゃない?
ガキは嫌いなんでしょ?
それに。
どういうわけか、
体が火照ってるのよ。
あの狸爺を刺し殺した時の興奮が、
まだ冷めてないのかしら」
赤いワンピースが
するりと床へ落ちた。
「ま、待ってください!
せ、せめて・・。
部屋を変えましょう!」
「あははは。
イイじゃない?
何事も経験よ。
死体の横でヤるなんて、
より一層興奮するわ。
背徳こそ甘美」
黒い下着姿の娼婦が妖しく微笑んだ。




