第92話 鈴木太の推理
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
僕は改めてソファに身を沈めた。
千雪の慰めの言葉に、
すっと肩が軽くなったような
気がした。
自然と笑みがこぼれた。
その時。
僕の頭の中を駆け巡っていた
いくつかの違和感に光が射した。
僕はそれらの違和感を
1つずつ拾い集めた。
「す、鈴木・・さん?」
千雪が僕の方を見て、
僅かに首を傾げた。
「ちょ、ちょっと待って・・」
僕は体を起こして、
少女を手で制した。
集めた違和感を組み合わせていくと、
頭の中に1つの画が浮かび上がった。
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「・・僕の考えを
聞いてくれるかい?」
僕を見つめていた車椅子の少女が、
両手でカップを持ったまま
無言で頷いた。
僕は少女に釣られて、
カップを手に取った。
「・・もしかしたら。
六条さんはもっと前に
殺されていたんじゃないかな?」
「どういうことですか?」
「六条さんを部屋に監禁してから後、
誰も彼女の様子を
確認していない・・」
千雪がハッと息を呑む音が聞こえた。
僕はカップに口をつけて、
一口だけ飲んだ。
「きっと。
六条さんを殺したのは菅野さんだ。
菅野さんは六条さんを
部屋に連れていった時点で、
殺していたんだ」
「ま、まさか・・そんな」
少女の目が大きく見開かれた。
その瞳には恐怖の色が浮かんでいた。
「そう考えると。
六条さんの死を聞かされた時の、
西岡くんの驚いた表情も
理解できる。
彼は六条さんを殺していない」
「でも・・。
なぜ菅野さんが六条さんを・・?」
「彼女はゲームの報酬に
並々ならぬ執着を見せていた。
【探偵】の宮崎さんを
躊躇いもなく殺したことからも、
それは明らかだ。
それに。
『【市民】が【市民】を
殺すことだってある』
西岡くんがそう言った時、
彼女はすでに
その考えに至っていた節がある」
千雪が恐る恐るカップに口をつけた。
そんな千雪を見ながら、
僕は続けた。
「さらに。
菅野さんは
自らの安全を確保するために、
牢屋に入った。
実は・・。
あの時、
彼女が牢屋に入る前。
彼女は僕に無言のメッセージを
送っていたんだよ。
君と西岡くんを殺せという・・」
「ま、まさか・・そんな」
千雪がふたたび同じ言葉を繰り返した。
「君が。
彼女のことを
どう思ってるのかわからないけど、
彼女は君が考えているよりも、
ずっと狡猾で
したたかな女なんだ」
僕はどこかで聞いたことのある
台詞を口にした。




