第90話 子羊達
静まり返った遊戯室に、
柱時計の
コツコツコツと時を刻む音だけが
響いていた。
「・・す、鈴木・・さん?」
その声で、
僕は我に返った。
千雪が青ざめた表情で、
僕の方を見ていた。
「か、彼の・・発言は・・。
で、出鱈目なんだ・・。
ぼ、僕は・・。
ご、郷田さんを殺してない!」
僕は彼女の方に向き直り、
必死に訴えた。
「わ、わかりました。
それよりも。
す、鈴木さん・・。
それを置いて下さい」
その言葉で、
僕は自分がまだ拳銃を
構えていることに気付いた。
僕は慌てて拳銃を投げ捨てた。
「か、彼は・・
あ、あわよくば・・。
ろ、六条さん殺しの罪も・・。
ぼ、僕に・・。
き、着せるつもりだったんだ!」
僕はカウンターに両手をついた。
そして。
肩で大きく息をした。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「・・お話は後でお聞きします。
今は。
とりあえず。
この部屋を出ませんか・・」
僅かに震える声が聞こえた。
僕は顔を上げて、
声のする方へ視線を向けた。
車椅子の少女が、
床に転がった死神の死体を
呆然と見つめていた。
その瞳からは
聡明で勇敢な名探偵としての光が
失われていた。
か弱き少女が精一杯、
平常心を保とうと、
真一文字に唇を結んでいた。
僕達は西岡の死体を残して、
遊戯室を出た。




