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残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
第6楽章 セブン

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64/114

第64話 宮崎の推理

遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「『スペードの2』が

 【犯人】という、

 お嬢ちゃんの推理は正しい」

そう言って、

宮崎はジャケットの内ポケットから

葉巻を取り出した。

「ふんっ、

 馬鹿馬鹿しい。

 それならアタシは

 【犯人】じゃないわね。

 アタシは『クラブの4』だから」

菅野は、

グラスに残った酒を飲み干すと、

「ふぅぅ」

と溜息を吐いた。

宮崎はそんな菅野に

ちらりと視線を投げると、

改めて口を開いた。

「嘘吐きの言葉は信用できんな。

 お前さん、

 本当は何歳だ?」

僅かに菅野の顔色が変わった。

「女狐が随分うまく化けたようだが。

 20代を騙るのは、

 さすがに無理があるぞ。

 わっはっは」

宮崎が口を大きく開けて笑った。

菅野は顔を真っ赤にして、

カウンターに空のグラスを

ドンッと置いた。

宮崎は満足そうに頷くと、

葉巻をくわえて火を点けた。

「最初に六条が

 『クラブの8』を出した時点で、

 儂は【犯人】のカードが、

 『スペードの2』だとわかった。

 これは当然のことだろう。

 ゲームのルールには

 ”すべてのカードの数字は

 連続している。

 同じ役職のカードについても

 同様である”

 と書かれていたからなぁ。

 儂の数字がAである以上、

 最大の数字が8であることは必然。

 とすれば。

 【市民】の数字は3~8の6つ。

 つまり。

 残った数字の2が、

 【犯人】のカードだ。

 一方。

 【犯人】にも、

 儂と同じような推理が可能だが、

 【犯人】には【探偵】のカードが、

 Aなのか、

 それとも3なのか、

 もしくは9なのか、

 わからないということだ」

そこまで話すと、

宮崎はゆっくりと煙を吐き出した。

「続いて。

 平原が『クラブの5』を宣言した。

 そして。

 西岡が『クラブの3』を

 宣言したことで、

 【犯人】には【市民】のカードが、

 3~8であることが判明する。

 同時に。

 この時点で【犯人】は

 【探偵】のカードが

 Aか9のどちらかだとわかる。

 一方。

 【市民】は、

 【犯人】と【探偵】の

 数字に関しては、

 Aと2。2と9。9と10。

 この3つのパターンがあって、

 絞り込めない。

 それを踏まえて。

 『クラブの3』が宣言された時点で、

 まだ数字を公表していなかったのは

 菅野、鈴木、佐藤、死んだ郷田。

 そして儂だ」

宮崎はそこで、

皆の顔をゆっくりと見回した。

そして。

その視線が千雪を捉えると、

にやりと下卑た笑みを浮かべた。

「ここで。

 【犯人】は考えた。

 騙るなら今しかないと。

 初めに六条がカードを見せて以降。

 2人続けて

 カードを破棄していたことも、

 【犯人】が騙るきっかけとなった。

 恐らく他の者も、

 カードは破棄しているはずだと。

 空いている【市民】の数字は、

 4.6.7の3つ。

 あえて平原と西岡の数字に

 被せてもよかったが、

 それをするくらいなら、

 死んだ郷田の数字を

 引き当てる博打をした方が、

 分が良いと判断したんだろう。

 それに。

 この後、

 もし数字が誰かと被った場合でも、

 先に宣言した方が、

 周囲への心証が良いと

 考えたのか?」

宮崎の視線に

耐え切れなくなったのか、

千雪は顔を背けて俯いた。

宮崎はぺろりと唇を舐めてから、

視線を千雪から菅野に移した。

菅野はカウンターにもたれ掛かって、

長い髪の毛先を

くるくると指に巻いていた。

「そして。

 そこの女狐は

 『クラブの4』を騙った。

 結果。

 数字が被っている者は現れず、

 見事博打に勝ったんだ。

 つまり。

 『クラブの4』は

 死んだ郷田の数字だった。

 その女狐のカードこそが

 『スペードの2』だ」

宮崎は勝ち誇ったようにそう言うと、

ビリヤード台の横の

小さなテーブルの上の

ガラスの灰皿で、

葉巻の火を揉み消した。

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