第20話 一突き
「ご、強姦魔・・」
菅野と六条の声が重なった。
宮崎は腕を組んで、
ギュッと唇を結んでいた。
「他人の。
それも死んだ人間の
持ち物を漁るとは、
近頃の餓鬼は随分と非常識だねぇ」
平原はまだ怒りが収まっていないのか、
チクリと嫌味を口にした。
しかし。
当の西岡は平原のそんな発言にも
特に反応することなく、
「くっくっく」
と小さく笑っていた。
「それともう1つ。
郷田を殺した奴は、
プロか、
もしくは相当人体に詳しい奴だ」
「どうして
そんなことがわかるのさ?」
菅野が大きく目を開いた。
「郷田は。
心臓を包丁で刺されていたが、
これは案外素人には難しい。
包丁を握ると、
刃は自然と垂直方向に向く。
この場合。
肋骨が邪魔になって、
心臓を突くことは困難だ。
だが。
あの死体の包丁は真横に向いて、
肋骨を避けて心臓に達していた。
それも一突きでな」
西岡の言葉に
六条がハッと息を呑んだのがわかった。
冷たい汗が背中を流れるのを感じた。
同時に。
死体を前に怯むことなく、
誰よりも冷静に立ち回っている
西岡というこの年下の男に、
僕は驚きを禁じ得なかった。
人は見かけや年齢で
判断できないというが、
強ちそれも間違いではないと思った。
しかし。
僕の西岡に対する警戒心も強くなった。
油断のできない男。
死神は常に背後からそっと忍び寄る。
「兎に角。
あの男は
殺されて当然のことをしていた。
そして。
その報いを受けたというわけね」
菅野が冷たく言い放った。
「こ、殺されて、
し、然るべき人間なんて・・。
い、いません・・」
六条が小さな声で呟いた。
「その通りだな。
どんな罪人だろうと、
その命を奪う権利は誰にもない」
宮崎が六条に同意した。
「くっくっく。
綺麗事を並べるのはいいが、
忘れてないか?
今、
俺達がやってるのは。
命をかけたゲームなんだぜ、
お二人さん?」
西岡の言葉に、
ふたたび部屋が沈黙に包まれた。
ふと見ると。
佐藤が車椅子の上で
体を竦めて小さく震えていた。




