第113話 見慣れた天井
「リーリー。リーンリーン」
遠くからどこか懐かしい鈴の音が
聞こえてきた。
その音色は、
幼い頃にテレビで見た
田舎の光景を思い出させた。
縁側に吊るされた風鈴の情景が
頭に浮かんだ。
大海原にふわりふわりと漂いながら、
私は目を閉じたまま
そんなことを考えていた。
「リーリー。リーンリーン」
ふたたび鈴の音が鳴った。
私にはその鈴が
どこで鳴っているのか、
判断できなかった。
「リーリー。リーンリーン」
そして。
私はその音色に
導かれるように目を開いた。
見慣れた天井が見えた。
私は慌てて上体を起こした。
ここは・・。
稲置市住吉町にある実家の、
私の部屋。
先ほどまでの鈴の音が止んでいた。
夢・・だったのだろうか?
微かな疑問が頭をよぎった。
立ち上がると体がふらふらとした。
若干頭が重かった。
私は窓の前に立って、
カーテンを開いた。
黄昏色に染まった空が見えた。
なぜ・・。
私は改めて記憶を手繰った。
あのペンションで、
1人生き残った私は、
応接室を出て部屋に戻った。
ユニットバスに入って、
洗面台の鏡の前に立つと、
やや疲れた顔が映っていた。
私は熱いシャワーを浴びてから、
ベッドに横になった。
体が休息を求めていた。
私はあっという間に眠りに落ちた。
眠りにつく直前、
どこからか甘い香りがした・・。
ような気がした。
・・そして。
目が覚めた今、
私は自分の部屋にいる。
その時。
私は机の上に置かれている便箋に
気付いた。
「はぁ・・」
自然と溜息が漏れた。
私はソレを手に取った。




