↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
楽章間 ヒドゥン・フェイス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/114

第101話 羊の皮を被った狼

廊下を歩きながら、

僕は左手に持った

小さなトートバッグから

はみ出している包丁の柄に

目を落とした。

それは。

カードを引いた後、

男装の麗人から

手渡された物だった。

「ゲームで使うことが

 あるかもしれません」

彼女は無表情でそう言った。

僕は訳がわからないまま、

その物騒な支給品を

バッグに突っ込んだのだ。


廊下の突き当りに階段があった。

僕はその階段を上った。


2階の廊下は

建物の奥から正面に向かって、

真っ直ぐに伸びていた。

そして。

廊下の右側に部屋が並んでいた。

その数は5つ。

2階の廊下には1階と比べて、

明らかに違う点があった。

各部屋のドアの対面に窓があり、

外の光が廊下に射し込んでいた。


僕は廊下を奥へと進んだ。

静かだった。

物音1つ聞こえなかった。


男装の麗人は

招待客が何人なのか言わなかったが、

僕もあえて聞かなかった。

変に勘繰られて、

僕が

『鈴木太』ではないことがバレると、

面倒なことになると考えたからだ。

兎に角。

しばらくの間。

ここに身を隠しておくことに決めた。

朝臣市の山奥。

周囲には人家もない。

これほど。

身を隠すのに適した場所は無い。


僕は何気なく、

一番奥の部屋のドアを開けた。

男が背を向けて立っていた。

ふいに。

男が振り向いた。

「な、何だよ。

 ノックくらいしろよ」

男は少し面食らった様子だったが、

それは僕も同じだった。

てっきり招待客は全員、

応接室に集まっていると

思っていたのだが。

男は値踏みするような目で

僕を見ていた。

「・・お前も参加者か?

 ・・にしては。

 随分と大人しそうな顔をしてるな。

 ま、

 どうでもいいけどよ。

 俺はこの部屋を使わせてもらうぞ。

 文句はねえよな?」

僕は小さく頷いてから、

部屋に足を踏み入れた。

「で。

 何人集まってるんだ?」

僕は無言で首を振った。

「何だよ。

 まだ誰も来てねえのか?

 俺としちゃあ、

 門の所にいた女でいいんだがな。

 で。

 お前はどんな女が好みなんだ?」

男は口元に薄笑いを浮かべると、

「ひっひっひ」

と下卑た笑い声を上げた。

男との距離が

2メートルほどになったところで、

僕は足を止めた。


「何だ?

 ノリの悪ぃ奴だな」

男が煙草をくわえた。

そして。

火を点けようと、

視線をそらしたその瞬間。

僕は男との距離を一気に詰めた。

左手のバッグから取り出した包丁を、

刃を横に倒して

男の心臓目掛けて突き刺した。

「ぐぶぉ、お・・おい・・」

男の目が大きく見開かれて、

その口から呻き声が漏れた。

男の左手が僕の肩を掴んだ。

僕は包丁を男の体の奥へと

さらに押し込んだ。

男は苦悶の表情を浮かべ、

後ずさるようによろめいた。

ベッドに倒れ込んだ男の体に

僕は覆い被さった。

両手で包丁の柄を握り、

体重をかけた。

徐々に男の体から

力が抜けていくのがわかった。

僕は立ち上がって、

男を見下ろした。

男の目は真っ直ぐ天井を見ていたが、

その輝きは失われていた。


男の胸元に突き立っている包丁を

引き抜こうか迷ったが、

僕はそのままにして、

ユニットバスに入った。

右手に付いた僅かな返り血を

綺麗に洗った。

それから。

鏡に映った自分の体を

隅々まで観察して、

服に目立った汚れがないことを

確認した。


いきなり殺したのは拙かったか。

ある程度の情報を聞き出してから、

殺すべきだったか。

せめてこの集まりの目的と

その人数くらいは。

いや。

関係ない。

どうせ皆殺しにするのだ。


僕は乱れた服を整えてから

部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。