第44話 F組勝利パーティ
クラス対抗戦でF組がS組を下した事で、校内の生徒の目が少し柔らかくなった感じがする。
F組の待遇を良くしろと僕がごねたので、生徒のカフェテラスの食堂は上級も下級も廃止されて、中級だけになって、誰でも食べられるようになった。
F組のみんなは喜んでいて、誇らしいけど、ペルさんが美味しい昼食を作ってくれるので、僕にはあまりありがたみは無いね。
でも平等になったのは良いかもしれない。
F組の寮の予算も増えて、ヘレナさんが喜んでいた。
足りない予算でいろいろやりくりして寮母さんも大変だったらしい。
黄ばんだシーツとかが真っ白な新品になったよ。
「ごめんなさい」
スザンヌ先生が土下座をして謝っていた。
「なにい、F組が勝ったら一学期の成績は全部満点は駄目だと」
「さ、さすがに無理なのよ、ジナンくん。まさか勝てるとは思わなかったの、ごめんなさい」
「ごめんですめば衛兵はいらねえんだよっ」
「私も試験しなくてはだめなのかー、試験満点というから試合に出たんだぞ~」
マルーンちゃんもスザンヌ先生に詰めよっていた。
まあ、怒るわな。
「まあ、俺は無理だと思ってたぜ、でも、謝罪と賠償はしろい。近場の高級レストランで先生の金で食べ放題と、先生の金で対抗戦打ち上げパーティとどっちか選べよ?」
「ひい、そんな殺生な、先生のお給料少ないのよ」
「うるせえ、とんまな賭をする先生が悪い、諦めろ」
「ひーんひーん、では対抗戦打ち上げパーティで、そっちの方が被害が少なそうだわ、寮にはまかないさんも居るのでしょう?」
「F組の女子共も手伝えよ、お前ら何もしてねえんだから」
「ジナンだって卑怯な手で負けてんじゃんかよ、偉そうにすんなっ」
「なんだと、ケイト、俺は負けたけどなあ、参加した事がすげえんだよ」
いつも通り、F組らしく、ドタバタとパーティが決まった。
(ペルさん、今度みんなで対抗戦の勝利を祝って、F組寮でパーティするって。ミリンダさんとヘレナさんに伝えておいて)
(おお、それは楽しみですね、腕がなりますよ)
(カンパも何か手伝う手伝う)
(うん、手伝ってね)
楽しそうだなあ。
「わ、私も出ても良いのですか?」
「サテンさんも来てよ、楽しいよ」
「は、はい、ごめんなさいでした、リュートさん」
「え、何が?」
「あ、いえ、あははは」
うん、サテンさんも、僕に自然に話しかけてくれるようになったので嬉しいね。
放課後、寮に帰って、ヘレナさん、ミリンダさん、ペルさんと相談してお料理を決める。
スザンヌ先生がお手柔らかにと言っていたが、三人のまかない担当さんは意地悪そうにニマニマしていた。
「そういえばヘレナさん、F組は二年生、三年生の先輩は居ないんですか、見ませんけど」
「三年生は二人、一人は引きこもりだし、もう一人はB組からF組に落ちてきたから口もきかないで、寮には寝に来てるわね。二年生は五人、一学期は遠征してるのよ」
「そうだったんですか、先輩達も出て欲しいですが」
「一応教えておくけど、どうかしらね。出て来たら親切にしてあげてね」
「はい」
「毎年F組には三十人とか入学してくるのだけれど、夏までに半分辞めてしまって、二年生には更に半分になるわ」
「そ、そんなに」
「やっぱりね、見下されたまま馬鹿にされて頑張れる子は少ないのよ。今年はリュートくんとカービン王子が頑張って空気を変えてくれたから、もう少し残るでしょう。ありがとうね、リュート君」
「いえいえ」
ペルさんが買い物籠を下げて、カンパを連れてやってきた。
「ご主人様、買い物に行きましょう」
「カンパも買い物~~」
「そうだね、行こうか」
三人で水入らずで商店街まで買い物に行こう。
カンパを真ん中にして、手を繋いで勇者学園の敷地を横断して商店街を目指す。
途中、大きなリュックを背負って、マッチョな体育教師に連れられたマイタケを見た。
目の下のくまが凄いな。
何か、声を掛けようか。
でもなんて?
別の場所でも頑張れ?
君もロジンに騙されたんだろう?
なんだか何を言っても煽っているように聞こえそうで、何も言えなかった。
マイタケが僕を睨んだ。
「か、勝ったつもりだろうが、ぼ、僕は僕は僕は、勇者学園以外で、冒険者になって、一人ででも魔王軍を倒しに行く、絶対だ」
「……、そうか、お元気で」
「畜生畜生っ!!」
「早く行くんだ。すまんな、リュートくん」
「いえ、負けていたら学園を追い出されていたのは僕の方なので、気持ちは……」
「お前なんかにっ!! お前なんかに僕の気持ちがわかるかっ!! 勇者の名門に生まれて、順風満帆だったのにっ、お前のせいで、お前のくだらないスキルのせいでっ!!」
「マイタケくん、僕はさ、スキルはそんなに大した事じゃないと思うんだ。君がこんなになったのは、F組だと見くびっていたせいだし、自分の中の勇者に僕が合わないからって攻撃を加える幼児性のせいだと思うんだよ。もう君は正義の為にしか【聖剣】を振るえないなのだから、どうか、どこかで世界の為に、頑張ってね」
マイタケは、何かを怒鳴ろうとして、顔をくしゃくしゃにして、体をまるめて、ふーーーーっと猫の警戒音のような声を出して、泣いた。
体育教師は黙礼をして、マイタケをせかして通用門の方へ向かった。
僕らは正門から商店街に向かう。
マイタケくんと僕の道は一瞬だけ交差して、すれ違い離れていった。
「ご主人様、あんな奴のせいでメロディちゃんと離ればなれになりましたが、ペルが付いておりますから、元気を出して」
「カンパもカンパも一緒だよ、悲しんじゃだめ」
テイム相手にはダイレクトに感情が伝わるからなかなか大変だよね。
そうか、僕は一生【幼女テイム】というスキルと一緒に過ごしていかねばならないんだな。
きっと、ペルさんもカンパも、あと五年もするとテイムから外れて僕の元から去って行くのだろう。
でも、人の関係とはそういう物なのだろう。
しょうがないと諦めて元気に生きていくしか無いだろうね。
うん。
(THE幼女テイマー、了)
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