第33話 マルーンちゃんのスキルは【螺旋回転】
次の日、カービン王子は朝、授業の前に黒板の前に立った。
「というわけで、来月、S組とF組の模擬戦がある、五対五のチーム戦だな。参加したい腕自慢はこの俺に申し出てくれや」
クラス内はざわざわした。
F組だと、あまり戦闘スキルの持ち主はいないのかな。
サテンさんとかジナンさんとかは戦闘用でないスキルだしね。
あんまり立候補は期待できないかもなあ。
結局誰も立ち上がらず、スザンヌ先生が来てホームルームが始まった。
「あー、F組のチームがS組チームに勝てる訳ないんだからさ、諦めなさい。良いじゃ無い、ペットの幼女の一人や二人、またテイムできるんでしょ?」
「いや、その……」
何言ってるんだサブリナ先生は。
「カンパは家族ですから、譲るとかは無いんです」
「はっ、テイムした相手でしょ」
「……」
なんだ、こいつ……。
「おう、先生、リュートが切れるぞ、こういう温厚な奴が切れると影響がでかいうえに、ずっと祟られるぞ」
「……、そ、そうね、先生が言いすぎたわ、ごめんなさい、リュート君」
「いえ……」
サブリナ先生は肩をすくめた。
「スキルの強さは勝敗に対して大きいファクターよ、F組の得体のしれないスキルたちでは、五回戦で三勝を挙げる事はできないでしょう」
「それはなあ、先生、やってみねえと解らねえんだよ」
「無理だわ。もしもF組がS組を下したら、そうね、全員の一学期の成績を満点にしてあげるわ」
「よーし、言いやがったな、おい、お前ら、S組に勝てたら、無条件に満点だ、こいつはスゲえ報酬だぜ」
くるくる巻き毛の女の子が立ち上がった。
「私は馬鹿で、ぜんぜん勉強が出来ない、でも、S組を倒したら、進級できるのか?」
「一学期満点だと、どうなんだ、サブリナ先生」
「そうね、一学期満点なら、二学期三学期が全滅でも、二年生に進級になれるわよ」
「よし!! おいチンピラ王子、私はマルーン、スキルは【螺旋回転】だ、対抗戦に参加する」
「お、おう……」
螺旋回転って、どんな効果があるスキルなんだ?
まあ、とにかく、馬鹿な子だけど、選手に立候補してくれてうれしいな。
「よろしくね、マルーンちゃん」
「ややややや、やめろやめろ、テイムすんなおまえ、殺すぞ」
「い、いやしてないし」
「そうかー、お前怖いから近づくな、いいな」
「わ、わかったよマルーンちゃん」
「やめろっ」
マルーンちゃんは赤くなって座った。
「よし、これで選手は揃ったな」
「い、いや、俺も出るんですか」
「勘弁してくださいよ、カービン王子」
ジナンさんとマノリトさんは泣きを入れたが、王子は聞く耳を持たなかった。
いや、だけど、勝てるのか?
とりあえず、ホームルームは終わり。
午前の授業もつつがなく終わった。
さてと、マルーンちゃんに、スキルの事を聞いてみようかな。
「ねえ、マルーンちゃん、寮で僕の奴隷が昼食を作っているんだけど、一緒に食べない?」
「……、ええ?」
マルーンちゃんは僕の姿を上から下まで眺めた。
「奴隷いるのか、さすがは【幼女テイマー】だ、怖い怖い」
「い、いや誰にでもテイムとかしないからさ」
「奴隷にしたドラゴンの子の事を執着してるし、やばいんだろうお前-」
ブワリと大気が歪んだ。
え、なんかスキルを使おうとしてる?
ジナンさんが、水の入ったガラスのコップに金魚をだした。
スキル【金魚】だ。
「うわあ、なんだこれなんだこれ、お前のスキル?」
綺麗な金魚が、コップの中で優雅に泳ぐ姿を見て、マルーンちゃんは歓声を上げた。
「お前はやめろ、俺は伯爵令息さまだぞっ」
「そうか、令息、私は男爵令嬢だ、馬鹿なので娘扱いされてねえんだけどさあ」
ほうほう、なんかマルーンちゃんも複雑そうだな。
「とりあえず、飯をくおうぜ、リュートもスキルは変だけど、良い奴だからよ」
「そうなのか、【幼女テイマー】なのにか?」
「ああ、そうだ、ねえ、カービンの兄貴」
「ああ、そうだ、一緒に昼飯を食おうぜ、嬢ちゃん」
「お前はチンピラで悪い王子だ、ジナンはいい奴だが、カービンとリュートは悪い奴だ」
「うーん、簡単な世界が見えていて良いなあ」
「うへへ、マルーンを口説いてもいいのかあ?」
「……、あ、やっぱりジナンも嫌らしそうだ、やっぱり駄目だ」
「まあ、飯を食おうぜ、美味いぞ」
「寮の飯よりもか?」
「「もっと美味い」」
「しょうがない行こう」
僕らはマルーンちゃんを入れて、F組寮に向かおうとした。
「マノリトさんも一緒にどうですか」
「そうだな、選手だからな」
「いえ、私は実家で食べますのでご遠慮いたしますよ」
「おい、デブ、実家どこよ」
「失敬だね君は、商業街だよ」
「そうかー、近いなあ-」
マルーンちゃんは足りない子なのかなあ。
くるくる巻き毛でふわふわな感じで可愛いのだけれど、口の利き方がなってないよね。
みんなで校舎を出て、F組の寮に行く。
「そういや、食堂でお前見ないな」
「ああ、ジナン、私は、お金が無いから食べられないんだ、外でパンを買って食べてるよ」
「「「……」」」
「マルーンちゃん、寮の食費は学費として入ってるから別にお金は掛からないんだよ」
「えっ」
「馬鹿だなあ、お前はあ」
「ああっ、只で食事が出来たのかあ、もったい無かったなあ」
「まあ、一学期の早い内に解って良かったじゃねえか」
「そうだな、王子」
マルーンちゃんは、堂々としてるから大物っぽく見えてくるね。
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