第14話 F組というのは掃きだめクラスであった
「はいはーい、みなさん、私語はやめてくださいね~。私はスザンヌ、F組の担任です」
あ、良く見たら、うちの村のスザンヌさんだ!
垢抜けてたからわからなかったよ。
うわあ、教職に就いたのかあ。
スキルは【賢者】だよねえ。
「ええと、皆様は勘違いをなさっているかもしれませんが、F組の生徒のスキルは『鶏肋』な物です」
鶏肋ってなんだ?
「鶏肋というのは、鶏の丸焼きのあばら骨の事で、肉が少量ついているので、捨てるには惜しいけど、しゃぶるとなると大変という物です」
あ、そういう。
「F組というのは、勇者学校の掃きだめで、変なスキルで、もしかしたら使えるようになるかもしれない、というスキルを集めたできんぼクラスですので、ゆめゆめS組やA組の生徒に逆らわないでくださいね」
「俺もか?」
「はい、カービン王子といえど、この学校ではスキルが一番の価値観なのです。【チンピラ】は雑魚スキルなので分際をわきまえてくださいね。王族ですから勇者学園に入れただけの事です」
「わかったぜ、まあ、努力だな」
スザンヌさんはにっこり笑った。
「とりあえず、学業は差別無く行われますし、各種スポーツイベントでも制限はありません。学食が三等食堂でなければならないのと、寮がちょっとボロいぐらいですね」
そうかあ、この学校はスキルによって差別があるのかあ。
Sクラスはさぞや扱いが良いんだろうなあ。
「それから、リュート君の【幼女テイム】ですが、教会関係者からの情報では大天使リカリエルさまが、魔王ピエラ用の決戦スキルとおっしゃった、との事ですが、これまで天界が特殊スキルを人に与えた事例は無く、今は確認中という事でFクラス落ちとなりました。まごうことの無い決戦スキルとの確認が取れればSクラス昇格になりますね」
「おお、Sクラスのスキルなのか」
「性犯罪者っぽいのになあ、人聞きの悪い」
などと級友が噂をしていた。
人聞きがわるいよね、そのうえ決戦スキルというのはリカリエルさまのでっち上げなんだ。
僕の未来はどっちだ。
とはいえ、こんな機会でもなければ、高等教育を受ける事は無かったのでチャンスはチャンスだよね。
なにしろ、何かしらのスキルが貰えたら、そのまま、羊飼い人生を続けようと思っていた訳だしね。
勇者学園での勉強を頑張ろうと思う。
きっと良い成績をおさめたら、貴族の舘での働き口が……。
【幼女テイム】があるから無理かもしれない。
うむむ。
一人一人立ち上がって自己紹介をしている。
僕は廊下側の一番後ろだから最後の方だね。
スキルの事は言ったり言わなかったりするね。
どの人のスキルも聞いた事のない珍しい物がおおいなあ。
なんだろうスキル【螺旋回転】って?
自己紹介はつつがなく終わった。
太っちょさんは、マノリト・スルバランという下級貴族らしい。
スキルは解らない。
綺麗な音の鐘が鳴った。
「この鐘が授業の始まりと終わりを知らせます。今日はこれで終わりで、寮に帰って体を休めてくださいね。明日からさっそく授業です。昇降口で教科書を配ってますので、名前を言って受け取ってください。それでは、起立、礼。また明日ね」
スザンヌ先生はにこやかに笑って教室を出て行った。
「綺麗な先生だな、スキルは何だろう」
「スザンヌ先生のスキルは【賢者】ですよ」
「うへえ、Sクラススキルじゃねえか、なんでお前知ってんの?」
「うちの村の出世頭なんですよ」
「ああ、なるほどなあ」
カービン王子が寄ってきた。
「おう、昇降口で教科書を受け取って、あと、食堂で飯を食おうぜ」
「お、良いですね、カービンの兄貴、平民もいいな」
「え、僕もですか」
サテンさんも、と思って視線をやると、彼女は顔を強ばらせて教室から逃げてしまった。
「まあ、スラム女でも女は女だしな、もう平民は高校3年間男子とだけ喋る生活だ」
「そんな潤いの無い」
「おめえには、ペル君がいるだろう、帰れば潤うじゃねえか」
「幼女をテイムする技能なんで、エロいことが出来ないんですよ」
「「あーあー」」
なるほどな、という感じに二人はうなずいた。
とりあえず、三人で昇降口に行くと、業者さんが教科書を配っていた。
「F組はこっち、F組はこっちね」
三人で列にならんだ。
「意外に新入生が少ないですね」
「B組以上は寮に配達してくれるからな」
「ああ、扱いの差ですか」
「そりゃそうだ、役に立つか立たないか解らないスキルの生徒より、確実に勇者に繋がるようなスキルを持っている生徒を優遇するじゃんよ」
そりゃそうだよね。
しばらく並んで教科書セットを受け取った。
なんだかずっしりしていて、良い匂いがするね。
「製紙や印刷は異世界から来た勇者からの技術なんだぜ、この世界を救う上に技術の進化もしてくれて、異世界転生勇者はすげえんだ」
「現代も召喚勇者は居るんですか」
「いねえ、さすがに失礼って事で、勇者シイタケの代で法律で禁止になったさ」
さすがは王子さまだ、カービン王子は何でも知ってるな。
「じゃあ、飯にしましょうか、カービンの兄貴、俺はもう腹がペコペコで」
「おう、そうだな。リュートも、くるよな」
「寮では食事は出ないんですか、ペルのご飯が心配で」
「寮は朝と夜だけだな。昼は外にでて喰えだとさ。心配だったら呼べばいいじゃんよ」
「そうだ、テイムなら念話使えるんだろ」
「え、やった事無いからねえ」
とりあえず、ペルさんに頭の中で呼びかけてみた。
(ペルさん、ペルさん聞こえますかどうぞ)
(わ、わわっ、何ですかこれ、ご主人様、愛の通信ですか?)
そりゃあ、まあ、愛の通信ではあるけどさ。
(お昼は学園の食堂で一緒に食べない)
(行きます行きます、待っていてください、すぐ行きますから)
「ペルさん、くるって」
「テイムは便利だなあ」
「魔導通信機を持っているに等しいなあ、すげえすげえ」
「いや、そんなでも、あはは」
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




