第13話 勇者学園1年F組
入学式も終わり、先生の先導でみんなぞろぞろと校舎の方に向かった。
しかし、さすがは王都で勇者を育てる学校だなあ。
至る所ピカピカで豪奢だね。
しかし……。
F組はなんだか色々な生徒がいるなあ。
なんだか汚い女の子までいるぞ。
「おまえ、くせえんだよっ、近づくな賤民!!」
大柄で赤毛の女生徒が汚い女の子を突き飛ばした。
おっと、危ない。
僕は咄嗟に彼女の肩を掴んで転倒を防いだ。
「あ、ありがとう……」
「いえいえ」
うん、言うのは何だが、たしかに臭い。
寮に入るのだから、お風呂を使ってほしいね。
「なんで、その臭え賤民を庇うんだボケっ!!」
「乱暴はやめなさいよ、お姉さん」
「ああ、なんだてめえっ、どこ中よ」
どこ中、流行ってるのかなあ。
だが、僕は田舎の寺子屋出だからなあ。
「キリングヶ丘学問所です……」
「ぎゃはは、田舎の、寺子屋出身かよ、カッペ!!」
なんだか荒くれ女子だなあ、派手な格好をして巨乳だがアクセサリーをガチャガチャいわせているな。
「はいはい、喧嘩しないで仲良くしてねえ、ここがF組ですー」
綺麗な先生がF組のドアを開けた。
ほうほう、綺麗な教室だなあ。
いいねいいね。
「ちっ、貧乏くせえ。おいカッペ、その臭え女を連れて教室の端に行け、しっし!」
派手女さんが犬を追っ払うような仕草をした。
まあ、僕は平民だから、後の廊下側だね。
カービン王子さまは教室の最後尾、窓際の良い席だね。
汚い子はおずおずと僕の隣の席に座った。
「あ、あの、ありがとう、ございます、ええと」
「リュートです、よろしくね」
「サテンです、あ、あのスラムの出でごめんなさい」
「いいっていいって、大丈夫」
生まれはしょうがないからね。
鞄からメロディが顔を出してサテンの匂いを嗅いで酸っぱい顔をした。
『クサイにゃ、お風呂に入るにゃよ』
「しゃ、喋った、ネコチャン」
『メロディにゃ、よろしくにゃん』
「お、お風呂は滅多に入れなくて、ごめんなさい……」
『今日からは寮生活だから、毎日お風呂に入れるにゃよ』
「本当ですか」
『本当にゃ、ペルって子と私と一緒に入りに行くにゃよ』
「あ、ありがとうございますっ」
サテンさんは涙ぐんだ。
うん、メロディは猫になっても世話好きなのは変わらないなあ。
気が付くと隣にジナンさまが座っていた。
「お前さ、変わってんよな、そんな臭い女に親切にして、何を企んでいるんだ?」
「いや、別に、人に親切するとさ、嬉しいじゃん」
「変な奴だなっ」
ジナンさまはむっつりした顔で前を向いた。
「ぎゃはは、知ってるか、このクラスによお【幼女テイマー】がいるらしいぜっ、性犯罪者じゃあねえか」
また、あの下品な赤毛さんが大声を張り上げた。
なんだか、やだなあ。
ジナンさまがばらすかな、と思ったけど、肩をすくめただけでそっぽを向いた。
「ありゃ、ケンネル伯爵家のバカ娘のケイトだ、鼻つまみ者だから付き合う価値はねえよ」
「なんだとお、クソジナンめっ、てめえこそ、クソスキルを引き当ててF組送りだろうがよっ!!」
「てめえもF組だろうが、低脳女がよおっ!!」
貴族が多い学校だから豪奢で華麗な世界だろうなあと思ってたけど、港湾都市の工業高校か、ここは、不良ばっかだなあ。
あ、なんだかサテンさんが不安そうな顔をしている、にっこり笑って安心させよう。
うん。
「おらっ、白状しろっ、【幼女テイマー】なんざ女性の敵だ、一緒に学校とか来てられねえよ! おい、デブ、お前が【幼女テイマー】だな、幼女が好きそうな顔をしてやがるっ」
「ち、ちがうぞ、失敬なっ! 断じてこの僕はそんな変なスキルの人間では無いっ!!」
「ぎゃはははは、否定の仕方が必死だ、お前だ、お前だっ!」
ケイトさんは調子にのって太っちょさんの机をガンガン蹴った。
「やめたまえ、やめたまえよう」
太っちょさんが涙目だ。
ああ、もう。
「【幼女テイム】を持って居るのは僕だ、やめなさい」
僕は立ち上がって宣言した。
瞬間、F組は凍り付いた。
サテンさんが恐怖の表情で机を動かして離れた。
女子達の僕を見る目が氷点下だな。
「まったく、馬鹿だなあ平民はよお」
「だけど……」
「お前のスキルは女子にとっては悪夢だからよ、もう高校生活は女子はよりつかないぞ」
せやかてジナンさん。
「お前が【幼女テイマー】か、やせっぽちのカッペがよお、変態性性欲をたぎらせてそんな酷いスキルを発現させたのかあ」
ケイトさんがズンズンと僕に近づいて来た。
「とりあえず、お前、学校を辞めるまで毎日毎日殴るわ、それが嫌なら、今すぐ退学届を出して来いっ!! いいなっ!!」
「やなこった」
「なんだとお、てめえええっ!」
「おい、ケイト、お前、凄腕護衛持ってるのか」
「ああ? こんな性犯罪者を懲らしめるのに護衛とかいらねえよっ」
「こいつ、教会の人形姫をテイムしてるぞ。お前、死ぬぞ」
「え? 巡回処刑人の娘の、人形姫?」
「そうだ、多分、一発殴ると、毎日、木剣でぼこられるのはお前の方だ。いや、あの子はガチだから一発で死ぬな、うん、ロッカと張り合ってたからな」
「え、お前の所の殺人メイドと?」
ケイトさんは脂汗を流して僕を見ていた。
というか、ジナンさまが僕を庇ってくれたな。
なんでや。
という目で彼をみたら、彼はうるさそうにそっぽを向いた。
「【幼女テイマー】の名前はリュート君という、彼を勇者学園に呼んだのは王府だ。手を出した瞬間、おまえんちは消えてなくなるから、覚悟してやれよな」
窓際最後列の良い席でカービン王子がぼそりと言った。
「え、王子……、マジか、チンピラ王子も同じクラスか」
ケイトさんは青い顔をして席に戻って座った。
肩が細かく震えている。
なんだかなあ。
サテンさんは顔を強ばらせて僕から机を離して震えていた。
うん、こっちの方が傷つくなあ。
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