第12話 モヒカン王子カービン
「モヒカンなのに王子なんですか?」
「こ、これっ、ペルさん、おやめなさい」
「ああ、スキル【チンピラ】の関係でよ、この髪型がしっくりくるんだ」
「王子さまなのにスキルは【チンピラ】なんですか?」
「ぺ、ペルさんっ」
ペルはあれか、恐れをしらない無敵女子なのか?
「うちの王朝の開祖はよお、スラム街のチンピラだったんだよ、それで時々家系に【チンピラ】が出るんだぜ。兄貴なんかは【統制】とか王族らしいスキルが貰えたんだがよ」
そう言うとカービン王子は目を笑わせてペルの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おまえも新入生か?」
「いえ、私はまだ十四なので、ご主人様の奴隷です」
「「「……」」」
みんな嫌な感じに黙った。
「おい、平民、こんな可愛い子を奴隷とか、お前、鬼畜なの? 人面獣なの?」
「そ、それには事情があってですね」
「ま、まあ、人の性癖に文句を言うな、ジナン。こういうのは、まあしょうがねえんだ」
「いやだけど人倫にもとりますよ、カービン王子さま」
「あ、お前が『幼女テイマー』か!」
「ぶっ、なんすかそれはっ」
メイドのロッカさんにも笑われたぞ。
「そ、そんな人聞きの悪いスキルが……、あ、ありえるのか」
「スキル【幼女テイム】を持つ男が入学してくるって聞いた。神々の手違いで人聞きは悪いが、幼女魔王のスキルに対抗できるらしいぜ」
「おお、そんな事が」
カラーンカラーンと尖塔から鐘の音がした。
「おお、ジナンと『幼女テイマー』、入学式に行くぞ」
「急がないとなりませんな、おいペド平民行くぞ」
「は、はい……」
なんだか、入学早々厄介な人達と知り合ったなあ。
まあ、クラスとか違うだろうから大丈夫か。
「それでは私はご主人様寮に行き、ご主人さまのお部屋を整えてお待ちしますね」
「ああ、ペルおねがいします」
「はいっ」
「ロッカ、お前も俺の部屋を整えろ」
「まっぴらごめんだ、あたいは護衛だ」
「お前はっ、メイドだろおおおっ!!」
「うるせえ」
……。
あれだな、社会には色々なメイドさんが居るのだな。
荒事専門の殺人メイドとは凄いな。
体育館の中は生徒でごったがえしていた。
鞄からメロディが顔を出していた。
『ここ、どこですにゃ?』
「メロディ、目を覚ました?」
『はいにゃ』
「今は入学式だよ、大人しくしていてね」
『わかったにゃ』
カービン王子が眉を上げてメロディを見ていた。
人前で喋らないように言わないとなあ。
「君は」
「あ、リュートといいます」
「リュート君ね。Fクラスだから、あそこに並んでね」
「は、はい」
名簿を持った綺麗な先生に並ぶ場所を教えて貰った。
Fクラスかあ、どんな人がいるのだろうなあ。
「げ、平民もFクラスかよっ」
「ああ、ジナンさま……」
マジかよ。
不機嫌そうなジナンさまと並んだ。
「お前のチビ奴隷、良いよな、従順で。うちのロッカは気性は荒いし、いう事きかねえし、ろくなメイドじゃあねえよ」
「ははは、そうなんですね」
校長先生が壇上に立って、新入生歓迎の祝辞を述べていた。
「新入生、答辞、カービン・クライネル第三王子閣下」
「ありゃ、モヒカン王子が答辞か、まあ、そうだな、新入生で一番身分が高いしな」
「詳しいですね、ジナンさま」
「そりゃあ、まあ、貴族なんてのはよお、見栄とハッタリで生きてるもんだからよお、貴族の知識は沢山ねえとな」
そういう物なのか。
カービン王子は咳払いをして壇上に立った。
見た目はチンピラくさいが、良く見るとイケメンだし、押し出しも堂々としてるね。
「さて、新入生諸君、われわれはクライネル王国の各地からスキルを元に、この勇者学園に集められたわけだ。貴族も王族も平民も、それどころか、今年はスラムの賤民からも新入生がでている」
「よかったな、ペド平民、お前より下がいるらしいぜ」
「いやあ、そういう差別みたいのは、ちょっと」
ジナンさまは不規則に発言していかんな。
カービン王子の答辞に集中できないぞ。
「勇者学園の開設者は勇者シイタケだ。彼は言った、スキルだけが世界平和の礎だ、スキルは人の生き方でいかようにも変化し、進化し、形を変えていく。われわれはこれからの三年間でスキルを磨き、学業に邁進し、恋に芸術に大いに努力して立派な人間になろうではないか。それこそが、唯一の勇者の紋章をその身に宿す道なのだと、勇者は言ったという。われわれも、がんばろうではないか」
異様な風体で、みなギョッとして引き気味だったけど、王子の立派なスピーチを聞いて、万雷の拍手で、それに答えていた。
『立派な人だにゃん』
「そうだね」
「おまえ、なに、その喋る猫」
「これは、そのー、ペットですよ」
「へ、変な物飼ってるなあ」
カービン王子は壇を下りて、F組の前についた。
うわ、王子様もF組かよっ。
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