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第29話 サッカー大会(袋詰めする方)の終わり、表彰式へ――優勝者・栄海奈子が得たモノとは――?

 こうして栄海さかみ奈子なこは、隠しボス戦まで終え、全てに勝利しきった。


 そんな《サッカーの女王》は――表彰式の主役として立っている。

 ……が、しかしその心情は、ほんの少しばかり荒れていた。


(なんか、なんか……結局、流されに流されて、こんなことにまでなっちゃいましたけど……段々と、腹が立ってきましたっ。疲れましたし……もう、すっごい疲れましたしっ! とにかく変なことばっかりですし!)


 …………。

 きっと、そう……戦いを終えた余韻がまだ残っており、気が昂っているのだろう。だからその、内気で気弱な奈子であれば、すぐに落ち着いてくれるはず……。


(初めてですよ、こんなに気持ちが収まらないのはっ……ああもう、ツッコ……じゃなく文句でも言いきらないと、気が済みません! こうなったら表彰だとかの時、ぜ~んぶ言っちゃいますからっ!)


 あ、あわわわわわ……。

 その全身に闘志の如きオーラをみなぎらせる奈子に、実況は感嘆の声を上げた。


『おお、何と素晴らしい威風いふう、まさに今大会の覇者に相応しき威容いようですね! さて実況は〝元気だな~〟ことジュン・加美羅カビラが……喉ブッ潰れてリタイア致しましたので、代わってワタシ、ジョンが……〝それ以上なにもない、何も聞くな〟ことジョンが、務めさせて頂きます。ちなみにジュン氏から〝まだ、まだワタクシは、やれる……ゲッホゲホ〟とコメントを頂いておりますが、解説の澤北さん、何かありますか?』


『さっき聞きました』


『ハイありがとうございます。……さあ~~~っつ~いにっ! ついにこの時が、サッカー大会の全戦を終え、覇者を表彰する時が来ました! どうぞ、壇上だんじょうにお上がりくださいっ、栄海奈子選手……いえ《サッカーの女王》~~~!』


『ピーピーッ! イイゾ~《サッカーの女王》~~~!』

『《サッカーの女王》専用の応援歌チャントを作る予定ッス! 絶対ッス!』

『写真集、出しませんか~!? いきなり水着も良いと思うでゲス♪』

『この後、記者100人以上で囲み取材させて頂く予定ッス! よろしくお願いしますッ! オナシャスッ!!』


「…………」


 いつもの奈子なら〝絶対やめろ〟とツッコんでいる気がする、が何も言わないのは、どうやらこのターンは〝力をためる〟を選択しているからだろうか。

 いつからターン制バトルに?


 何はともあれ、今サッカー大会のイメージカラーを模した、ちょっぴり露出多めの衣装を纏ったキャンペーンガール二名が左右から迎える中央を、奈子がゆっくりと歩いていく。


 手渡されたマイクを、まずはとりあえず受け取る奈子へ――大会関係者のトップだろうか、いかにもな雰囲気の中高齢ほどの男性が拍手を贈った。


「おめでとう、おめでとう、栄海奈子選手! 素晴らしい試合……素晴らしいサッカー(袋詰めする方)でした! 感動した、大会運営一同、感動した!」


「…………」


「? おやおや、緊張しているのかな? ハッハッハ、奥ゆかしいハッハッハ!」


「………………」


 豪快に笑う男性だが、奈子は真顔――終始、真顔である。

 ちなみに霧崎きりさき氷雨ひさめも準優勝者として、奈子の後ろについた。


「奈子……優勝、おめでとう。アナタになら、負けても納得だわ。でも……次は、負けないんだからねっ!」


「……氷雨さん」


 氷雨にだけは笑いかける奈子、態度に色々な感情が既に出ている気がする。


 さて、それはそれ――もはや力を溜め切った奈子は、今にもその力を解放せんと、タイミングを窺っている。


 やるならば、そう、やるならば――


(表彰の瞬間、あの何かやけに仰々しいトロフィー……球の代わりにレジ袋っぽい何かが飾られてるのがまたイラッとくる、あのトロフィーを受け取る前に……全部、全部ッ……ツッコみまくってやるんだからっ! 内気で気弱な私だけど、もうどう思われたってかまわないっ……止まらないんだからっ!)


 その目には、炎が宿っていた――燃えたぎるような、闘志の炎だ。


 そしてついに、その時がやってくる。

 関係者が表彰状を、二人のキャンペーンガールがそれぞれ優勝トロフィーと記念の表彰盾を持った。


 そして大会優勝者たる奈子に、称賛と栄誉を贈る――!



「栄海奈子選手、改めて、優勝おめでとう! 優勝者には……

 優勝トロフィーと表彰盾と、賞金100万円をお贈り致します!」



「あのですねぇっ――――今なんて言いました?」


「? ……栄海奈子選手、優勝おめでとう!」


「いえ、その、あと……いえ……すいません全体的に、もう一回お願いします」


 キョトン、とする中高齢の男性だが、〝よほど緊張してるんだなぁ〟と和やかに笑い、奈子の要求通り、もう一度その言葉を繰り返す。



「栄海奈子選手、改めて、優勝おめでとう! 優勝者には……

 優勝トロフィーと表彰盾と、賞金100万円をお送り致します!」


「……………………」



 思えば。

 思えば――その兆候は、何度か()()()


 この広い会場を丸々貸し切りで使っていることに始まり、数多の商品を棚ごと用意したり、有名シェフを雇ったり。


 あまつさえ、超高級ホテル(アレな名前には目を瞑るとして)を決勝戦の出場者と、ぶっちゃけ付き添いに過ぎないだろう晃一にも用意していた。


 ……とはいえ、名利みょうりを求めぬ気高きアスリート、即ちサッカー選手(袋詰めする方の)としての一歩を踏み出した《サッカーの女王》栄海奈子だ。


〝いえどこからそんな運営資金が出てるんですか〟

〝逆に怖いですよ、対戦相手が自滅だらけのこんな大会で〟

〝暇人なんですか皆さん、どうなんですか皆さん〟

〝答えてみろくださいよ。一人ずつビンタしてってあげますから〟


 心の中に渦巻くツッコミを、溜め込んでいた力を、解放しない訳がないだろう。


「……はぁ~~~~~~っ……」


 こめかみに手を当て、痛む頭を軽く振る姿は、〝やれやれ〟と言わんばかりだ。


 目の前に差し出された、優勝トロフィー、表彰盾、表彰状――そして賞金の目録を前にして――

 ふんっ、と気合を入れ直した奈子が、溜めた力を解放するように繰り出すのは!



「皆さんの応援のおかげで、優勝できましたっ♡

 ありがとうございま~~~す――――ぶいっ♡」



 両手のピースを真横に添え、渾身の力で放たれた。

 それはまさしく、今大会一等賞の、最高の笑顔だった――!



『ウッウオオオオオ! ヤッター美少女・女子高生カワイイヤッターーー!』

『新たなるサッカー選手(袋詰めする方の)にして……アイドル的スタープレイヤーの誕生だァァァァァ!』

『栄海奈子!』『サ・カ・ミ!』『アラヨット!』『ナ~~~コッ!』

『《サッカーの女王》、バンザァァァァイッ!!』


 歓喜と興奮の坩堝の観客たち、実況と解説も同様のはずだ。


『何と、何と感動的なラストシーンッ! 勝者も、戦い抜いたサッカー選手たちも、大観衆も、会場中が一体となって、喜びを分かち合っております! これが、サッカー!(袋詰めする方) サッカーという競技(袋詰めする方)が生み出すミラクルドラマァァァ! 解説の澤北さん、いかがでしょうか!?』


『下の方、まだ選手とか転がったままなんですけどねぇ』


『コメントありがとうございますッ!! この美しき結末に、皆様、皆様、今一度! 惜しみなき拍手を! ウワァァァァァ!!』


『『『ウオオオオオオンッ!!!』』』


(うるさっ)


 思わずツッコミかけた奈子だが心の中にとどめ、駆け寄ってくる氷雨の声を受ける。


「奈子っ、おめでとうっ! 本当に……おめでとうっ! ううっ……」


「氷雨さんったら、泣かないでください……ほら、笑いましょう、ねっ♡」


「う、うん……奈子がそう言うなら……えへへ♡」


『ヤッタァァァァァァ百合だァァァァァァ!!』

『危惧する声を無視してホテルの部屋を隣にした運営の判断は間違っていなかった! ここが世界の中心だァァァァァァ!!』

『『『フォーーーリーーーンッラアァァァァァァァッ!!!』』』


(さっきより更にうるさっ)


 それでも、氷雨と並び、笑顔を崩さない奈子――もはや職人である。


 そして先ほどまで同じ会場にいた晃一が、なぜか物陰に隠れ、サングラスを外しながら軽く鼻をすすった。


「フッ、奈子……立派になったな。だが俺は、まだまだ教え足りないことがある……これからが、本当のコーチングだ! ……ぐすっ」


 そして、溢れる涙を隠すように、サングラスをかけ直した。



 ――――…………。



 こうして、激動と激戦、驚愕と驚嘆の果てに、駆け抜けたサッカー大会は。


 大会優勝者にして、《サッカーの女王》――



 ――栄海奈子の輝く笑顔と共に、幕を閉じたのだった――!


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