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戦友  作者:
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2.高校3年クラス

がやがやと、音が聞こえる。

半分寝ていて周りがうるさいときの、あの、自分だけ別世界にいる感覚。

パッと顔を上げると、目の前にはるちゃんがいた。高校の時に隣のクラスで、それなりに仲が良かった、はるちゃん。

-次体育だよ、その後地学だから全部持って行かなきゃだよね。水着持ってきた?

はるちゃんの声がする。

あれ、今日の体育水泳だったっけ、やばい。水着は...ある、地学は...資料集がない、もうしょうがない。

-水着はある、地学の資料集忘れた、、、まぁ良いや、行こ!

制服の長いスカートをひらひらさせながら、二人で廊下を歩く。

2クラス合同の授業は、はるちゃんと一緒に移動できるので、気が楽だ。

-じゃあまたあとでね!

手を振り、別々の更衣室に行く。この学校は、なぜか小さい更衣室が男女二つずつあり、クラス毎に別れて使用するように言われている。


更衣室に入ると、クラスの皆がいる。同じグループの、れいか、さき、せいかが楽しそうにはしゃいでいるのが視界に映る。そしてれいかはチラッと私の方を見ると、

-行こ!

と言って、三人で更衣室を出ていった。

きた、「遊びのふり」だ。いじめではなく、ちょっとからかってみようという体で、私を省いて行動している。いちいち反応してても仕方がない。

-ここ置いて良い?

私は近くにいたみずきとひなこに声をかける。

-もちろん!

ひなこが答え、少しスペースを空けてくれる。

そして、みずきが少し気を使うようにこちらを見てきた。

-何であの子たち三人といるの?

みずきは不思議なのだ、意地悪をしてくるような三人と私が一緒のグループであることが。

そもそも、今までは三人と一緒にいたが、もうそろそろ潮時かもしれない。

私はみずきに向かって、努めて不敵な笑みを浮かべた。

私は、あの三人と違って、他の子たちとも仲良く一緒にいられるのだ。

みずきが言葉を重ねる。

-私せいかが一番ちょっと、って思う。本当に遊びでやってると思ってる。

せいかは、純粋というか、天然だから、その通りかもしれない。

着替え終わり、みずき、ひなことプールサイドへ向かう。

そこに、はるちゃんと、はるちゃんと同じクラスのかほちゃんも加わり、何となくみんなでかたまる。

-ねー、スピリットみた?

-みた!おもしろいよね!

-私みてない、おもしろいの?

-おもしろいよ!

-どんな話?

-えー、ネタバレしないくらいで言うと〜、人間の中に、SPVっていう、死なない人たちが現れるの。SPVはモノになることができて。例えば、桃とか、クッションとか。

-桃?!笑動物とかになれるんじゃないんだ。

-動物はない!まじでモノだけ。桃とかウケるよね笑それで、SPVの一人が戦争を起こしてきて、、そいつを倒すために戦っていくって感じ。

-でも死なないんでしょ?倒せなくない?

-いや、なんかね、完全に死なないわけじゃないの。例えば、普通の人間は銃で撃たれたら死ぬけど、SPVは死なない。でも、魂があって、魂を奪えばSPVは無くなるの。

-ふーん、命と魂は別ってこと?

-そうそう!普通の人は、命と魂を持ってて命がなくなったら死ぬんだけど、SPVは命がないから死なない。でも魂はあるから、それが奪われた瞬間に無くなるの。

私が何ら問題なく他の子たちと仲良くしているのを見て、例の三人がこちらに向かってきた。

逃げないと、

そう思ったが、一瞬遅く、れいかに話しかけられる。

-今日の水泳、チーム戦だけど、グループ一緒になるでしょ?

さっきまで、省いてたくせに。言い放ってやりたい気持ちをぐっとこらえる。

-うん、良いよ。 

行った瞬間、ズンッと心に重しが乗ったような気がした。

何で、向かってこられると見放せないのかわからない。来るもの拒まず去るもの追わずって言うけれど、それとはまた違う気もする。

授業が始まり、早速チーム戦がスタートする。

みんなやる気はそれぞれで、絶対勝ちたいと言う子もいれば、何でこんなことやらなきゃいけないの、と嫌がっている子もいる。

-絶対勝ちたい〜せいか、さき、よろしくね!

れいかがいつもの如く、無駄にやる気を出している。同じチームにと誘ったくせに、私には話しかけない。まぁ良いけど。

-よーい、

ピッ

先生が笛を吹く。

わあっと、歓声と水飛沫がはじける。

いけー、と、きゃあきゃあわいわい皆がはしゃいでいる。先ほどまでやる気のなかった子たちも、周りにつられて盛り上がっている。

皆の声が、景色が、遠くに感じる。

-次だよっ!

せいかに声をかけられ、はっとして、プールに入りゴーグルをつける。

さきが、プールサイドにタッチするのをみて、水に潜る。

ぐん、と壁を蹴る。一気に、周りの音が失せた。なるべく、息継ぎをしないように、ギリギリまで我慢する。無理、と思った瞬間、バッと息継ぎをする。

わぁああああああああ

一瞬歓声が聞こえ、また静寂が訪れる。

何位なのか、抜かされたのか抜かしたのか、全くわからない。ひたすら、泳ぐ。

もうすぐ、あと少し。

手を伸ばし、プールサイドにタッチする。

私がタッチするより僅かに早く、れいかがスタートを切る。

私は、地面に手をつきぐんっと身体を押し上げ、プールから出る。

ゴーグルをあげ、顔の水を拭う。身体から、水がばらばらと落ちている。

私たちのチームは、1位だ。れいかは運動神経が良い。どんどん周りを突き放していく。

そして、れいかがプールサイドにタッチした瞬間、

-1着!

先生が声を張り上げて言う。

その後も、他のチームが次々とゴールする。

そして最後に、自他ともに認める、運動神経の悪いみずきとひなこのいるチームが残り、皆で応援する。

-がんばれ〜

-あとちょっと!

無事、みずきがゴールし、終わった。

ピーッ

先生が笛を吹き、皆が少し静かになる。

-はい、今日の女子1位はAチーム、おめでとう!

先生が言うと、れいかが即座に反応する。

-みんなありがとう!ナイスだった〜このチームやっぱ最高!

せいかが嬉しそうにはにかみ、さきが答える。

-アンカーのれいかが速すぎたよ〜!

私は作り笑いをし、拍手をする。

ズンッと、また、心に何かが乗った気がする。

-じゃあ次は男子!

先生が言い、今度は男子のチーム戦がスタートする。

私は、たいきくんを探す。密かに想いを寄せているのを、気づかれないように、目線だけで。

いた、いつも通り仲の良いメンツでチームを組んでいる。みんな運動神経が良いから、恐らく勝つだろう。あと、女子は皆たいきくんたちのチームを見ている、気がする。

-よーい

ピッ

また、わああぁっと、歓声がはじける。

たいきくんのチームは、1位だ。女子が、誰々かっこ良いとか、あいつ何やってんのとか、色々言っているのが聞こえる。

たいきくんは、3番手。私と一緒だ。そんな些細なことが、何だか嬉しい。何の意味もないのに。

2番手が近づいてきて、たいきくんが準備を始める。そして、スタートした。

速い、フォームも綺麗で、かっこ良い。またまた、周りとの差を広げていく。

そして1位のままタッチし、アンカーに繋ぐ。

たいきくんは、プールから出ると同じチームの皆と笑顔でハイタッチをして、その後プールに目を移し、アンカーに向かって「いけ!」と叫んでいた。

たいきくんのチームのアンカーがゴールした。もちろん1位で。

男子のチームの最下位は、明らか余った人たちで組んだようなメンツだった。

皆がゴールすると、先ほどと同じように、先生が笛を吹き皆を集める。

-はい!男子の1位は、Cチーム!おめでとう!

いぇーい、とたいきくんがチームの人たちとグータッチをした。

-じゃあ、今日はこれで終わり!少し時間余ってるから、泳ぎたい人は時間まで泳いで良いよ。終わりにしたい人は終わりにしてよし!

れいかが、早速言う。

-さき、せいか、残るでしょ?泳ご!

誘われてもないし、聞かれてもいないが、私は

-私はもう行くね。

と話した。

せいかだけ、律儀に

-そっか、じゃあ私たち泳ぐから。

と返してくれた。

チラッと隣のクラスを見ると、はるちゃんはかほちゃんと話しており、まだプールに残りそうで、地学の授業への移動は一緒に行けそうではなかった。

シャワーを浴び、更衣室に戻ろうとすると、れいかがたいきくんたちに話しかけていた。

-たいきたち、さすがじゃん!このクラス体育祭も期待できるわ

-いや、れいかたちも1位だったじゃん。

私が横を通りかかると、一瞬たいきくんと目が合った。咄嗟に目を逸らし、前にいたみずきとひなこを呼び止める。

-みずき、ひなこ!もう行くの?私も行く。

-行くよ!着替えよ〜。

惨めな子だと、仲間はずれにされていると、たいきくんに思われたくなかった。

ズンッと、また、何かが落ちてくる。

更衣室に戻ると、泳いでいるときよりよっぽど生き生きとした様子で、みずきが話し始めた。

-疲れたね〜ていうか、1位だったね!おめでとう。

-ありがとう。いやーでも正直、れいかが強いからね、、、。

-あー、、そうだよね、れいか、すごいよね。

みずきが曖昧な感じで答える。恐らく、僅かに早くスタートするのを見ていたのだろう。

-スタートするの、早くない?って思ったけどね。

笑いながら私が言うと、みずきがそうそう!と続ける。

-れいかいっつもフライングするよね、しなくても速いとは思うけどさー。みんなあれ見て、え?ってなってたもん。

やはり、そうなのだ。皆口には出さないだけで、れいかの自分勝手な言動に疑問や不満を持っている。

そのまま、みずきとひなこと三人で、れいかが今までしてきた嫌な言動について、あれはないよね〜!と話しつつ、地学の教室へ向かった。

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