43話 発現者クラス
投稿設定忘れてたので遅くに失礼します。本日から新章です。
「…はぁ、寂しくなるなぁ…」
部屋に置いてあった荷物を片付け、もぬけの殻となりつつある空間を見つめながら呟く。
4ヶ月。ここへ来てから既にそれだけの月日が経ち、この学園生活にも随分慣れてきていた。
クラスでセイルと話したり、生徒会でリゼ先輩やユノと一緒に仕事して、セイルのお手伝いとか……
「うぁぁぁぁ……どうしよ……」
気付けばセイルのことばかり頭に浮かんでくる。これでは次会った時が気まずいではないか。
別に永遠の別れではないと、何度も割り切って、切り替えたはずなのに。
「なぁに?朝から騒いで」
「ヨル…」
部屋の片付けで、最後まで残っていた1箇所。狭く密閉された空間から黒猫が這い出る。
眠たげに、欠伸をしながら吐いた言葉は私の心情を察してか知らずか、どこか優しく柔らかい。
「…ごめん。もう、大丈夫だから」
「そう?ならいいけどぉ」
そうして再び寝床へと戻ろうとするヨル───に、私は待ったを掛ける。
ヨルは、何かを察したような表情を浮かべて疑問を放つ。
「その手は何かしらぁ?」
「ヨルがもう1日って、伸ばし続けるから大変なの!もうダメだからね」
「ルナの癖に、言うようになったわねぇ…」
妖艶な目で、困ったような訴えをするが私はもう屈しない。
昨日も、一昨日も…何度も負けたが今日ばかりは譲れない。
「あの勇者もどきと離れないようにしたげてたのにぃ…?」
「もうどうしようもないから!」
「ほんとにそうかしらぁ?」
くっ…!
本当に、ヨルは…卑怯だ。私のことをよく知っている。だからこんな風に言ってくるし、それを逆手に要求を通そうとしてくる。
…が、そろそろ無理なのだ。もう、言い訳の蓄えが無くなっている。これ以上は休めない。だから────
覚悟っ!
* * *
「というわけで─────彼女らは、今回の合同演習を経て『異能』を発現した。今日からこのクラスに入る。挨拶を」
真面目そうな黒髪の男性が、私とルリエナへ促す。このクラスの担任だろうか…?
なんて考えている場合じゃなかった。一斉に向かってきた視線で、それを思い出す。
私は1呼吸置いてから、改めての自己紹介を口にした。
「ルナ・メモリアです。どうぞ、よろしくお願いします」
ルリエナが続く。
「ルリエナ・グライシスと申します。以後お見知り置きを」
注目が集まり、形式的な拍手が送られ終了。
再度、黒髪の男の方へと向き直る。
「席は適当に。もうしばらくしたらあいつ…このクラスの担任が来るはずだ。待っているように」
気になることを言い残して、男が立ち去る。どうやら担任じゃ無かったみたいだ。
とりあえず言われた通り、私とルリエナは適当に空いている席へと着く。私は窓際の後ろ辺り。ルリエナは、私とは真逆の位置に。
そうして待つこと10分。
ガラリと教室の扉が開かれ、1人の男が入ってきた。
寝癖の残る、白い髪に少し小さめの黒眼鏡。どこからどう見ても、だらしの無い大人に見える。
「悪るいね、皆。ふぁ…遅れた。ちょっと準備に手間取って」
果たして本当に準備で遅れたのか怪しいが、それは置いておこう。
恐らくは先の男が言っていたであろう担任が教壇に立った。
「僕は担任のエリック。えっと…編入生が2人とも発現したんだって?」
私とルリエナに向けた問い。頷き、目線を返す。
「まずはおめでとう。きっと、ここまで登り詰めるのに苦労したことだろう」
苦労…はしたにはしたが、それは得るためにでは無く、使うかどうかの決断だ。
そのためか、少し反応が遅れた。
「ありがとうございます」
「うん、聞いてた通りちゃんとしてるね。…前置きはここまでにして、そろそろ本題に入ろうか」
その言葉に、クラス全体の雰囲気が引き締まったのを感じた。何か重要なことを話すのだと理解し身構えて─────
「クラス内での、順位争いについてね」
ごくりと、唾を飲む音が静寂で響いた。
…………
「去年の、セルディア君が首席を獲って以来だから、1年ぶりか」
セルディア、基ユノへ視線が向く。ユノは気付くと、少し気恥しそうに俯いた。
「実力は常に変わる。だから、新しく人が入る度に行うんだ。クラス内での、順位を決めるためにね」
エリックは淡々と、言葉を続けていく。
「今回はバトルロワイヤル形式。個人戦で、異能の制限もなしだ」
「異能同士の、争い…」
かつての戦争を思い出す。今の主戦場ではやはり異能による戦闘がメインであり、異能の強さこそが勝敗を分ける。
「去年と同じく、首席…あと、次席までは何かしらの褒賞が与えられる。皆、気を引き締めて臨んで欲しい。何か質問があれば…僕か、副担任のユステスに聞いてくれ」
しーん…と、教室が静まり返る。緊張がもろに伝わってきて、冷や汗が伝う。
制限もなしで、バトルロワイヤル…なんか、嫌な予感がする。
「今は無いみたいだね。開催は3日後、くれぐれも準備を怠らないように」
言うことだけ言って、エリックは教室を去っていく。
教室の中は、非常に、とんでもなく気まずい空気が流れていたのは言うまでもない。




