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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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39/202

回送(回想) ゴーレム使いの魔女

2023年8月30日にカクヨムで公開したものです。

 私は周りの冒険者からゴーレム使いの魔女と呼ばれている。

 そう呼ばれるようになったのはこの世界に転移してきてすぐ、まだ私が23歳だった頃。今から470年前のことだ。

 では何故、そんなあだ名がついたのか。その理由は。



 私は今日、冒険者ギルドのマスターに呼び出されていたため、わざわざ王都まで出向いていた。

 扉を押し開けてギルドの中に入ると、受付嬢の少女が元気よく出迎えてくれた。


「ああ、ゴーレム使いの魔女さん! 来てくれてありがとうございます!」

「ギルマスは……?」

「マスターは今忙しくて、ちょっと手が離せないみたいで。なので代わりにアタシから用件をお伝えしますね!」


 そう言うと受付嬢の少女は、ポケットからメモ用紙を取り出して、書いてある内容を読み上げ始める。


「え〜と。『昨夜の集中豪雨のせいでココロア街道で土砂崩れが起きて、現在ナウラ町の住民が孤立している状況です。一刻も早く救助するため、貴女のゴーレムにもお手伝い頂けませんか?』とのことです」

「なるほど……。災害現場への応援要請……」

「引き受けていただけますか?」

「大丈夫……」

「良かった〜! ありがとうございます!」


 こちらが首を縦に振ると、安心した様子でホッと胸を撫で下ろした受付嬢の少女。

 少女はそれから、ギルドに集まっていた冒険者たちの方へと駆け出していき、彼らに声を掛ける。


「皆さん! ゴーレム使いの魔女さんの仲間のゴーレムさん達も手伝ってくれるみたいですよ!」


「おお、それは助かる!」

「魔女さんのゴーレムがいてくれれば百人力だぜ」

「よろしく頼むよ、ゴーレム使いの魔女さん」


 ガタイの良い屈強な冒険者の男達から、次々と肩を叩かれる。


「痛い……」


 みんな、力強すぎ……。


 彼らがゴーレムと呼ぶのは、私が日本から転移してきた時に巻き込んでしまったらしい様々な重機だ。油圧ショベルやダンプカー、ブルドーザーにクレーン車などなど。私が当時勤めていた土木会社にあったもの。


 470年前。一人で残業していたら寝落ちしてしまって、気が付いたら会社の敷地ごとこの世界に飛ばされていた。


 そして、この世界の人は重機なんて見たことがないから、それらを勝手にゴーレムだと勘違いし。私のことをゴーレムを使役することが出来る魔法の持ち主、ゴーレム使いの魔女と呼ぶようになった。

 ゴーレムも操れないし、魔法も扱えないのに……。


 それから冒険者たちと共に現場に急行し、土砂の撤去作業を進めていると。


「そういや聞いたか? すまーとふぉんの勇者様が二週間前くらいから行方不明になってるって」

「あ〜、なんか噂になってたな。でもまさか、人間に化けてたドラゴンを倒せるくらい強い勇者がやられるはずないだろ」

「だよなぁ。ま、いつかひょっこり帰ってくるだろ」


 そんな会話が耳に届いた。


 また、禁忌狩りが始まった……。


 この世界で最も力の強い宗教団体、ザカリ正教。この宗教では、異世界からやって来たものは人であろうと道具であろうと全てが禁忌。基本的には見つかり次第、執行人に密かに処分される。


 しかし、例外もある。

 この世界に利益をもたらし、害をなさない存在だと判断されれば、執行人は処分を保留とし協力関係を結んでくれる。


 私もその協力者となった一人だ。

 だが、執行人からいつ処分されるかは分からない。

 ザカリ正教が、何を基準に利益か害かをジャッジしているのか不明だからだ。全ては教祖様の意思に委ねられている。


 だから私は、言われたことしかやらない。

 頼まれた仕事をこなす、与えられた使命を果たすだけ。

 余計なことはしないように。決して出しゃばってはいけない。

 自我を持つな、感情を捨てろ。


 そうやって470年という長い時を過ごしてきて、私は小松しほりという人格を失い、ザカリ正教の操り人形【ゴーレム使いの魔女】となった。

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