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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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異28系統 グノーバ墓地〜旧ウィスタ邸庭園〜フォザーリナ通り〜ラフォク新市街BT

2023年6月21日にカクヨムで公開したものです。

 始発のバス停に発車時刻よりも早めに到着したので、転回場でしばらく休憩を取ることに。


 今日も雨が降っていて、湿度もかなり高い。


「あ〜、暑っ……」


 運行予定表をうちわ代わりにしてパタパタと扇ぐ。

 それからマイボトルに入れた水を飲んで、ふーっと一息。


「よしっ。そろそろかな」


 発車時刻三分前。エンジンを始動させて、停留所へとバスを移動させる。


「お待たせしました。ラフォク行きです」


 車外放送スピーカーでアナウンスしつつ前扉を開けると、男性二人が乗り込んできた。

 彼らは金貨を握り締めたまま、こちらを睨みつける。


「おい御者の嬢ちゃん」

「はい、何でしょう?」


 首を傾げると、男性は苛立ちを隠そうともせずに口を開いた。


「こっちが雨の中待ってんの見えてただろ? のんびりしてねぇでさっさと乗せやがれ」

「全く、お前は気遣いってもんを知らないのか?」


「あぁ、えっと。すみません……」


 クレームを言われたので、頭を下げて謝罪する。


「嬢ちゃん、名前は?」

「訊くまでも無さそうですぜ? ここに書いてある。サワヤマ、だってよ」

「サワヤマ。変な名前だな!」


 前扉のそばに掲示してある名札を指差してガハハハと下品に笑う二人に、私は何も言うことが出来ない。


「この服、結構高かったんだけどな。サワヤマのせいでずぶ濡れになっちまったじゃねぇか」

「責任、取ってくれるんだよな?」


「いやぁ、責任と言われましても。それはちょっと……」


 こちらの不手際によるバス車内での事案ならともかく、バスを待っていた間の話をされても困る。いささか理不尽な要求だ。


「ああん? 随分と生意気だな?」

「この埼京交通バス株式会社ってのがサワヤマが隷属してる組織か? もし責任取ってくれねぇなら、サワヤマに酷いことをされたって言いつけてやってもいいんだぜ?」


 もはや脅迫に近いレベルの暴言を吐かれても、運転手はあくまで毅然に冷静に対応するしかない。


「お客様を雨の中で長い時間お待たせしてしまったことに関しては、大変申し訳ございませんでした。しかし、お洋服の弁償は致しかねます。発車時刻となりましたので、運賃をお支払い頂きご着席下さい」


「チッ。分かった分かった!」

「これで良いんだろ?」


 男性二人は未だ怒りが収まらない様子だったが、それぞれが220ゴールドを運賃箱の硬貨投入口に叩き込むように入れると、ドカドカと足音を鳴らしながら車両後方に向かい二人掛けの席に座った。


『発車致します。お掴まり下さい。本日も埼京交通バスをご利用いただき、誠にありがとうございます。この車は、異28系統ラフォク新市街バスターミナル行きです。次はトタリカ市民霊園。お降りの方はブザーでお知らせ下さい』



 乗客からの過度なクレーム。カスタマーハラスメントとも呼ばれるこの問題の対策として、国土交通省は2023年6月下旬に関係省令を改正。バスやタクシーの車内での氏名掲示が義務ではなくなった。

 これからは名札を掲示するか否かは各事業者の判断に委ねられる。


 皆さんもバスやタクシーに乗った際は車内を確かめてみてください。もしかしたら名札が無くなっているかもしれませんよ。

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