異138系統 トリアヤ町〜ルーガ崎〜フェヴィーノ宮〜フタッキ駅南口
『次は王立魔法学院フタッキ校前。バスのすぐ前や後ろの横断は非常に危険です。バスの発車後、左右をよく見て横断しましょう』
次の停留所が近づいてくると、待っているお客さんの姿が見えた。
トランセはゆっくりとバスを減速させて停車。
前扉を開けると、乗り込んできたのは魔法学院の生徒たちだ。
車内は混み合っていたため、彼らは吊り革に掴まって通路に立った。
『発車します。お掴まり下さい』
その後、生徒たちの会話がトランセの耳に届く。
「無能だなんだと俺のことを散々バカにしてくれていたが、どうだ今の気分は? 魔法が使えなくなった途端、お前らの方がよっぽど無能じゃないか」
「くっ、生意気言ってんじゃねぇぞ雑魚が。こんな事態は一時的だ。どうせすぐにマナは戻る」
「そうだそうだ。それに、女神マギカの奇跡を信じないなんて、魔導士の風上にも置けねぇな。学院もさっさと辞めちまえ」
魔導士というのは、実力至上主義の世界だ。
いかに強力な魔法が使えるか、扱えるマナの量が多いか。
全てがそういった能力でランク付けされ、そのランクで魔導士としての人生が決まる。
トランセは支援魔法の高い能力が認められ、運良く魔法学院を上位で卒業することができた。
しかし、体質的にマナを少量しか扱えない者、幅広い魔法が使えるが上級魔法が習得できない器用貧乏な者などは、あまり評価されずに落第や退学となるケースもある。
よって、学院内では常に生徒間に格差が存在し、強者が弱者をいじめる。
そんな空気が常態化していた。
今は魔法が使えないという異常事態によって、そのヒエラルキーが崩れているといったところか。
生徒たちの言い争いが段々と激しくなってきたので、トランセはマイクをオンにした状態で咳払いをした。
「んっ、んんっ」
「やべ」
「チッ」
それで少し怯んだのか、彼らは口喧嘩をやめて静かになった。
ったく、嫌なことを思い出させやがって。
魔法学院のピリついた雰囲気、ホント苦手なんだよなぁ。




