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5、ギルド受付嬢、ちょっとひどくね?

 ギルドに到着すると、早速魔物の素材買取カウンターまで向かう。レインは念のために言うが、このギルドに来るのは初めてなのだ。しかし元の世界でもギルドと同じような場所はあったため、それほど迷うことは無いのだ。


「魔物の買取いいですか?」


 カウンターの女性に声を掛ける。女性には頭の上に猫耳が生えていた。そこからおそらく獣人なのだろう、とすぐに察するレイン。獣人は人里ではあまり見ないのだが、冒険者ギルドで働いている所を見ると種族の差はあまり無いように思い安心するレインであった。


 その理由は言うまでも無く、フランのことである。


「はい、では冒険者カードの提出をお願いします!」


 愛想よく、笑顔で冒険者カードの提示を求めてくる猫獣人、しかし冒険者登録をしていないレインは少しバツが悪そうに答える。


「あー、冒険者登録はしてないです」

「――――チッ、何だよ」

「!?」


 猫獣人の女性は先ほどの愛想良い対応とは打って変わってゴミを見るような眼でレインを見る。


「冒険者登録してなくても買取ぐらいは出来るのでは……?」

「はぁ? それが何? 冒険者登録もしてない一般人の持ち込む素材なんて見るだけ時間の無駄なんだけど。 消えてくれない?」

「時間の無駄って……」


 流石に文句を言おうとした時、隣のカウンターから声がかかる。


「そこの子、こっちで買取するからおいで」

「え?」

「獣人の女の子を連れていた君だよ、君」

「あ、はい」


 言われるがままに隣のカウンターに向うと、そこには人族の女性がいた。歳は見た目から推測すると50代ほどに見える。


「すまないね……あの子は少しだけ未熟なのよ。

 せめてあと少し優しくて

 あと少し差別意識が無くて

 あと少し見下す癖を減らして

 あと少し媚びを売るのを止めて

 あと少し金にがめついところが無くて

 あと少し――――」

「おばさん、それは少しとは言わない」


 目の前の女性は少なからず猫獣人の女性を嫌っていると即座に理解するレインであった。


「あら、ごめんなさいね。 私はギルド職員のローズよ。 皆からは【美姫ローズ】と呼ばれている気がするわ」

「分かりました、俺はレインです。美姫ローズ様」

「ごめんなさい、やっぱりローズさんで」

「じゃあ、最初から言わないで下さいよ」

「それで素材は何かしら?」

「流しやがった」


 そう言いながらレインは倒したワイバーンのことを話す。


「ワイバーン!? Cランクの魔物じゃない……。 でも素材は何処に?」

「収納してます」

「はあああああああああああ!?」


 突然大声を上げるローズ、そしてその声に吸い寄せられる視線。もちろんその中には先ほどの猫獣人の姿もあった。


「ちょ、ちょっと奥来て……」

「え?」

「いいから!」


 言われるがまま、奥の部屋に進むレイン。そして奥の部屋に着くとローズから「ワイバーンを出してみて」と言われる。言葉の意味が分からず空間倉庫から五体ほどのワイバーンの死体を取り出す。


「本当に空間魔法が……」

「どうかしました?」

「どうしたも無いわよ! 空間魔法なんてあの賢者様でも届くか分からない領域なのよ!?」

「な、なるほど……(いや、賢者って誰だよ)」

「それにこのワイバーン! 外部に損傷が無いじゃないの!」


 その代わり、身体の内部がぐちゃぐちゃなのだがそこはあまり関係ないだろう。


「それで、買取いいですか?」

「え、ええ……ちょっと待って……」


 すぐにどこかに行くと、ローズは紙の束を持ってくる。それをレインの目の前に置くと、「これでどう?」と問いかける。


「これは?」

「これって……お金でしょ! 全部で二十万クリスタあるから、残りの四体のワイバーンの金額は後日渡すから今はこれでお願い」

「これが……お金?」


 クリスタと言うのが金の単位だとはすぐに気付いたが、レインの知っている金とは全く違っていた。

 レインの元居た世界では石貨、銅貨、大銀貨、金貨、白金貨があり、紙幣などは無かったのだ。しかしローズの人柄からして騙すような真似はしないと信じたレインは素直に受け取ることにした。


「宿は一晩、五千クリスタぐらいで泊まれるからよほどのことが無い限り大丈夫なはずよ」

「ワイバーン程度でそんなに……?あ、いや、なんでもない、ありがとう。 それじゃあ俺はこれで」

「素材に損傷がまるで無いからよ、本来ならもっと安いわ。それで残りのお金は……」

「大丈夫です、後日受け取りに来ます」


 そして宿を探しに戻ろうとしたところで、あることに気付く。


「……フラン?」


 フランがいないのだ。ギルドに入る前までは確かにいたのに、どこに消えたというのか。


「どうかしたかい?」

「あ、あの……蒼い髪の獣人の女の子がいたはずなんですが……」

「ああ、あんたが受付カウンターにいた時だったかな、暇そうに外のほうへ歩いて行ったよ」

「(……なんてこった)」


 かなり前にフランはどこかに歩いて行ってしまったというのだ。そして自分は親失格だ……とレインは自己嫌悪しギルドの外へと走り出す。


「フランっ!」



 その頃のフランは――――


「……ここ、どこ?」


 絶賛迷子中だった。

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