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3、昔の仲間を思い出して……怖い

「二歳の私に聞かれても」

「ふぁっ」


 氷狼族の寿命は二十年(人化している時点で人間の寿命になっているが)、人間の寿命を百年と考えるとフランの現在の人間年齢は十歳という訳なのだ。


「そっか……二歳か。」

「?」


 レインが遠い目をしているとフランは不思議そうに首を傾げる。何故、そんな悟りを開いたような顔をしているのか、全く分からなかったのだ。レインはそこまで年老いているようには見えず、どちらかと言うとフードの下の顔は十代後半ほどの若者なのだ。人間年齢では離れているようには思えない、とフランは考えている。そして不意にこんな質問を繰り出すのだった。


「ぱぱ、何歳なの?」

「俺か? 多分……17世紀ぐらいかな」

「ふーん、人間ってそんなに生きるんだね!」

「人間は精々百年ぐらいだぞ? 俺が特別なだけだ、昔に―――いや、やっぱりなんでもない。 俺は十七歳だ、そんぐらいにしといてくれ」

「分かった! 永遠の十七歳ね! でも近所のおじさんが『そう言う奴は基本、三十歳過ぎてるから』って言ってたよ!」

「近所のオジサンは何を教えてるんだ……」


 そんな会話をしながらレインは次の目的を考え始める。目の前にいるフランは二歳で何も知らない。親も殺され、自分に懐いている。


(どうせ異世界に来ちまったんだ、旅するなら一人より二人……か)


 昨夜までは布団としてしか見ていなかったレインにとってフランと一緒にいることはメリットとはならないだろう、しかし流石にこの状況で見捨てるという行為は出来なかった。


 メリットをすぐに考える癖して、困っている人を見ると考えることを止め助けに徹する。それがレインという男だ。


「よし、とりあえず街に行って情報収集な!」

「おー!」


 そう言いながらレインはマジホの地図アプリを取り出す。もう既に地図をアプリが自動的に創っていたので町の方角はすぐに分かった。


「あっちか、歩きだと二時間ぐらいかな」


 そう言いながらレインとフランは地図に従い、森を抜けようと歩き始める……



「おっ、見えてきた」


すー、すー


 歩くこと二時間、地図アプリに従って進むと大きな都市が見えてくる。地図アプリはあくまで、その土地を魔力探知で解析し、地図を作成するだけなので街の名前などは分からない。

 なので正直、街がどんな場所なのかさえも分からないのだ。


すー、すー


「さて……と」


すー、すー


「いつまで寝る気なんだ……フランよ」


◇遡る事一時間


「ぱぱ、疲れたー」

「うーん、一時間も歩いてるしな……」


 レインは慣れているかもしれないが、フランはまだ子供なのだ、疲れるのも無理はない。その点からレインはどうしようか、と悩んでいると、フランはローブの端を摘まみ最も子供らしい解決策を提案したのだった。


「おんぶ……」

「……」


 レインは一瞬、固まった。何故か?精神魔法による攻撃?レインもおんぶしてほしい?いいや違う……


「(なにこれ可愛い)」


 単純にフランの仕草にキュンっと来たのだ。レインは十七せ――じゃなく、十七年の間、女性と付き合ったことが無いのだ。顔は悪くない……むしろイケメンの部類に入るだろう。何が問題があったのだろう……と昔からレインは悩んでいたのだ。


――――ごめん、私はBLが好きなの……

――――レインさん……貴方は私じゃなくて彼(細マッチョイケメン)に告白してくれないかしら?

――――魔術師と剣士のBL……これは本にすれば売れるっ!!


「(あれ? 何か俺のパーティメンバーおかしくない? そういえばあの時期、街中の女の子から寒気を感じる視線を感じたような……それに息が荒いオッサンにもニ、三回ぐらい声を掛けられて――――)」


 もしかしてアレってアイツらがBL本書いたからじゃ……と一瞬考えるがすぐにそんなわけない、と現実逃避を始める。


「おかしいな? 目から汗が出てくるぞ?」

「ぱぱ? どうしたの?」

「ああ、ごめんごめん。 おんぶね」

「わーっ♪」


 レインはフランをおんぶすると、静かに「(娘って……いいな)」と心の中で呟いたのであった。



すー、すー


 そしてその後何があったかは現在の状況を見れば分かるだろう。おんぶして五秒で寝たのである……

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