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幻想のカラディシア  作者: 空港ヨハンナ
Oic Corner

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4 鳴り止まない注文

『こないだねぇ、Oic Cornerに行ったんだよ。ちょっと蕎麦が食べたくてねぇ。ついでにシャンプーも切れてたからねぇ。Oic Cornerのシャンプー、買ったことあるかい? 一種類しかないんだけどねぇ、ボタニカルなあの香りがたまらないのさ。そしたらねぇ』

 ラジオヨハンナは、相変わらず喋っていた。

 午後一時を過ぎたOic Corner Japoniskaiは、すっかり静かになっていた。

 昼食のピークタイムは終わった。

 つい先ほどまで、蕎麦だのシリアルだのと注文が飛び交っていたのが嘘のようだった。

 客の姿はほとんどない。

 ヴィルテは窓際の席で、Rowena 7を操作していた。

 外は相変わらずの猛吹雪。

 雪が横向きに流れている。

 もう何時間もここにいる気がする。

 実際、何時間もここにいた。

『それでねぇ、蕎麦を食べてたんだけどねぇ』

 ピコン。

 レジの端末が鳴った。

 店員が顔を上げる。

「……?」

 注文が入っていた。

 蕎麦。

 ピコン。

 天丼。

 ピコン。

 カツ丼。

 ピコン。

 牛丼。

 ピコン。

 また蕎麦。

 ピコン。

 ちくわの磯辺揚げ。

「……」

 店員は眉をひそめた。

 店内を見渡す。

 誰もいない。

 いや、ヴィルテがいた。

 しかし、彼女はずっと窓際でRowena 7を操作している。

「っかしいなぁ……」

 店員は呟いた。

「オンライン注文か……」

 厨房から、もう一人の店員が顔を出した。

「よう、デリバリーじゃないよな?」

「そうなんすけど、っかしいんすよね。店内、誰もいないんすよ」

「ん?」

 二人が店内を見た。

 ヴィルテも二人を見た。

「お客さん、違います?」

「ち、違います」

「っすよねぇ」

「えー?」調理担当の店員は首を傾げた。そして、店の奥へ引っ込んだ。二十秒ほどして戻ってきた。「カメラにもいない」

「っすよね。っかしいなぁ」

 ヴィルテは、ふと店内の奥を見た。

 トイレ。

 使用中。

「……」

 あそこでは?

 そう思った。

 しかし、二人の店員はまだ注文履歴を調べている。

「作る?」調理担当が尋ねた。

「いや、来たらでいいんじゃないすか? 米、炊けてませんでしたっつって」

「だな。炊けてるけど」

「先輩準備良いっすもんね」

「いたずらかな」

「決済済みっすよ」

「……一旦ストップする?」

「できるんすか」

「オンラインオーダーストップね。ちょっと来て、やり方見せるわ」

「あざす」

「これ使ってサボるなよ?」

「約束できねっす」

 二人はカウンターの奥へ引っ込んだ。

 ヴィルテはトイレを見た。

 使用中。

 まだ使用中。

 そして、数十秒後。

 扉が開いた。

 小さな子供が出てきた。

「ふっふっふ、おかしいねぇ」

「……」

 ヴィルテは子供を見た。

 子供は小さなスマートフォンを手にしていた。

 そして、レジの方を見た。

「ちゅーもんできないねぇ」

「……」

 やっぱりお前か。

 ヴィルテは思った。

 子供はスマートフォンを操作している。

「おかしいねぇ」

 画面を見つめる。

「なるほどねぇ」

 何がなるほどなのだろう。

 何もわかっていなさそうな口調で、何もかも見透かしたようなことを言っている。

 ヴィルテは少し考えた。

 この子の親はどこだろう。

 一人で来たのだろうか。

 窓の外を見た。

 ごおおおおおおお!

 猛吹雪だった。

 雪が猛烈な勢いで横向きに流れている。

 この中を?

「おかしいねぇ」

 子供はまた言った。

「……」

 ヴィルテは席を立った。

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