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リントヴルムの揺籠(ゆりかご)外伝  作者: 翠山 朔


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外伝:リリアーナの恋(前編)

ルピーネとロドルフは、結婚後数年して生まれた待望の長女リリアーナを筆頭に、結局四人もの子宝に恵まれた。竜人よりも獣人の血が勝ったのか、あるいはロドルフの情熱ゆえか。両家の親、特にルピーネの両親は「四人も孫ができるなんて」と、大喜びした。


長女のリリアーナは、赤ん坊の頃から飛行船のゴンドラに取り付けられた特製の揺籠ゆりかごに揺られ、冒険依頼クエストを受ける両親と共に帝都を訪れていた。その結果、彼女の「男性の基準」は恐ろしく高くなってしまう。 「なんせ、物心ついた時から傍にいるのがアルヴィンだからな……」 父ロドルフの嘆きを余所に、リリアーナは成長しても「アルヴィン叔父様と結婚する!」と言い張り続けていた。


アルヴィンは、母譲りのヘーゼルの瞳と父譲りの燃えるような赤髪を持つリリアーナを「僕のタイガー・リリー」と呼び、この上なく甘やかした。だが、彼女が年頃になり、真剣に想いをぶつけても、アルヴィンは「小さい頃から知っていて、娘のようなものだから」と優しく微笑んでかわすばかりだった。


「アルヴィン叔父様は、ママのことが好きだったり……したの?」 思い余ったリリアーナが問い詰めると、アルヴィンは遠い目をして答えた。 「……いや。ルピーネは昔からとても素敵だったけれど、少し違うかな。君のお父さんとお母さんは、二人揃って大好きなんだ。特に、二人が笑い合っているのを見るのが、僕は好きだった」


数年後、16歳の成人の儀を終えたリリアーナは、ついに最後のお願いを口にした。 「叔父様、私をエルフの里へ連れて行って。そこでエルフの男性と出会って結婚して、絶対に娘を産みたいの」 アルヴィンはその言葉に、かつてない衝撃を受けた。 「……外見みためが良ければ、誰でもいいのかい?」 「違うわ。私が死んだ後、叔父様と同じ時を生きられるハーフエルフの娘を産みたいの。そうすれば、私の血を引く娘が、私の代わりに叔父様と永く一緒にいられるでしょう?」


愛ゆえの、あまりに切なく、斜め上の提案。アルヴィンは胸を打たれると同時に、深く脱力して彼女を諭した。 「タイガー・リリー……エルフの成人年齢は70歳なんだ。君の娘が成人するのを待っていたら、僕は160歳を超えるまで誰とも結ばれなくなってしまうじゃないか」


それと同時に、アルヴィンは自らの胸の奥に芽生えた、激しい嫉妬にも似た感情を自覚していた。「他のエルフの子供など、産ませたくない」――。 彼は、彼女が指摘した「寿命の差」という現実を正面から受け止め、しっかりと自らの心と向き合う決意を固めた。

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