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第63会 決闘と呪いと

今日も書斎にやってくる。

珍しく誰もいない。


「リーフェ?」


声をかけるも静かだ。


後ろだろうか?

振り返るが影が見えない。


まさか。


最奥の部屋へ走る。

物音がする。


扉を開くと……、

どっしーん!と音がしてリーフェが転げ落ちてきた。


「リーフェ!」


「あいたたた、だから嫌なのよ……。」


「まだまだね。」


すいっと、天使が近くに舞い降りる。


「……ウリエル様。」


「あ、シュライザルじゃない。

やっほー。」


「今日だったんですね。」


「ま、ね。」


リーフェから翼が広がっている。

前から戦っていたのか、リーフェはボロボロだ。


「かっこつかないわねぇ。

仮にもあなたの師なんだけど。」


「……翠翔は?」


「まだね。

正確にはうまくできない。」


「ウリエル様、ごめんなさい。」


「ん?」


「リーフェ、ちょっとやるよ。」


「何を?」


服がばたばたとはためく。

ツーン……、と静かなモスキート音が流れる。


「何をして……、あ。

リーフェの怪我が消えたわ。」


「うっ!」


リーフェの顔がゆがむ。


「あなた……。」


「僕の信条の中の一つとして

天秤は均衡を保ってこそ意味がある、と思ってるんだ。

もっとも、天秤何て均衡になるもんじゃないんだけどさ。

だよね、リーフェ。」


「……借りるわ。」


「うん。」


「なぁに?」


リーフェが構える。


「何回やったのよ、無駄よ。」


「これが最後で構いません。

無理だったら諦めます。」


「いいわ、付き合ってあげる。」


リーフェが空に飛翔する。

ウリエルが追随する。


空で光の玉になったリーフェとウリエルがぶつかり合う。


リーフェの玉は怯むことなくウリエルの玉とはじけ続ける。

よしよし、うまくいったね。


リーフェの玉が弾かれ、地面に飛んでくる。


数メートル先にウリエルが着地する。


「……動きが見違えるように変わったわ。

何をしたの?」


「ふふ。」


ぽーん、とリーフェが石を投げる。


「っ!電気ナマズの石!」


「翠翔・極!」


七色のビームの輪があたり一面に広がる。


「なっ……!」


回避もかなわずウリエルが吹っ飛ぶ。

再び光のオーラを纏うとリーフェが飛び掛かる。


「ウリエル様、覚悟!」


「はっ!」


驚きの表情のウリエル。

自分が中間に飛翔し、リーフェの攻撃を止める。


「あ。」


「リーフェ、これ以上は流石のウリエル様でも危ない。

僕の技を貸したんだから、死んじゃうよ。」


「……ちぇっ。」


オーラを解除して口を尖らせるリーフェ。


「リーフェ?

なんでそんなに悔しそうなのさ。」


「滅茶苦茶にやられたからね。

悔しいわよ。」


「そっか。

ウリエル様、大丈夫ですか?」


「ビームが結構効いたわね……。」


「今治します。」


ツーン、とモスキート音がする。

するとウリエルの傷が癒えた。


「……電気ナマズの石、どういう使い方したの?

理論上では出来るんだけど、ほぼ不可能な使い方よ。」


「一撃を7撃に分ける技を極めたものになります。」


「あ、いつか言ってたあなたの小説の技?」


「根暗ですよね。」


「……よく考えられてるわ。

バカにして悪かったわね。」


「あら?」


「……死んでもよかったんだけどね、この際。」


「ウリエル様?」


「どこかでリーフェが覚醒したら死んでもね。

あなた自覚ある?

結構モテてるのに。」


「こんなおっちゃんがですか?」


「奥さんが羨ましいって言ってんのよ。」


「そりゃどうも。

でも死なないでください。

ウリエル様は僕の憧れ。

アマツカイの輪廻に乗ってしまったら全てが変わってしまう。」


「……自覚ないようね。」


「はい?」


「ミカエル様も一目置いてるのよねぇ。

まぁ、こんな感情抱けば天使なら身が焼けるわね。

例外的に私は助かったわけだけど。

覚えておきなさい。

油断したら私が割って入るからね。」


「怒られますよ、ウリエル様。」


「怒られてもいいわ。

あなた知ってる?

叶わない気持ちを抱き続けながら生きる苦痛を。」


「痛いほど。」


「……。

そこがいいところなんだよなぁ。

絶対に靡かない。」


「気持ちが動いたとて、どうせまた動きますよ。

浮気ってそんなもんですから。」


「そうね。」


薄く笑うウリエル。


「リーフェ、悪かったわね。」


「……殺してほしいとは思いませんでした。」


「リーフェは?

シュライザルのこと気になんない?」


「可愛がっては貰ってるので。」


「は!?」


「リーフェ!」


「あ、やべ。言っちゃった。」


「なに!? どうやって!?」


「頭を撫でて貰ってからじゃないと動きません。」


「あー、そういうのもあるのかー。」


「ウリエル様?」


「死なないから、頭撫でてくんない?」


「いいですよ。って、ウリエル様背が高いですね。」


「あんまり変わんなくない?」


「僕よりは高いかと。」


「170ちょっとだけど、あなた170ないんだっけ?」


「すみませんな……。」


「縮んだ背の分だけ、性格が伸びてるのよねぇ。

ほら、早く撫でる。」


「はい、なでなで。」


「ふへへへ。」


「びくっ。」


「うん、これいいやぁ。

よし、また来る!」


「帰られるんですか?」


「今リーフェに私を持て成す気はないでしょうし。」


「……珈琲くらい出しますよ?」


「あらそう?」




書斎に戻り、椅子に腰を掛ける。

リーフェが珈琲を出した。


「……。」

「……。」

「……。」


無言の三人。

空気が重い。


「ねぇ、リーフェ。」


口を開いたのはウリエルだった。


「なんですか?」


「……なんでちっちゃくなったの?」


「撫でやすいかなって。」


「あー……。」


「ウリエル様も縮まれます?」


「分身すればできなくもないかな。

たださ、私一応天界の守衛任されてるからさ。

戦力分散するのはあんまりよくないんだよなー。」


「ウリエル様、僕撫でるくらいしますけど。」


「ほんと?」


「えぇ。」


「へへへ。」


「ウリエル様は本当にシュライザルが好きですね。」


「強さはきっかけでしかなかったんだけど、

こんなに優しい奴いるんだなって。

なんなら弱くてもいい。

凄く支えられてる感があってさ。

夢の中くらい独り占めしたいなぁ……。」


「ウリエル様、今日は結構引っ張りますね。」


「ミカエル様は今日来れないからね。」


「でも、制御効かないときは僕でも浮気夢は見ますけどね。」


「そこ、正直なところもいい。」


「女性の扱い方は不得手ですよ。

妻が一緒にいてくれるのが不思議なくらいです。」


「奢らないわね、いいとこしかない。」


「案外一緒にいたら嫌なところも見えますよ。

男女ってそんなもんですから。」


「そこも加味して言ってるんだけど。」


「あ、次元が違ったのか……。」


と、最奥の部屋がある通路から人影が。


「忠告はしましたからね。」


「げっ!ミカエル様!?」


「前よりもきつい呪いをかけます。」


「あー、油断した。

まずったなぁ……。」


ウリエルに指を向けるミカエル。


「……ミカエル様。」


「なんですか?」


「呪い、待ってもらえませんか。」


「ウリエルを鬱陶しがっていたのでは?」


「面白いくらいです。」


「なんでそう、甘いんですかね……。」


手を下げるミカエル。


「あれ? 私、助かった?」


「ウリエル、天使の資格を剝奪しますよ。

あなたの言動は目に余ります。」


「うぐ。

ミカエル様もシュライザルに撫でられるといいですよ。」


「ウリエル?」


「怒られちゃうかな。」


「ふむ、シュライザル? いいですか?」


「天使長を? 御冗談を。」


「ウリエルのせいとしてください。」


「はぁ。」


恐る恐るミカエルの頭を撫でる。


「……なるほど。」


「怒りますよ、ねぇ。」


「結構悪くありませんね。」


「あり?」


「ただしウリエル。」


「はぁい、気を付けまーす。」


珈琲を飲む4人。

なんか丸く収まったけど、これでいいんだよね?

Copyright(C)2026-大餅 おしるこ

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