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第60会 二十数年ぶりの再会

ある日の夜のこと。

突然その夢はやって来た。


金属のかごでできたエレベーターで上がっている。

業務用なのか相当に大きい。

リーフェがいない。

また悪夢か?

そんなことを考えていると、

背後から殺気がする。


右手を返して攻撃を弾く。


「ふむ、やりますわね。」


「また戦いか。

戦いは苦t……え。」


リーフェかと思った。

が、違う。

金色の髪がこめかみで結ばれて大きな輪を描いている。

後髪は引きずるほど長く伸びている。

恐ろしく低い身長に緑色のチーパオ、バランスの悪い胸部。


「き……、君は。」


「ふふ、誰でしょう。」


「嘘だろ……、ひめ。

姫柳楓、ひめかえで!?」


「あったりー♪」


「どうして!?

君は……、存在しない存在だ。

君をいつか夢で見たから、創作の君が生まれた。

いや、だから夢なのか……?

変な悪夢より質が悪い。

まさかリーフェじゃないよな。」


少女のほっぺを引っ張ってみる。


「ひへへへへ。」


ぱしん、と手をはたかれた。


「何をしますの!?」


「本当にひめなの!?」


「そうだって言ってますわ。」


「リーフェは!?」


「あの子から私が生まれたんでしたわね。」


「っ。」


「大丈夫ですわ。

世界線が違いますから。

干渉しないと約束しましょう。」


「あれ? 今日限り?」


「……出てほしいなら、リーフェのところに行きますけど。」


「たまにでいいから、本当に懐かしい。」


「あら、喜ばれてますわ。」


「そりゃあ……。

単一個体として夢に出たの……、いつ振りか。」


「まだキサラが20歳にも満たないときですわね。」


「そうそう。

……うん? それ何で知ってるの?」


「夢だから?」


「それで片付いちゃうよなぁ……。」


「で、どう?

20数年振りに私に会った気分は。」


くるりとひめがその場で回る。


「過ぎ去った人って印象かな。

君は僕の創作では生きてるけど、なんだろう。

君が僕の理想であったわけじゃないからね。」


「あはは、そうですわね。

じゃなかったらこんなに無駄に鳩みたいに膨れたお胸を何とかしてほしいですわ。」


「なんで夢に出たの?

それだけ聞きたいね。」


「知りたかったら吐かせたらどうですの?」


「……ありがとう。

大人になって結婚するまで

本当につらい時は君に救われていた。」


「くすくす、理想じゃないって今言いましたのに?」


「理想じゃなかったから創作で一番のうちの子になったんだよ。」


「あ、嬉しいですわねそのセリフ。

最近、私に関する何かをしたでしょう?

それが私が出てきた原因ですわー。」


「……? あ。

完全に初期案で描いてもらった君が絵になったね。

色もついてた、だからか。」


「そそ。」


「じゃあなんで君の仮の娘が具現化したときは出なかったの?」


「そりゃ、私じゃないですし。」


「そんな細かいところまで夢するんだな……。」


「いつかまたあの時みたいにお蕎麦食べさせてほしいですわー。」


「そんなこともあったね。」


「なんでしたっけ、西麻布のお蕎麦。」


「その時にひめが言った表現がおもしろかったんだ。」


「まゆい。」

「まゆい。」


言葉が一致する。


「あはは。」


「ひめから見てどう?

いいおじさんになれてるだろうか。」


「それ、聞きます?」


「こんな事くらいじゃないと過去の人に会わないからね。」


「しっかり年は取ってるけど、中身が変わってませんわ。」


「なんでぇ、ガキのままかい。」


「あなたにはそういう意味で通じないと思ってますけど。」


「……。」


「黙りましたわね。

もう13歳で行くところまで行ったんですのよ、あなたは。

まだやってますの? 自己分析。」


「相変わらずだねー。

どこかで運命が変わるかもしれないと思っててね。

去年から変わった気がするんだ。」


「そっか、厄年になったのねー。」


「うん。」


「ただ、なんだろうな。

自分の意志を出さないほうがいいのは変わってないみたい。

総合的に判断して、人の勧めが正しいことは絶対みたいだ。

無理に自分で動くと100%失敗する。

意志のない人生だと思わないかい。」


「そう判断したのもあなたの意志、ではなくて?」


「あ、そういう面白いことを言う……。」


「そういう法則性が見えたとして、

じゃあ人の言うとおりにしてればいいやーってなってないでしょ。

都度自分で考えて人に意見を仰いで、結果自分を採用しないだけですわ。

それが続いているだけ。」


「いつか崩れるかな?」


「そのためのデータを取ってるんでしょ。」


「僕、気持ち悪くない?」


「奥さんもそこに惚れた。」


「そっか、結婚したことも知ってるんだね?」


「言い忘れてましたわね。

おめでとうございますわ。」


「ありがとう。」


「……なんか、私。」


「うん?」


「昔の女ムーブしてますわ。

結構気持ち悪いですの。」


「付き合ってはいなかったでしょ。」


「まぁ、ねぇ。」


「色々自己分析はしてるんだけども

無理に引っ越したのは、大きかった。」


「唯一じゃありません?

成功例ですわ。」


「成功例なんだろうか。

お金もいっぱい使ったし。

方々に迷惑かけたんだよ。」


「だから、今がある♪」


「ひめ、いい結論ばっか持ってくね。」


「あなたが材料を持ってきてくれるから私は組み立てただけですわ。

そもそもあなたは材料を持ってくるくせに育てないんですのよ。

だから、意見をくれる人として私やリーフェが生まれたんでしょ。違う?」


「……面白いことを言う。」


「奥さんも意見をくれるいい人ですわ。

あなたが悪いんじゃないんですのよ?

死ぬほどパターンを考えて、起こりうる確率の高いものを選んで

情報材料として揃えるだけでもうんざりしますわ、正直。

組み立てたくないのも分かりますわ。

負の結果だったら目も当てられませんからね。

それ以前に材料を集めるのに労力をどれだけ使ってますって話で。

だからまとめ役を他の人の客観的にしていただくのは得策。

そんなお話。」


「うへぇ、懐かしい感覚だ。

この感覚忘れてたよ。」


「なぁに、忘れてましたの?

仕方ないですわねぇ。

じゃあ、こう言うのは覚えてます?

……ノストルティナ。」


「あ。

あぁあぁあぁ、何だっけ。」


「目が覚めたらすぐにすまほに残しておくことですわ。

わたし、すまほってどうも苦手で……。」


「あれ? そういや、ひめスマホ苦手なんだ?」


「ガラス面叩いて物事が動くのがなんか嫌ですわ。

携帯電話ですら不可思議な存在でしたのに。」


「君まだ若いでしょーが。」


「嫌なものは嫌なの。」


歯を見せてイーッとするひめ。

昔っからよくわからない子なんだよなぁ。


「そういやひめ、僕の創作で結構活躍してるよ。」


「……見てないと思いますー?」


「あ、記憶共有してるんだっけ。」


「生まれではリーフェが先ですけど、

わたし、当初ありえないお嬢様って話で夢に出たでしょ。

あまりに夢に出すからどっちが本当か分からなくなるくらいには。

奥さんに窘められるまでわかんなかったでしょ。」


「嘘ついてる感覚もなかったんだよなぁ……。」


「ごめんなさいね。」


「悪いのは僕でしょ。」


「そういう性格なのも昔のまんまですわね……。」


「あんま変わってないかな?

100インチのテレビってまだ持ってるの?」


「壊れましたわ、流石に。」


「夢でも時間が進行してて笑う。」


「なんで男子校行ったんですの?」


「急になんだい。」


「女の子にバカに優しい。」


「いい経験だったと思ってるんだけど。」


「男同士で……。」


「何を考えているのかな?」


「心配しないでも私は腐ってませんわ。」


「そうだと思ってるよ。

で、男子校に行った理由だっけ?」


「まぁ、過去もあるんでしょうけど……。

いい経験にはなりましたわね。」


「ですよ。」


「そのあとは女の子しかいない学校行って。」


「うぐ。」


「まぁ、そこで彼女を作ったわけでもありませんからね。

それはいいですわ。」


「ふむ。」


「はい、これお名刺。」


「ん?」


出された名刺には”漢娘飯店”と可愛く書いてある。


「かんにゃんはんてん?」


「私のやってるお店。」


「お店やってるんだ!?」


「来てくれたら炒飯ラーメン、

お茶くらいはサービスしますわ。」


「お客さん誰が来るの。」


「夢でご飯を求める人に主に出してますわ。」


「お。

夢で美味しいやってるときはひめのお店の可能性が出るんだね。」


「そそ。」


ふわりとひめが浮かぶ。


「おや?」


「そろそろ起きますわよー?

ノストルティナ、忘れずにー。」


「ありがとう!」


で、目が覚めた。

ノストルティナ、ノストルティナ……。

昔すぎて何の記憶か怪しいぞ。

何とか思い出せるといいんだが……。

Copyright(C)2026-大餅 おしるこ

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