第22話[そういう事なのね]
村長宅に三体の魔物達が現状を報告しに来ていた。
「という訳です」
毒が通じない勇者。
鉄の様な肉体を持つ剣士。
容赦なく爆破する魔法使い。
「何て恐ろしい奴らなのかしら」
「流石、あの魔王様を倒そうだなどとイカれた事を考える奴らね」
「行動もイカれているわ」
そう言って村長に化けた魔物は考える。
このまま、やり合っても勝てる気はしない。
だが、奴らを倒さねば、出世もできない。
人間の身でありながら、幹部に属している黒騎士。
この村だって、あいつが滅して、それを私達が頂いている。
魔王様の贈り物だとしても、屈辱だ。
何としてでも、奴より出世したいものだが……。
勇者を倒すべく作戦会議を開く中、襖が開き、勇者達が部屋へ入って来た。
「ひぃっ」
勇者の顔を見るなり、村娘に化けている魔物が怯え、村長の後ろへと隠れる。
「日菜ちゃん、良かったね」
「こいつら魔物だよ」
「殺人じゃないんだよ」
「そうね」
「つか、生きてるし、何かもう……」
そう言うと日菜は杖を構えた。
「待って、いいの?」
「この屋敷には人間の生き残りがいるのよ」
村長はそう言うと立ち上がった。
そして、奥の襖に手をかけた。
「私達を見逃してくれるのなら、開放してもいいわ」
杖を下ろし、頷く日菜。
それを確認し、村長は……。
「嘘だよ、バーカ」
そう言って逃げ出した。
日菜の顔が怒りで赤くなっていく。
そして、村長達の後を追いかけようとする日菜を緑が止めた。
「日菜殿、この先、何か罠を仕掛けているか分かりません」
「迂闊に追いかけるのでは無く、何か金品や食料、飲み水などを頂きましょう」
「勇者殿を見て下さい」
「率先して衣類などを物色しています」
そう緑に言われ、勇者の方を見てみるが……。
あれは衣類というか……。
第22話 完




