第21話[私にはできない]
日菜に言われるがまま、宿屋に向かう勇者。
焦げた匂いが漂うこの場所で緑がボーッと立っていた。
「あっ、勇者殿、見てください」
「これ、きっと魔物がやったんですよ」
そう言って勇者に話しかける緑に、日菜は自分がやったと打ち明ける。
事の経緯を知った緑が再び口を開いた。
「何言ってんですか、これは魔物がやったんですよ」
緑の目を見て固まる日菜。
話しを信じる信じないとかの次元じゃ無い。
彼女はこの事を隠蔽しようとしているのだ。
日菜の額から、冷や汗が一滴垂れ落ちる。
「そうだね、緑ちゃん」
「これは、魔物がやったんだもんね」
「仕方ないよね」
勇者もそれに乗っかった。
(えっ、この二人本当に女神様に選ばれた人達なの?)
納得いかない日菜は自首する事を二人に告げるが……。
「日菜ちゃん、何言ってんの?」
「ここは異世界なんだよ」
「自首した所で罪が軽くなったりしないよ」
「きっと斬首だよ」
「それでもいいの?」
そう言いながら勇者は日菜に腕を回し、さりげなく日菜の胸を揉む。
斬首だと聞き、怯える日菜。
胸を揉まれている事に気付いているが、今はそれ所じゃない。
「日菜殿、父様が言っていました」
「隠し通せる物は隠し通せと」
人様の親について悪く言うのは良くないけど、緑ちゃんの父様ってクズなんじゃ……。
ってそういう事を考えている場合じゃなかった。
「人が死んでるかも知れないんだよ」
「隠し通そう何てできないよ」
勇者は溜め息を吐きだし、日菜の前に立つ。
「分かった」
「じゃあ、この村の村長さんに話しをつけに行こう」
それを聞いた緑がポンと手を叩き、納得する。
「なるほど、こういう村の村長は金好きなのが相場」
「札束ビンタで黙らせるつもりですね」
「その通り、流石は緑ちゃん」
二人の会話を聞きながら、日菜は思った。
結局、隠蔽するんかいと。
第21話 完




